メンタルと過労死(7)


(写真提供、T.M)

前回に説明したストレスチェックの有効活用について、少し論じてみます。

まだ、法制化されて間のないストレスチェック制度ですが、こんなトラブル事例を聞きました.
ある人(「Aさん」と呼びます)が、ストレスチェックで高ストレスとの診断を受けました。
Aさんは、自分の高ストレスの原因が、自分の仕事仲間のBさんであることに、直ぐに気付きました。
Bさんが、自分をイジメの対象にしていたからです。Bさんの、イジメは陰湿でした。例えばその職場では、同僚の誕生日になるとお互いにカードを交換する習慣があるそうなのですが、BさんはAさんの誕生日に、「これからは職場の迷惑にならないように、頑張って仕事をして下さい」といったメッセージを渡したそうです。
産業医と面談した時に、Aさんは、このBさんの行為を告げたところ、産業医はAさんの了解をとって、AさんとBさんの上司であるX課長に、「Aさんが高ストレス状態にあり、その原因はBさんのイジメの可能性があること」を報告しました。
その後、X課長はAさんと面談したそうですが、課長はAさんに「おまえも悪いところが、あるのではないか」と述べたそうです。

このX課長は、どうもストレスチェックの怖さの本質を理解していないようです。
Aさんはもしかしたら本当は勤務態度が問題のある人で、職場で疎まれている人なのかもしれませんが、そのことを論じても仕方がないのです。
ストレスチェックの結果、「労働者が高ストレスに晒されていること」が判明し、客観的に「イジメ」という事実が確認された場合、次にAさんが「鬱病の診断書」をもって労災申請すれば、認定される可能性は非常に高いのです。
また、認定された場合は、「事前にイジメの事実を知りながら、それを放置し、部下を鬱病とした」責任を、X課長は追及されてしまうかもしれません。