最低賃金(2)

(長崎シリーズ、by T.M)

玉木雄一郎議員のツイッターについて、今回も述べます。前回のブログで紹介したツイッターの後で、同議員は次のようにも発言しています。 

「当然、最低賃金異常が望ましいですが、生きがいを求めて働きたい意欲のある高齢者の働く場の確保がままらない実態があります。なので、下限(例えば最低賃金の7割)を設け、その下限との差額を助成することも一案ですし、逆転現象を防ぐため、生活保護費との整合性も考えていきたいと思います。最賃法第7条の障がい者就労に関する最賃の特例をイメージしてツイートしたのですが、不十分な説明となり反省しております。問題意識は、最低賃金をそのまま適用すると、働く方の雇用の機会を奪ってかえって不利な結果を招く場合をどのように回避すればいいのか、ということです」 

もうよせばいいのに、どんどん泥沼に踏み込んでいくような発言ですね。 

最賃法第7条の最賃特例とは、「減額特例」と呼ばれるもので、昔は最低賃金適用除外許可と呼ばれていました。私も、監督署勤務の時は年に何回もこの調査をしました。「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」に適用されます。もっともなぜか「身体の障害の者」についての申請はなく、「精神の障害の者(知的障害者)」の申請ばかりでした。 

知的障害者を雇用して頂く企業は、社会奉仕の意欲が高く、会社の規模に関係なく、ほとんどが優良企業です。しかし、中には知的障害者が不満を言えないことをいい事に、虐待をしている会社もありました。経理が書いた給与明細を、社長が勝手に書き換え差額を懐に入れていたのです。この会社については、私が担当で書類送検をしたのですが、社長を取調中に、捜査官としてはあるまじきことですが、怒りで体が震えてきました。 

さて、この減額特例を高齢者に適用するということは、監督署が申請のあった高齢者は、高齢であるがゆえに「普通の人より労働能率が落ちる」ことを調査で判明させねばならないのですが、この調査にはたして高齢の方は耐えられるでしょうか。また、申請事業場で1人にこの申請を許可すると、必然的に他の高齢者も許可申請が為されると思います。高齢者と比較される「普通の人」には、多分「他の高齢者」が含まれない雰囲気が職場内にできてしまうからです。 

玉木議員は「合意のできた労働者に適用」と仰りますが、これは現場を知らない発言です。まず第一に「合意のない契約」なんて、論理的にありえないからです。労働契約締結時に、「何となく雰囲気に飲まれて合意した」「訳が分からず書類にサインした」なんてケースは山ほど聞きますが、残された書類は「合意のできた契約書」としか言えないのです。それにサインしなければ仕事はないと言われれば、職を探す高齢者は「合意」するしかないと思います。そうして雇用された最賃以下の高齢者が、「最低賃金が支払われなければならないパートタイマー」の職を奪っていくとしたらとんでもないことになります。

玉木議員は、「高齢者の最賃特例」を制度化するようなことを仰ってもいますが、もう少し現場を見るべきでしょう。