万葉集と申告(2)

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(頂きものの画像です)

労働者が急に退職し、会社に損害を与えたというケースの考え方は次のとおりである。
①賃金は全額、支給日に支払われなければならない。
②「会社に損害」を与えたというなら、会社は労働者のその行為によって、ⅰ)「いくら損害を被ったかの金額」の特定、ⅱ)前述の金額と労働者の行為との因果関係の立証を行ない、ⅲ)労働者に請求しなければならない。そして、その金額を労働者が同意するのなら、労働者が支払わなければならない。もし、労働者がこれに納得しなければ、第3者にその会社の主張の理非を尋ねなければならない。つまり、民事事件における裁判所の介入である。
③労働者が合意しない限り、「確定した債権の賃金」と「未確定な損害額」の相殺はできない。
④悪質な、事業主による労働者の足止めのための嫌がらせは、すべて労働基準法違反である。例えば、あらかじめ預かり金を徴収しておいてそれを返還しないとか、退職を認めないとかの主張は、すべて無効である。ただし、ⅰ)予告なく退職し、それが就業規則で定める制裁規定に反していた場合は 日給額の半額までは減額できる。ⅱ)賃金の締切前に辞めたことを理由に、「皆勤手当」の支払拒否はできる

労働者が本当に悪い場合もある。経営者がこれじゃ給料を払いたくないなと同情することも労働基準監督官としてはある。例えば、私が経験したことだが、飲食店(レストラン)での話だが、コックがパーティの1時間前に事業主とケンカをし、職場放棄をしてしまったため、結局店が信用を落とし、経営が傾いてしまったことがある。
これなんぞ、明らかに裁判をやれば店が勝つが、それでも給料日は所定支払日に全額支払われなければならないのだ。

今回、賃金不払いの申告のあった鎌倉の料亭は、過去に労働者による申告は1件もなかった。つまり、少なくとも過去においては、労使間のトラブルはなかったと推定される。
さて、どんな事情があるのかと、私は未処理の申告処理台帳を眺めた。