働き方改革について(10)

(茅ヶ崎・大岡越前宅内の古民家、by T.M)

働き方改革の法案の国会審議もいよいよ大詰めです。私は、この法案の9割の部分については賛成します。「時間外労働の上限規制」「正規労働者と非正規労働者の同一労働・同一賃金」等については、多分反対する人はほとんどいないのではないでしょうか。反対するとしたら、「この法案では改革が遅すぎる。もっと厳しい規制をすべきだ」という立場からのものであり、争点は、「裁量労働制」が検討事項となった現在では、やはり「高度プロフェッショナル制度」だと思います。

提出された法の内容を検討すると、対象業種(省令で定めることが少し気になります)、労使協議会の決定、本人の同意、年収要件(年収約1100万弱以上)等の縛りをかけている以上、この法律が現行どおり正しく適用されるなら、何ら問題はないと思います。

また、高度プロフェッショナル制度導入によって、「自由な働き方ができる」ということについては、確かに恩恵を受ける人がいます。これは、要するに「仕事ができる人」にとっては有利な制度となる可能性がありますし、また、「自由な労働時間」という概念は、そもそも「密度の濃い労働」を労働者が選択するので、労働生産性向上にも役立つでしょう。

現行の「専門型裁量労働制」についても、うまく利用している人はいます。映画製作のプロデューサーや、アカデミックな研究を組織でなく、一人でする人にはいい制度です。

問題は、「自由に自分の労働が選べる人」なんてごくわずかだということです。組織の中に入ってしまうと、どうしても余計な仕事が増えます。先ほど、例に挙げた「プロデューサー」ですが、自由に動ける人なんて、日本では数人しかいなくて、大部分は関係者に頭を下げ、部下を叱咤激励することに神経をすり減らしているだろうし、「研究職」は実際はチームでやる仕事が多く、拘束されている時間が多いというのが実情でしょう。

高度プロフェッショナル制度導入について危惧されるのは、これは多くの人が指摘していることですが、「本来適用されることが目的とされない人」に適用されてしまうことです。仮定の話ですが、「年収要件の引下げ」と「対象業種の拡大」が為された時に、多くの労働者が労働条件の引下げとなります。

さて、心配しても「働き方改革」の法案はどうも国会を通過しそうです。「やってみなきゃ分からない」部分が多い法案だと私は思うので、「生産性を上げ、女性・高齢者が活躍し、子育てと介護がし易い社会をつくる」といった法案の本来の目的が達成できるように、限られた国会の審議の中で問題点を指摘し、それを浮き彫りにして欲しいものです。