長時間労働規制の問題点(13)


(大宮動物公園で撮影、by T.M)

その弁護士は、次のようなことを何度も主張しました。
「本社が一括管理しているんだから、問題がないんだ」
私は、他の事業場が一支店ごとに36協定を締結しているのにおかしなことを主張するなと思っていました。しかし、「名ばかり店長」の問題を考えている時に、弁護士のこの主張を思い出し、気づきました。
弁護士が正しく、行政機関の考えが間違っていたのです。

労働基準法と労働安全衛生法では、「適用事業場」という考えが基本にあります。
「労働基準法第9条 労働者とは、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」
ここで述べる、「事業又は事務所」の概念は、「場所的概念によって決定すべきもの」とされています。
つまり、労働の基本である「使用者」と「労働者」の関係は、「場所」により規定される事業場で成立しているという考えです。
この考えは、50年前は正しかったと思います。インターネット等の通信手段がなく、場所が離れた事業場は、それぞれ独立した労使関係しか築けなかったのです。労働基準法はこの時代の労使関係を基準に作られているため、36協定等はこの単位でしか締結するしかなかたのです。

しかし、現在では、「場所が離れているから」独立した事業場という考えができなくなりました。
平成20年にマクドナルドの店長が、「自分は管理職」でないと申立て、残業代を請求して勝訴しました。いわゆる「名ばかり店長」事件ですが、マクドナルドも1970年に銀座に1号店ができた時は、そこは「名ばかり店長」の店ではなかったのです。店長が独立した労務関係の権限を持っていました。
それから、40年して店舗には、「店長」がいなくなりました。本店が、POSシステム等を通し、遠隔場所の店舗も管理するようになったのです。