働き方改革について(7)

(いすゞプラザにて、初代クーペ、by T.M)

監督官の「事業主に対する敬意」について少し書きます。その前に、前知識として監督官の臨検監督時の指導方法を説明します。

よく、「是正勧告書」なんて言葉を聞きます。そして、「指導」という言葉も聞きます。この違いは何でしょうか。

監督官が事業場を臨検監督した後に交付する文書は3種類あります。「使用停止等命令書」「是正勧告書」「指導票」です。

「使用停止等命令書」は、労働者が危険な作業をしている時に、その作業の停止等を求める労働安全衛生法第98条に基づく行政命令を行う書類です。相手がその命令を聞かなければ、即時司法処分としなければならない、非常に権限の強いものですが、労働時間に関する労働基準法違反については、この書類は使用しません。

「是正勧告書」とは、監督官が臨検監督実施時に事業場の違反を現認した時に、法違反の是正を求めるために事業主に交付する書類です。

「労働基準法第32条違反 時間外労働協定以上の残業を行ったこと 是正日×月×日(だいたい1ヶ月後)」と書かれていて、書類の最初の方に、「所定期日までに是正されない場合は送検手続きをとることがあります」という警告文が付いています。

労働基準監督官の個人名で交付されますが、これはけっこう大変なことで、法違反を現認し、その場で違反に関する文書を個人名で交付するのは、交通違反取締の警察官と労働基準監督官くらいでしょう。もっとも、最近の監督官は、「違反の確認」に慎重を期するため、事業主を臨検監督後に監督署に呼び出して、是正勧告書を交付することがほとんどです。

指導票は、「法違反でないけど、事業主にはして欲しいこと」を文書として手渡すもので、「行政指導」と言われるものです。例えば、「残業時間の管理を、労働者の自己申告制でなく、タイムカードやICカードで記録して下さい」というようなものになります。実は、良い監督官ほど、この「指導票」の使い方がうまいのです。「是正勧告書」は、「法違反の有無」を記載した機械的な文書ですが、「指導票」の内容は監督官が自由に出せるために、「貴社はこうであって欲しい」という願いが込められている場合があります。

もっとも本省は、この「監督官が自由に出す」ということを嫌いまして、「禁止」とまではいきませんが、「規制」を厳しくしています。また、本省では、「この場面では、このような行政指導を行え」という、行政指導の事例を示しています。先ほどの「労働時間管理は、タイムカードやICカードの客観的なデータを使用しろ」等は、本省指示による行政指導の一例です。