基準システム(2)

(36協定様式です)

前回は、労働局、労働基準監督署をネットワークで繋いでいる「基準システム」が、如何に労働災害防止の分野で貢献しているかを説明しました。何しろ、日本全国の過去20年間の労働災害データの詳細を、事業場が作成し死傷病報告書に添付した図面と共に保存してあるのですから、災害分析等に役に立たない訳はありません。災害データはエクセルファイルの形でも出力できるので、素人でも分析可能です。

また、基準システムは各事業場の衛生管理者・安全管理者・産業医・健康診断結果記録・有害物・危険物のデータが20年分入力されているので、どこの事業場にどんな有害物が使用されているか等も検索可能です。

基準システムは労働災害防止について、まことに無双だと言えますでしょう。

さて今回は、この基準システムの弱点について紹介をします。それは、現在政府が進めている「働き方改革」には、ほとんど役に立たないということです。1件1件の事業場のデータが入力されているのですから、少しは利用できそうですが、無理です。

その理由は、冒頭に掲げた「36協定(時間外労働協定)の様式」にあります。36協定は、労働基準監督署に提出義務がありますが、その様式を前回の記事で説明した「労働者死傷病報告書」と比較してみると、死傷病報告書はシステムにすぐに読み込めるのに対し、36協定の方は完全にアナログ系でシステムには読み込めないことが分かると思います。

死傷病報告書に代表される、労働安全衛生法で規定されている、事業場の労働基準監督署への提出書類は、すぐにシステムに入力できますが、労働基準法で規定されている労働基準監督署への提出書類の36協定、就業規則の様式はシステムがまったく対応できないのです。

従って、各事業場の労働時間等については、個別に監督した時の記録とか、アンケート調査以外に監督署が知りえることはなく、システムに入力されません。

例えば、36協定の様式等をシステムに読み込み可能とするだけで、36協定未提出事業場の把握が可能となり、労働時間に関する指導が行いやすくなります。

もっとも、労働基準法で規定されている書類を、役所が指導しやすいように変更するということは、あくまで管理する側の行政の論理であって、国民側の利益に本当になるのか疑わしいという理屈も成り立つような気がします。

しかし、労働災害に大きな寄与している基準システムを、もっと労働時間短縮等の「働き方改革」に利用できる方法を考慮しても良いような気もします。