労働基準監督官への誤解について

(笹子峠の旧笹子トンネル、by T.M)

昨日と今日は家でお仕事です。何か、役人やっていた時より忙しいです・・・疲れる。

yahooニュースを読んでいたら、最近労働基準監督署に、些細なことや、無理筋なことで相談する人が増えたという記事に出くわせました。そして、それに対応する労働基準監督署の監督官の態度が冷たいというものでした。誤解を得るかもしれませんが、敢えて書きます。

「労働基準監督官は、労使間のトラブルにおいて、労働者の味方はしません。」

だって、おかしいでしょう。国から給料をもらっている公務員が、国民どおしの争いについて、一方の味方をすることなんてありえません。中立が原則です。でも、それでは労働基準監督官の存在意義は何でしょうか。それは、

「企業に労働基準法を守ってもらうことです」

労働契約は一般的な民事の契約と一緒です。ようするに、「労働契約」も「売買契約」も基本的に同一だということです。しかし、労使関係に対等はありません。どうしても労働者の立場が弱くなります。もし、労働契約の内容に一定の制約がなければ、スキルを持たない労働者は労働時間はどんどん長くなり、賃金はどんどん安くなってしまいます。そこで一定の歯止めをかけるために、法律で「労働時間」「賃金」「労災補償」等を定めているのです。つまり、労働基準監督官が事業主に労働基準法を遵守させようとする行為は、法律自体がそうなっているので、最終的に労働者側に立つことになります。

しかし、これは結果的にそうなるということであり、労働基準監督官の立場としては、労使の間で中立であるということに変わりはありません。もちろん、「労働者のために働く」「ブラック企業と戦う」、このような心意気がなく、機械的に「法律どおり」という仕事をしていれば、監督官という職業はつまらないものになってしまいすが、権利を主張し、義務を怠る労働者の申し出に、毅然として拒否することも、また監督官の仕事であると思います。

10年くらい前から、前述の「法律違反であるかどうか」ということで、職権の行使を判断する労働基準監督官の仕事とは別に、もっとひろく労使関係のトラブルの仲裁をしようとする動きが労働局内ではじまりました。これは、地方労働局で「総合労働相談コーナー」という名称で実施されています。

この部署では、労使間のトラブルを「斡旋」や「指導」という方法で解決しています。この部署に、監督官が人事異動で担当になることもありますが、単純な「法違反の有無」だけの判断を求められるのではないので、かなり難しい仕事のようです。

もっとも、、最後は自らが司法警察員となりケリをつける監督官の申告処理と違い、こじれた時は民事裁判を紹介して終わるということなので、その部分では気楽なようです。