悪徳コンサルタント(3)

小金沢連嶺湯ノ沢峠付近で見つけたケーブルクレーン・甲州市、by T.M)

皆さま、明けましておめでとうございます。

本年も、またよろしくお願いいたします。

さて、セブンイレブンの残業代の不払事件のような事件があるブラック企業で発生し、それをブラック企業から依頼された悪徳コンサルタント(私)が、どのように監督署に言い訳をするかという状況を書いてみます。

セブンイレブンの残業代不払い事件の原因は、会社の給与計算プログラムへの指数の入力ミスであることは間違いないようです(会社もそれを認めています)。

「精勤手当」の割増賃金として、「125%の割増賃金×時間外労働時間数」を入力しなければならないのに「25%の割増賃金×時間外労働時間数」としてしまったのです。

でも、悪徳コンサルタントである私は、監督署相手に、「なぜ、それがいけないのだ」と開き直ると思います。そして、その計算方法で正しいと主張します。

私の論法は次のとおりです。

「精勤手当は通常、遅刻・早退・欠勤がなければ支払われる手当である。だが、当社の精勤手当はそれらの条件に付け加え、残業を快く引き受けてくれた者に支払われることが条件としてある。もちろん、残業は36協定の締結があれば使用者の命令で行わさせることができるが、当社では労働者の許諾の意を確認し残業命令を出すことにしている。残業時間を含む労働時間に対する割増賃金であるから、125%割増でなく、25%の割増だから正しいはずだ。」

この私(悪徳コンサルタント)の主張の根拠は、歩合給に対する割増賃金の計算方法を用いていることです。歩合給とは、例えば営業マンが「売上の何パーセント」といった約束で支払われる賃金のことですが、この「歩合給」について言えば、割増賃金は「125%」でなくて「25%」でかまわないのです。これは、「歩合給の算定基礎となる売上」とは、残業時間を含めた全労働時間に発生するものであるから、このような考え方をします。

つまり、「精勤手当」とは、「歩合給」のようなものであるから、「125%」でなく「25%」でよいのだという主張です。

(注)労働基準法に詳しい方なら気付くと思いますが、歩合給に対する残業代の割増賃金の計算は、歩合給を「全労働時間」で除した金額で計算します。今回のセブンイレブンの計算ミスは、「精勤手当」を「所定労働時間」で除していますから、もちろん、こんな屁理屈は通常とおりません。でも、悪徳コンサルタントは、「所定労働時間」で除した方が賃金額が高くなると説明します。

悪徳コンサルタントの目的は、「正しい主張」をすることでなく「監督署にダメモトで主張してみる」ことですからこれで良いのです。

そこで、誠実な監督官が理をつくして説得してきたのなら、こ悪徳コンサルタントは次のように答えます。

「あなたの見解と、私の見解は違います。ただ、役所とケンカするつもりはありませんから、今後法違反はしないようにします。ただし、過去の法違反の遡及是正は、当社も言い分があるのでしません。」

この後、監督署が本気で司法処分でもしそうな時はあっさり支払いますが、監督署は中々動かないと思います。何より「未来に向かっては法違反を是正する」と約束しているのですから、「過去の未払い」についてはケースバイケースで対応しようとなるはずです。「精勤手当」のような本俸と比較して少額の手当の割増率が低いというだけで司法処分はしない可能性が高いと思います(少なくとも、私の現役時代はそうでした)。

役所には、ごねた者が勝ち。嫌な現実ですが、確かにそのような所はあります。世の中、セブンイレブンのように監督署の言うことを素直に聞いてくれるところばかりではありません。だから、悪徳コンサルタントの需要はあるのです。