ブラック企業とモンスター相談者(1-2)

CA3I0243
CA3I0243

(M氏寄贈)

(しばらく、お休みしていた「ブラック企業とモンスター相談者」の続きです)

先輩の言葉はさらに続いた。
「監督官がもっとも注意すべきは、申監だ。申監に至るケースとは、次の3つのケースのどれかだ。
① 会社が不法だ
② 労働者が不法だ
③ 会社と労働者が不法だ
ようするに、会社も労働者も、両方とも「いい人」だったら、申告なんて事態は、ほとんど起きないんだ。我々監督官は、申監を実施するたびに、事業主か労働者のとんでもない主張を聞くことになる。」

(注)申告とは、
労働基準法第104条もしくは労働安全衛生法第97条では、「会社の不法行為に対し労働者の申告」が認められている。
労働基準監督官は、この申告行為に基づき、被申告会社の臨検監督を実施することができる。
もっとも、行政解釈によると、この「申告」という行為自体は労働基準監督官に臨検監督官の発動を促すもので、すべての申告に対し、対処する必要はないとされている。

(注)臨検監督権限とは
労働基準法第101条もしくは労働安全衛生法第91条で認められた、労働基準監督官が事業場を臨検監督する権限。
この条文によると、労働基準監督官は「予告なく事業場を訪問し、事業主や労働者に質問し、帳簿等を閲覧する権限」を所有していることになる。
例えば、他の役所の者が事業場を訪問した時に、事業場は裁判所の令状等がなければ、調査を拒むことができるが、労基相手にはそれができないということ。
もっとも、その場で何にもかもが調査できるという訳ではない。
もし、調査を拒んだ場合は、後で刑事処分することができるという意味。
例えそうであっても、やっぱり強い権限なので、労働局はこの権限を錦の御旗としている。
因みに、この権限はILO条約により、国際的に認められている権限。