賃金不払い事件(5)

(杖付峠からの八ヶ岳連峰、by T.M)

賃金不払い事件の続きです。

前回までは、監督官が送検する賃金不払い事件について、如何に検事さん達が冷たい態度を取るかを書いてきましたが、熱心に捜査について、監督官を指導して下さることもあることをお知らせします。

私は、監督官在任中は20件以上の賃金不払い事件を、主任捜査官として書類送検してきました。自分の部下の事件を加えると、100件近くの事件に関与してきたと思います。自分が担当者として送検したなかで、起訴され有罪にされた賃金不払い事件は2件だけです。他の事件は、すべて検事が「起訴猶予処分」とし、不起訴としました。その有罪になった2件とは、どちらも「倒産がらみの賃金不払いでなかった」という共通点があります。

要するに、検事さん達は「ささいな理由で賃金不払いを繰返す会社(例え、それが少額であったとしても)」や「いわゆるブラック企業」の賃金不払い事件については、非常に熱心な姿勢で事件に取組んで下さるのです。従業員の賃金について、「そんなもんより学会の方が大事だ。だから給料が送れることもある」と言い訳して居直り、賃金不払いを繰返したある知的職業の経営者に対する捜査について、「ガサや逮捕を恐れるな」と言って励ましてくれた検事さんもいました。

今回、横浜南労働基準監督署が賃金不払事件で書類送検した「ハレノヒ」の社長は、別件で捜査中と新聞報道された「詐欺罪」と一緒でなく、「賃金不払い」の単独の事件として取扱われるなら、不起訴の可能性が高いと思います。普段、「強盗」や「殺人」等の事件の犯人と接している検事さんから見れば、倒産間際の金策に必死で駆けずり回った末に犯してしまった賃金不払いの犯人は決して悪人には思えないのではないでしょうか.

もっとも「ハレノヒ」の事件について言えば、横浜南署としては、不起訴の可能性があることは百も承知。このような事件を書類送検すれば、マスコミが取り上げてくれ類似犯罪の防止対策となるので、新聞記事になった事件で目的は達成されたいうことになります。