派遣労働者の最低賃金を時給1500円に!

(嵐山、by T.M)

ひとつ提案します。

「派遣労働者」に適用される最低賃金をつくりましょう。時給1500円くらいでいかがでしょうか。雇用が不安定な派遣労働者は、他の者より高い賃金をもらうべきです。

現在、派遣労働者には、派遣先に適用される最低賃金が適用されます。派遣労働者の最低賃金を上げるためには、派遣労働者には派遣元の最低賃金も適用されるという法改正を行えば良いのです。ざっと、最低賃金法を読んでみて思ったのですが、この方法なら、法律に一条追加するだけでいいので、改正については簡単にできると思います。

派遣労働者には、2004年の「製造業の派遣解禁」以前には、「派遣元」の最低賃金が適用されていましたので、元に戻すと考えれば良いのです。

こう書くと、派遣労働者には「派遣先」と「派遣元」の両方の最低賃金を適用させるのかと不思議に思う人もあるかと思いますが、複数の最低賃金が適用されることは普通にあります。

現在、最低賃金は「地域別最低賃金」と「特定最低賃金(産業別最低賃金)」の2種類があります。例えば、千葉県の「地域別最低賃金」は時給984円であり、鉄鋼業の産業別最賃は1054円(12月25日から適用)です。最低賃金は、2つ以上の最低賃金が適用される場合は高い方が適用されます。ですから、千葉県の鉄鋼業で働く人の最低賃金は時給1054円ということになります。この産業別最賃の設定については、地域の事情に応じて、地方労働局長が行うことができます。

新たに、派遣労働者には派遣元の最低賃金も適用されることとして、「派遣業」に対し「産業別最低賃金」を設定してやれば、派遣労働者の時給を上げることができます。そして、時給1500円を派遣労働者の最低賃金にしましょう。

こんなことを書くと、「パートタイマー」等の短時間労働者はどうするのだと言う人もいます。そういう議論がでてくることは歓迎します。雇用が不安定な者ほど高い賃金が支払われるべきだという考えが常識になれば良いと思います。

Twitter社

(嵐山の紅葉。by T.M)

薬局で、マイナンバーカードを使ってみました。登録だけすればいいのかと思ったら、毎回使用しなければいけないそうです。なんか、めんどくさいですね。

FLASH 11/18

2022年10月、440億ドル(約6兆4500億円)で、Twitterを買収した実業家のイーロン・マスク氏。

 マスク氏はさっそく、同社の経営陣の刷新などに踏み切っており、「従業員7500人のうち半数を解雇」したことが報じられるなど、その“大ナタ”に注目がされてきた。

 そんなマスク氏は、11月17日までに、Twitter社員に“ある決断”を迫ったという。

「CNNの報道によると、マスク氏は社員たちに、“長時間、猛烈に”働くことを指示するメールを送ったといいます。11月10日のTwitter社員向けのスピーチでは、『週80時間の労働に備えよ』と語った、という報道も。

 (略)

Twitter社での解雇・退職劇って、派手ですね。多分、技術屋の中には、こんなアホの奴の下でやってられるかと思って、自ら退職していく奴もいるんだと思います。

海外の労働問題の事件のことは良く分からないんですが、これが日本での事情ならちょっと分かります。「外資系企業」ていうのは労働基準監督官にとって、少しやっかいなんです。

労働時間等のことで、「外資系IT企業(日本法人、従業員100名前後)」を指導したことがあります。そこの社長(日本人)は、役所が何を話しても、ノラリクラリと言い訳するだけでした。いい加減役所の方でも問題視をはじめたところ、突然に社長が変わってしまいました。本社(米国在)からの解雇でした。エッと思っているうちに、後任の社長も、次の社長も2ケ月くらいで解雇されました。因みに、その会社は業績も良く、社長が解雇されても、日本人従業員たちは、何もなかったかのように業務を続けていました。

まあ、「代表取締役」を「株主(オーナー、ここでは米国本社)」がいくら解雇しようが、労働法規に抵触することはまったくないのですから、役所としては関係ないんですが、ずいぶんとあっさりしているんだなと思いました。結局、この企業は英語が堪能な売れっ子社会保険労務士に委託することで、役所(労基)との関係を改善したのですが、役所内での企業への印象は最悪でした。(もっとも、刑事事件になったとしても、日本法人の日本人社長を送検するだけで、本社には何の影響もない訳です。)

ただ、外資系会社のいい所は、話が早い事。理解さえしてくれれば、“法律”は守ります。

今回のTwitter社の日本法人においても、「法令違反」はおきないと思いますが、ドライに人員整理が行われると予測します。元々、Twitter社に入社するような人は優秀な方が多いと思います。再就職も、他の離職者よりもアドバンテージがあるような気がします。

11/18 毎日新聞

長崎市の三菱重工長崎造船所で勤務中に粉じんを吸ってじん肺などになったとして、下請け会社の元従業員と遺族が損害賠償を求めた訴訟で、原告側は18日、原告30人中20人に計約1億2200万円を支払うよう命じた7日の長崎地裁判決を不服として、全員が福岡高裁に控訴した。三菱重工側は「対応を検討中」としている。原告側は控訴を決めた理由を「原告の一部しか訴えが認められず、賠償額も請求額から大幅に減額されたため」としている。

