メンタルと過労死(2)

(菜の花、by T.M)

入省当時(33年前)の新人監督官研修で,こんなことを仰っていた、お医者様がいました。

「人は過労では死なない。だから過労死なんてナンセンスだ。千日回峰を見てみろ。人は過労で死ぬ前に意識を失って倒れるものだ。」

(注)千日回峰行については、下記リンク参照(出典:ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%83%E6%97%A5%E5%9B%9E%E5%B3%B0%E8%A1%8C_(%E6%AF%94%E5%8F%A1%E5%B1%B1)

確かに、純粋な過労により、「脳疾患」や「心臓疾患」を引き起こし死亡にまで至る例は、当時のお医者様の多くが主張されていたように、ほとんど有り得ないのかもしれません。
当時のお医者様達は、「ストレス」という要素をまったく考慮してませんでした。

「長時間労働」で直接的に肉体を損傷する可能性は低くても、「長時間労働を原因としたストレス」によって人は死に至ることが発生します。

例えば、あの東日本大震災の時の、津波の後の「避難所」の生活の事例です。そこの生活によるストレスで、ある人は鬱となり衰弱し死に、ある人は脳梗塞等を患いました。
平成24年8月の復興庁の調査では、震災関連死のなかで、「避難所等の生活によるストレスからの死亡者数」を184名と発表しました。津波の死者は、3月11日に死亡した者だけが記録されているようですが、実はもっと多いのです。

現代の日本で普通に暮らして人々が、飲料水と食料だけはかろうじて確保できたとしても、水洗トイレが使えないため人々の排泄物が身近に存在し、おまけに掃除をする綺麗な水はなく、風呂には数日おきにしか入れず、プライバシーがまったくない長期の生活を強いられるとしたら、そのストレスはどれだけ過大でしょうか。