忘れられた労働問題

(小武川と鳳凰三山・山梨県北杜市、by T.M)

毎週日曜日の午前9時に定点観測しているんですが、先週のこのブログのアクセス数が、1週間の最高値を記録しました。といっても、5000アクセスをちょっと超えたくらいなんですが、1日平均700アクセスを超えた週は初めてなんで嬉しくなってしまいました。こんな、誤字脱字だらけの長文、誰が読んでるのかと、書いてる私も不思議に思います。

もしかしたら、先週はミニ炎上していたのかもしれません。先週の記事を読んだある人から、「何が書いてあるんだかよく分からない」と言われました。確かに、タクシー業界のことを知らない人が読んだら先週の記事は何だか分からないもんだったと思います。でもね、先週の内容は業界関係者が読んだら、けっこう過激で革命的なものだったんですよ。というか、最後の公式はけっこう物議を醸すかもしれません。

以前からアクセス数が伸びる時は、「無給医」「ウーバーイーツ」等を取り上げた時でした。「正規」「非正規」の問題、「名ばかり個人事業主」等の問題が現代の労働問題の旬なのでしょうけど、これからタクシー業界のことも定期的に書いていこうと思います。

さて今日は、前述した「旬の労働問題」でなく、忘れ去られた労働問題のことを書こうと思います。

先週、平日の午後に仕事の都合で横浜駅西口に行きました。長い工事期間を経て先月にオープンしたばかりのJRビル周辺なんぞを少し歩いてみましたが、私の知っていた横浜駅西口ではなくなっていました。新しいビルとショッピングモールですので、人出がとても多く、若い人もたくさんいましたが、コロナ危機なんて忘れ去られているようでした。こんな場所から感染が広がっていくのかなと思いました。

横浜駅周辺の新たな賑わいとは対照的に、地方都市では老舗のデパートが閉鎖や倒産するケースが相次いでいるようです。私も、宮城県・北海道・栃木県の県庁所在地ではない地方都市で勤務してきましたので、少しはそのような街のことが分かる気がします。

私が監督官に就任した40年前には多かったのに、現在ではほとんどなくなった労働問題というのは、「出稼ぎ」と「内職」です。当時は、労働問題が起きると、「出稼ぎ手帳」のチェックをよく行ったものでしたが、現在では交付する自治体がほとんどないそうです。例えば、青森県の統計によると、最盛期の8万人(1974年)から現在では2000人弱となっているようです。

(注)出稼労働者手帳は、出稼労働者に対して出稼元の市町村が交付する手帳であり、労働者は市町村長から、氏名、性別、世帯主との続柄、本籍、現住所、電話番号、生年月日、世帯員の証明を受ける。出稼ぎに出ている期間は、住民票は異動させない。

出稼ぎが減少した理由は、企業が派遣や構内下請けに人材確保の重点を置くようになったことも一因ですが、地方都市に住む人たちが超高齢化してしまって、出稼ぎという形態がほとんどなくなったということが、その主な理由だそうです。(逆に、「出稼労働者」という優良な労働者が確保できなくなったことが、「派遣」「構内下請」の隆盛の一因ともいえます)

「内職」もまた見なくなりました。内職とは、家庭内で主婦の方が行う仕事ですが、その主流は「衣服の縫製」と「電気機械部品の組立」でした(未だに「最低工賃」としては、この2つの業種関係のものが設定されています)。でも、繊維産業・電機産業の衰退により、内職もなくなりました。なによりも「専業主婦」という形態が減少し、内職より実入りの良いパートタイマーが増加しました。一時私は、「データ入力業務」が「内職」の主流になるかと思いましたが、オンラインデジタルデータで情報入手の機会が増えたことと、「企業の機密情報漏洩防止」のため、産業としては成立しませんでした。

現代では、現役の労働基準監督官は「違法派遣」「偽装請負」「正規・非正規の労働条件格差」「名ばかり個人事業主」「外国人労働者への不法行為」等の問題で多忙だと聞きます。それと比較する時、出稼労働者への賃金不払いを調査し、その出稼労働者を専業主婦の奥さんが内職しながら地方都市で待つなんていう光景があった私が現役の時代は、(特に昭和の時代)なんとも牧歌的なものでした。(携帯電話がなく、ビデオ通話なんて夢のまた夢だった時代のことです)