長時間労働規制の問題点(4)

(大岡川の満開の桜です)

過半数労働組合があれば、闘争手段はいくらでもあります。
私が、労働基準監督官に採用された30年ほど前に、労働組合がよく仕掛けた闘争手段が36協定を締結しないという方法でした。

労働組合の要求、例えば賃上げ・ベースアップ等に会社が満額回答しなければ、36協定に労働側がサインしないのです。こうすると、労働者が行う残業はすべて違法残業となってしまいます。
どこの会社でも、すぐに残業がゼロにできる訳ではありませんし、昔は現在ほど、労働者も使用者も36協定のことをそれほど気にしてはいません。そうすると、労働者は36協定の期限切れの後も通常どおりに残業をしますので、法違反がどんどん累積していく訳で、頃合いを見計らって、労働組合は労働基準法第32条違反で監督署に申告するのです。

監督官が会社に臨検監督に行くと、法違反は明白なので是正勧告書交付ということになるのですが、会社は渋い顔で対応します。
労働組合は、監督署から是正勧告が出たということで、「今度は刑事告訴だ」と会社を脅しますが、そこまではしません。
監督署の立場としては、会社に「法を遵守しろ」と言う一方で、内心では組合に、「そこまで言うのなら、組合員に命じて、残業拒否闘争でもやればいいのに」と思いますが、組合はそうはしません。残業代がでなくなった場合の組合員の反発が怖いのです。もっとも、組合に言わせると、「生活残業をしなくてもよいほど、会社はベースアップをしろ」ということになります。

目的が「違法残業の告発や防止」でなく、別のところにある36協定闘争は、監督署にとって迷惑そのものでしたが、よくよく考えてみると、現在の過重労働対策には、労働組合が検討しても良いような手法に思えます。