 原告団の副団長、田中竹子さん(82)=長崎県長与町=は控訴した後、「判決から毎晩眠れない日が続いている。これまで長年、三菱重工と下請け会社のために働いてきたのに(こんな判決で)悔しいし、歯がゆい思いだ」と訴えた。

 「特定元方事業者」として、造船業では下請け労働者へ安全配慮義務があります。そして、日本の風土として、「企業に一生を託す」という考え方があります。

 時代と業種の差はありますが、「昭和の造船業」と「令和のIT企業」では、働く旗の意識が違うんじゃないかなと考えてしまいます。

教師の営業時間?

京浜島つばさ公園からの風景、by T.M)

長い記事だけど引用します。

1/19 ENCOUNT記事

「銀行と同じで(教師にも)営業時間がございます」。進路相談の日程調整をめぐり、保護者に勤務時間をキッパリ伝えた教員の投稿がネット上で話題を集めている。2014年のアカウント開設以降、教育現場の問題点について発信を続ける現役公立中学校教諭の神原楓さんに、投稿に込めた意図を聞いた。

「久しぶりに面白いやりとりがあった。

保護者『先生は土日、学校にいますか?』

『土日はいませんね』

保護者『じゃあ進路相談できる時間がないですね…』

『私が授業に入ってない時間をお伝えしますね』

保護者『いやその時間は私が仕事じゃないですか』

『銀行と同じで営業時間がございます』」

 投稿では、子どもの進路相談を行いたい保護者と神原さんのやり取りを、対話体で紹介。神原さんは続く投稿で「いまだに『教師はいつでも相談にのってくれるもの』と思っている保護者はたくさんいる。いや、むしろ事実として、今も多くの教師が『オールタイムで保護者の相談』にのっている。保護者が勘違いしてしまうのも無理はない。『営業時間』を明確にしない学校に非がある」と問題の本質に触れている。

 この投稿は5600以上のリツイート、6.5万いいねを集めるなど大きな話題に。「子どもの大事な進路相談ですから、保護者側が時間を作って欲しいですね。先生ってほんと大変です」「先生も休ませてあげて下さい」「子どもの為に、勤務上無理をするのは親のほうであるべき」と好意的な反応が多く寄せられている。

「今はちょうど三者面談の時期で、11月中には志望校を決めないといけない。私は部活動顧問を断っており、土日は学校にいないことも日頃から保護者には伝えている。今回の保護者も話せば分かってくれたようで、特に険悪な感じはなかったです」と神原さん。

 とはいえ、共働き世帯の保護者からはできれば土日に対応してほしいという声があるのも事実だが、必要なのはまず学校としてのスタンスを明らかにすることだと神原さんはいう。

「私も小学生の子を育てる親なので、土日にも学校を開けてほしいという気持ちは分かります。それでも、我が子の面談や行事などあればまずは自分が休みを取るのが道理。もちろん、どうしても難しいという場合は管理職と相談して勤務時間をずらすということもありますが、本当にどうしてもということは実際にはほとんどない。ちゃんと話せば都合をつけてくれる保護者がほとんどです」

 ツイッター開設当初は投稿内容に批判的な声も多かったが、最近は肯定的な反応がほとんどだという。「何よりも教員自身の労働観が世間一般より遅れていて、サービス残業や土日出勤はして当たり前だという意識が根強く、だからこそ社会や保護者も『先生はそういうもの』と誤解してしまう。教師にも法的に定められた適切な勤務時間がある。今の20代や30代前半の先生など、ようやく時代に合った価値観を持った若い世代が増えてきた。彼らのような期待の星を上の世代が守っていかないと」。今後も教員の労働環境改善のため、地道な発信を続けていくつもりだ。

何か嫌だな、この人の言い方。私の、このブログの過去記事を読んでくれれば分かるけど、私は教師の労働時間については、問題点を指摘してきました。

1 修学旅行は労働法規に照らし合わせ、明らかに違法だから中止しろ

2 部活活動について、労働時間にカウントしろ 等

です。

でも、この人が言うような主張には賛成しません。

揚げ足取るようですが、「教師の営業時間」って、間違った表現方法です。銀行員が「銀行員の営業時間は何時から何時までです」なんて言いいません。「弊社の営業時間は何時から何時までです。」と言います。

さらに言うと、「公立学校」って「営業」しているのですか?いつから、「営利団体」になったんです。

公立学校教師には、残業代が払われていない。だから、残業を命じることはできない。ここまでは、賛同します。

しかし、「今の20代や30代前半の先生など、ようやく時代に合った価値観を持った若い世代が増えてきた。」として、「保護者の都合なんてどうでも良い。自分たちの労働時間が大事だ」という人には公立学校の教師になって欲しくないと思います。

