アルバイトと休業手当

(舟と八幡堀・近江八幡市、by T.M)

日、近所の床屋さんに行ってきました。そこは、店主が一人で経営している店です。9年前にウチの猫が家出をした時に保護してもらった縁で通うようになりました。私の散髪が終わった後で、店主が私に、「今月末で店を閉めます」と言いました。理由はやはりコロナの影響が少なからずあるようでした。

私の住む京急・上大岡は横浜市指定の5つの副都心のひとつで、菅総理の選挙区(神奈川2区)でもあります。駅周辺はそれなりに栄えていて、今風のお洒落なヘアサロンもありますが、私は住宅地のど真ん中にある昭和を感じさせるこの床屋さんが大好きでした。コロナは、素敵な物を奪っていきます。

今日は、アルバイトと休業手当について書きます。

コロナ禍により、職場にて休業を申し渡されたのに、アルバイト故に休業手当が支払われない。そんな扱いに腹を立てて監督署に行っても監督官は何もしてくれなくて、理不尽な思いをしたこともある人もいるかもしれませんので、監督署ができることと、できないことを説明しようと思います。

(注)現在、厚生労働省では「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」として、休業されている方への支援を行っています。HPからその内容を読んでみると、けっこう充実した支援策のような気がしますが、私はその支援金等の事務手続きについては行ったことがなく、現在のコロナ禍の臨時の救済措置については疎い者だということをお断りしておきます。

アルバイトの方が休業手当を支払われていないのに、監督署が何もやってくれない最大の理由は、「いくら休業手当を払わせたらいいのか、監督署では計算できない」というものです。例えば、正社員で「週休2日制土曜日・日曜日休日」という方については、週5日間の休業日に対し「平均賃金の60%」を支払われれば法の最低基準は満足されます。しかし、「ある週は3日稼働、ある週は1日、ある週は2日等々」の変則勤務についているアルバイトの方については、「何日休業するのか分からないので、休業手当の金額が決められず」、監督署としては未払い休業手当の是正勧告をしようがないということなのです。

まあ、これが監督署が未払い休業手当の是正勧告に理由ですが、ひとつ忘れていけないのは、このように労働条件が曖昧な状況を作り出しているのは、あくまで100%「事業主の責任」だということです。

労働基準法第15条には、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。明示しなければならない内容は「労働契約期間、始業・就業時間・休憩・休日等」で、明示の方法は「書面・FAX・電子メール等」です。この「労働条件明示」の法違反をした者については、「30万円以下の罰金」という刑事罰が定められています(要するに「犯罪行為」ということです)。

ようするに、休業している労働者が「労働契約があいまいだから休業手当」が支払われないという状況が発生するのは、事業主が最初に「労働条件の明示をしなかった」という犯罪行為をしたからです。それを勘違いして、「アルバイトは労働時間が色々だから休業手当は払えない」と開き直る経営者が多いことは残念なことです。

(注)労働契約といっても、「労働日が不定」だから明示できないという方は「最低労働日」の設定という方法もあります。それをオーバーした時は、その分だけ賃金を支払えばかまいません。また、「時々仕事をやってもらっている。だから、日々契約が切れるに日雇い労働者だ」という方は、今の時代ですからスマホからメールで「雇入れ通知書」を交付して下さい。

さて、「事業主がけしからんから労働契約が曖昧」であっても、労働基準監督官では休業手当を支払わせることはできません。やはり「休業手当が計算できないという」壁は厚いです。監督官はせいぜい、「今後、労働条件通知書を交付するように」というように事業主を指導するだけです。

(注)「労働契約不備」であっても、一定の同一の労働条件が継続している場合、例えば、「毎週2回、朝9時から午後5時まで労働」というような労働慣行が成立している場合は、監督官でも休業手当未払い事件として取り扱えます。

しかし、事業主の非により、休業手当が払われていない方を救済するのは、やはり行政の仕事なのですから、前述のように、厚生労働省は非正規雇用の労働者の休業については、いくつかの救済プログラムを用意しているようです。その使用ができない場合は、労働局による「斡旋・調停」の方法もあります。