普通の日記(29年8月15日)

(乙女高原に咲く花part1、by T.M)

今年の1月に厚生労働省が示した「労 働 時 間 の 適 正 な 把 握 の た め に 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、着替え時間が労働時間であることが明確にされています。この事例をもって、前回のブログ記事に記載した、「自動車メーカーのスズキが行っていた始業前のラジオ体操は労働時間である」と説明している新聞記事が多数見受けられます。

少し誤解があるようです。このガイドラインは「使用者の指揮命令下にある着替え時間は労働時間である」と述べているのであって、すべての着替え時間が労働時間であると規定している訳ではありません。

事例を述べるなら、「飲食店のように従業員に共通のユニフォームを指定する場合」や「労働安全衛生のため作業服を着用することが必要な場合」は着替え時間は労働時間となります。しかし、「作業をすると、服が汚れるから着替える」という場合は労働時間となるかどうかは微妙です。なぜなら、「労働者の安全を守るのは会社の責任であり、そのための着替えは労働時間としては認めるが、労働者にも決められた時間を使用者に提供する義務があり、(当社では)スーツ姿で仕事をやってもらっても構わないので、汚れるからといって着替えるのは、自己責任」という考えも、あながち間違いではないからです。 

だから、「始業前のラジオ体操」にしても、「健康管理は労働者の義務。だから、ラジオ体操の場を提供するのは会社の恩恵的措置」といった理屈も無しとは言えないのです。 

多くの会社でが、「ラジオ体操」にしても、「始業前の着替え」にしても、「労働者のための安全衛生上の措置」から、いつの間にか「会社の規律」という問題にすり替わってしまうことがよくあります。これが、日本の文化なのかもしれませんが、それが「ラジオ体操が労働時間であるかどうか」という議論を引き起こしてしまいます。 

本来の始業前の体操とは、会社が参加できる状況(例えば、飲み物1本無料提供とか)を作り出してやり、あくまで笑顔で自由参加の雰囲気である限り「労働時間であるかどうか」は問題になりません。

規律という別の要素が入ってくることが、事を複雑とするのです。