長時間労働規制の問題点(24)


(西丹沢の檜洞丸のシロヤシオ、by T.M)

前回の記事で、本日更新の記事には、私の考案した「労働時間短縮マネジメントシステム」について掲載すると予告しましたが、本日は以下のようなニュースがありましたので、そちらについて書きます。

「電通本社を略式起訴へ、幹部は不起訴…違法残業
6/23(金) 6:21配信 (読売新聞)
大手広告会社・電通(東京)による違法残業事件で、東京地検は、独自捜査で新たに東京本社の幹部数人の労働基準法違反を認定した上で、同法の両罰規定に基づき、法人としての同社を近く略式起訴することが関係者への取材でわかった。
地検が任意で事情聴取した山本敏博社長(59)が、法人としての責任を認めていることも判明した。東京労働局が書類送検した男性幹部1人を含む本社の幹部数人は不起訴(起訴猶予)となる見通し。
一方、4月に同容疑で書類送検された関西(大阪市)、中部(名古屋市)、京都(京都市)の3支社の事件について、大阪、名古屋、京都の3地検は東京地検に事件を移送せず、法人と3支社幹部をいずれも不起訴(起訴猶予)とするとみられる。政府の働き方改革の議論にも大きな影響を与えた電通事件の捜査は、本社の違反だけが処罰対象となり、終結する。」

この事件を担当された、検察庁の方々、そして労働局の皆さま、苦労が報われたと思います。敬意を表します。ご苦労様でした。

略式起訴したら、電通側は正式裁判を求めないと思いますから、「罰金30万円以下」が確定でしょう。これは、労働局・検察の勝利でしょう。

ただ、この新聞記事から気になることがあります。次のような箇所です。
「東京地検は、独自捜査で新たに東京本社の幹部数人の労働基準法違反を認定した上で、同法の両罰規定に基づき、法人としての同社を近く略式起訴する。
地検が任意で事情聴取した山本敏博社長(59)が、法人としての責任を認めていることも判明した。東京労働局が書類送検した男性幹部1人を含む本社の幹部数人は不起訴(起訴猶予)となる。」

つまり、労働局が送検した「犯罪事実」について、個人は不起訴としたということです。
そして、検察庁は独自捜査し、別の法違反も「犯罪事実」とし、個人の犯罪は不起訴とし、社長が認めているから両罰の規定により法人を処罰するということです。

労基法121条1項(両罰規定)は次のようなものです。
「この法律の違反行為をした者が、従業員である場合においては、事業者に対しても各本条の罰金刑を科する。」

通常は、個人の違反行為があって、法人の違反行為を起訴します。

しかし、法人のみ起訴ということもあります。それは検事が次のように考えた場合です。
「従業員の犯罪は、結局会社にやらされてのことじゃないか。本当に悪いのは、個人でなく法人だ。」

この考え方は監督官に近いものです。
私が送検した事案でも、従業員不起訴で、法人起訴ということが何回かありましたが、自分たちの仕事の意味が、検事に分かってもらえたようで、嬉しかった記憶があります。

何はともあれ、「何としても、この事件を起訴までもっていく」という、検察庁の気迫を感じた事件終結だと思います。