36協定の受理(1)

( 旧東海道神奈川宿・横浜市神奈川区台町、by T.M)

この記事を書いているのは、10月13日の午前です。ワードに下書きしているのですが、台風の影響でネットに繋がりにくく、すぐにはアップできない状況です。
我が家では、このネット状況の一部不具合と、外付け風呂釜が破損したのが台風被害のすべてのようです。

前回に続いて36協定の監督署内での処理の話をします。
36協定は、郵送もしくは、事業場の方もしくは事業場代理の社労士が監督署に持参して提出されます。提出された36協定は、監督署の職員で注意深く精査します。不明な点は、事業場に問合せをしますし、長時間労働を助長するような協定、あるいは労働者代表が明らかに不当に選出されているような協定は、突き返します。

事業場から監督署に提出される36協定は正副2部です。監督署が36協定を受付すると、1部は監督署が受取り、受付印を押印した1部を事業場に返却します。
よく事業場の方は勘違いされますが、この受付印が押されたからといって、36協定の合法性を監督署が認めたということではありません。後で不具合が見つければ、監督署は平気で「返礼」します。「一度受理したものを何だ」と抗議されても、監督署はダメなものはダメだというスタンスです。

もっとも、「書類不備なものを受理したこと」と、「労働者の立場を守るために36協定の不適切なものは指摘する」ことは別という理屈は分かるのですが、「不備なものを受理した責任」及びその失敗は、後々問題となりまので、やはり提出時の36協定審査には神経を使います。

さて、提出された36協定の処理ですが、これが実は署ごとに違うのです。(これから、書くことは、私が実際に36協定の受付等をしていた8年前までのことなので、現在では違っているかもしれません)

大規模署では受付済の36協定は、そのまま綴り、3年間保存後廃棄します(内部規約によりそう決まっています)。小さい署でかつ地方局の署では、「基準システム」に登録します。以前このブログでも紹介しましたが、「基準システム」とは厚生労働省が所有する労働基準局関係のビッグデータを操るシステムです。このビッグデータは、20年以上の労災関係データ(300万件程度と推測されます)や、様々な企業情報、臨検監督結果、司法事件情報が保存されている、基準行政の命、いえそれどころか日本国の宝といっても過言ではないデータです。

(注) 余談になりますが、私は「基準システム」の「労働災害データ」を個人情報・企業情報を分からぬようにして、公開すべきであると考えています。ひとつ、ひとつの災害について、「事業場の業種・規模」「被災者の性別・年齢・経験年数」「災害の発生日・休業日数」「起因物」「事故の型」「傷病部位」「派遣労働者であるかどうか」等の細かいデータが保存されて、エクセルファイルで取り出すことができるのですから、研究者にとっては垂涎のデータであり、役所だけでなく民間で分析してもらうことにより、今後の労働災害防止にたいへん役立つものであると思います。

さて、「小さい署」が36協定データを基準システムに登録するということがどういう意味を持つのか、次回説明します。