労災認定

(T.M氏の長崎シリーズです)

今日はちょっと古いですが、今年の4月10日の毎日新聞の記事についてお話します。以前にもこのブログで述べた、「労災認定結果の公表」の件についてです。

 加藤勝信厚生労働相は10日、閣議後の記者会見で、裁量労働制の違法適用で特別指導を受けた野村不動産の男性社員が、過労死していたことを認めた。男性は過労自殺し、3月に報道で明らかになったが、加藤厚労相や厚労省はこれまで「個別の案件には答えられない」としていた。

 男性の遺族が5日、特別指導をした同省東京労働局などに「公表に同意する」という趣旨のファクスを送り、同省が可否について検討を進めていた。

 加藤厚労相は会見で「野村不動産に勤めていた従業員の方が過労死した。労災認定基準にあてはめて2017年12月26日に新宿労働基準監督署長が労災認定をした」と述べた。「自殺」については言及しなかった。 

この記事なんですが、ちょっと読むと「厚生労働省は、労災認定した被災者のプライバシーを守るために、労災認定があった事実を公表を渋っていた」と取れます。また、「自殺」かどうか伝えなかったのは、被災者を守るために必要なことであったと思います。

でも、それだけでしょうか。行政は労災認定したかどうかの事実を、会社側にも伝えないのが原則なんですが、それは少しおかしいことではないでしょうか。

私が監督官の現役だった頃、ある会社からこのように言われたことがあります。

「ウチの従業員から、『四十肩になったから休業する、ついては労災申請して欲しい』と申し出がありました。会社は、四十肩が何で労災なんだと思いましたが、監督署の判断に委ねようと思い労災申請しました。監督署の人が2回調査に来たので、時間を割いて調査には全面協力しました。3ヶ月たってもその従業員が出社して来ないので、労災認定の件はどうなりましたか監督署に尋ねたところ、『労災認定したかどうかは、会社には教えられません』と言われました。これって、おかしくないですか。ウチの会社は労災隠しをしたくないし、もしものことがあって従業員に迷惑かけてはいけないと思って、労災申請しているのに、労災があったかどうかを、労災隠しを取締る役所が教えてくれないなんて矛盾です」

私は、この会社の主張に全面的に賛成します。

過労死事件については、監督署がそのことで調査に来ても、労災認定結果については、会社には一切教えないので、遺族発表の新聞記事で初めて過労死が起きたことを知るということも起こりえるのです。

これって、被災者のプライバシーを守るという側面も確かにあるけど、何か、労使間トラブルに巻き込まれたくない(特に「不認定」の場合)といった役所の責任逃れの側面も大きいような気がします。