長時間労働規制の問題点(7)

(写真提供 T.M氏)

36協定の第2番目の問題について、残業を受け入れることについての、個人の労働者の意思の反映ということを挙げます。

平成3年11月28日に、最高裁で、時間外労働(=残業)に関する極めて重要な裁判の判決が言い渡されました。
残業を拒否したことを理由に懲戒解雇された労働者が、それを不服として、解雇無効を訴えた裁判です。いわゆる「日立製作所武蔵工場事件」です。

その判決は労働者側の訴えを退け、懲戒解雇を有効としました。

その時に最高裁は、会社側に残業の命令権が発生するためには、次の条件が必要だとしています。
第一 会社が労働者に残業を命じる適正な理由
第二 就業規則に、当該会社には「残業を命じることがある」と明記されていること。
第三 36協定が有効に締結されていること。 

つまり、上記の3条件が整っていれば、労働者が残業を拒否した時に、会社は労働者を懲戒解雇できるのです。

 (注) ただし、この裁判の事例では、会社側は残業を拒否した労働者に対し、直ぐに懲戒解雇したものではない。複数回の残業拒否の事実の確認の後に適正な、社内手続きにより解雇が行われた。
会社が上記な理由で労働者を解雇するような場合は、まず、第1回目の残業拒否については、「注意処分」とし、第2回目は始末書の提出を命じる「訓告処分」、第3回目は「減給制裁」、第4回目は「出勤停止」、そして最後は「懲戒解雇」となる。
この処分手続きについては、当然就業規則に記載があるもので、1回ごとの処分について、その度に懲罰委員会が開催される。
この懲罰委員会は社内裁判にあたるもので、事実関係の確認と処分内容の妥当性が確認された後、会社代表への意見具申をするものであるが、その委員には、過半数組合が選出した者もいる。