雇用調整助成金

( 霞ヶ浦・茨城県土浦市,by T.M)

最近、コロナウィルス関連で、企業が労働者を休業させた時の補償をどうするのかということが話題に上ります。

企業への補償のひとつに、「雇用調整助成金」というものがあります。
雇用調整助成金とは、通常は景気変動などによって、会社の業績に悪影響があった場合に、会社側が行った雇用調整(休業・教育訓練・出向などの措置)に対して助成金を支給することにより、従業員の雇止めや解雇を防ぐためにあります。
今回の特例措置は、新型コロナウイルスの影響により業績が悪化したなどの理由によって、事業主が従業員を休ませた場合に、その支払った休業手当の一部を助成するものです。
財源は労働保険です。

この雇用調整助成金を巡って、現在労働基準監督署の労災関係の窓口では、非常に業務量が増えています。雇用調整助成金の事務手続きは、職業対策課(ハローワーク関連部署)が行うものであり、監督署が直接に関与はしていません。それなのになぜ、筋違いの労働基準監督署の窓口で相談が増えるかというと、
「労働保険未加入事業場の方が、雇用調整助成金の援助を受けたいと希望する」
からです。この場合、監督署の窓口が相談窓口となる場合があります。

労働保険というのは、労災保険と雇用保険のことです。従業員を1名でも使用している事業場は必ず加入しなければならないものです。(注:労災保険は絶対に加入が必要。雇用保険は、事業場が使用している労働者の労働時間が短い等の理由がある場合は加入の必要はない。《加入できない》)
毎年労働保険を支払っている事業場は、労働保険の事務手続きに慣れていらっしゃるし、書類も整っているので、比較的にスムーズに雇用調整助成金を受給できます。

しかし、労働保険が未加入の事業場については、「改めて労働保険に加入」してもらう必要があります。そして、「過去2年間分の保険料を支払って」から、雇用調整助成金の申請ができます。労働保険の新規加入については、労働基準監督署が窓口となるため、現在、監督署では業務量が増えている訳です。

この監督署の窓口で、労災保険の加入手続き中に逆切れする方もいるそうです。
「従業員を解雇しなければならないのに、なぜ改めて労災保険料を2年間分も払わなければいけないのだ」
「手続きがめんどくさい」等の苦情があります。
監督署の職員は、立場上、そういう人たちに何も言いかえせないでしょうから、私が代わりに、このブログに書きます。

「労災保険の加入さえ怠ってきた事業場が、『雇用している労働者』のためにとかいって、助成金を申請することは、矛盾している」

雇用調整助成金の財源は、真面目で実直に社会的な義務を果たしてきた事業場が長年にわたり納めてきた雇用保険料が原資です。
コロナウィルス対策を巡っては、「事業場に休業してもらって、速やかに補償をする必要があるので、多少の矛盾は仕方がない」という意見もあるでしょう。もちろん、それは「政治」が判断することです。

また、「労災保険の加入については、行政の努力不足」との非難もあるでしょうし、どんな事業主であっても、そこに働く労働者の生活の糧になる資金となるのですから、雇用調整助成金の支払いは必要なことです。

ただ、このブログを読んで頂いている皆様には、雇用調整助成金のこのような背景を知って頂きたいと思います。