公立学校はサービス残業を撲滅すべきである。そのため、人員の増加等をすべきである。そして、労働時間の適切な管理をすべきである。そう思います。

しかし、「保護者・生徒のために、法整備を行い教師に残業命令を出せるようにすべきである」とも考えます。少なくとも、私立学校ではそれも可能です。

最低賃金の謎

( 飛行機からの富士山、by T.M)

失われた30年とかいいます。1990年から2020年までの経済成長率は日本1.5倍増に対し米国3.5倍増、中国37倍増、ドイツ2.3倍増だそうですが、この日本の低成長を揶揄した言葉だそうです。。

日本人の賃金も上昇していないそうです。この30年間に日本の平均賃金が4.4%増に対し、米国47.7%増、英国44.2%増、ドイツ33.7%増、フランス31.0%増だそうです。

この数字を見て、ちょっと驚きました。私が知っている賃金関係の金額の指標はもっと上昇しているからです。その指標とは「最低賃金額」のことです。

1990年の最低賃金は全国平均で516円、2020年では902円で、30年間に74%増となっています。東京だけに限るなら1990年が548円で2020年は1013円なので、85%増です

この30年間に平均賃金がほぼ横這いなのに、最低賃金だけは約80%上昇している。経済学的には、何を意味するのでしょうか?

多分現在では、30年前よりも「最低賃金ギリギリの給与額で働く人の割合」が増えているということなのでしょう。しかし、「最低賃金を引き上げても経済成長しない」ということも事実のようです。

(あと、地方の賃金と東京の賃金格差も大きくなっているようです。)

委託への是正勧告

(フクジュソウ、by T.M)

やっぱり韓国ドラマって凄いと思います。

日本の「半沢直樹」にように、企業内の人間関係と陰謀をテーマにした韓国ドラマの『大丈夫じゃない大人たち~オフィス・サバイバル~』が現在CS放送のホームドラマチャンネルで放映されています。このドラマで、次のような人物Aが登場します。

「Aは大手家電製造会社のXに所属する、人事課に所属するエリート社員。Xは地方工場のYの人員整理を行うこととした。Xは人事のプロのAに『成功したら取締役にする』との約束をし、『リストラをスムーズに行う下準備をすること』という極秘命令を与えAを地方工場Yに赴任させる。この本社の極秘命令のことは、Yの工場長も知らない。Aは、Yにおいて人事に不満を抱くベテラン社員Bに、『私のいうことを聞いたら、人事で優遇する』と約束し、Bを利用しリストラの準備をする」

どうですこの物語。日本の半沢直樹なら、この「人事のA」と「裏切者のB」にYの従業員たちが「倍返し」をし、「本社のリストラの陰謀を潰す」というのが「お約束」です。

ところが、この韓国ドラマでは、なんとAが「ヒロイン(女優)」であり、主人公なのです。当然、Aは様々な葛藤、事情を抱えています。この悪役のAの立場から見た企業の姿が、単純なストーリーの「半沢直樹」より、ドラマへ奥行を与えているのです。

(しかし、どうして、日本のドラマは長く続くと、つまらなくなってしまうのだろう。「半沢直樹」も「ドクターX」も第2シーズンぐらいまでは面白かったけど、いまじゃ「水戸黄門」だもんな)

このドラマの凄さはそのリアルティです。ドラマの第一話の冒頭で、従業員を解雇する場面がでてくるのですが、それは私が労働基準監督官時代に見聞したリストラの場面にそっくりでした。もしかしたら、「リストラ」を経験した日本の企業は、このようなドラマのスポンサーになることを嫌うかもしれません。そんなドラマを作れることが、韓国ドラマを面白くしている原因のひとつなのかもしれません。

読売新聞 5月29日

ネット通販「アマゾン」の荷物の宅配を運送会社から業務委託された個人事業主のドライバーについて、運送会社から指揮命令を受けており、事実上の雇用関係にあるとして、労働基準監督署が運送会社に労働基準法違反で是正勧告していたことがわかった。宅配荷物の増加で、個人ドライバーに業務委託する動きが物流業界で広がる中、違法とする認定が明らかになるのは異例。今後影響が広がる可能性がある。

 関係者によると、運送会社は、「アマゾンジャパン」の荷物の配送を受託する複数の協力会社のうち最大手で、東証プライム上場の「丸和運輸機関」(埼玉県吉川市)。春日部労基署(埼玉県春日部市)が1月に出した勧告では、同社が宅配を業務委託している個人ドライバーの一部について、同社の労働者にあたると認定した上で、労基法で定められた労使協定を結ばずに法定労働時間(1日8時間)を超えて働かせたなどとしている。

 同社は、個人ドライバーと、1日あたりの固定料金で宅配を業務委託。しかし、ルートを指定したり、予定外の配達を急に指示したりしていたほか、制服の着用も求めていた。また、報酬の一部を「事務管理料」として天引きしていたという。

 業務委託では、報酬は成果に対して支払われる。業務の進め方は個人事業主の裁量に任される。企業が指揮命令すれば、雇用関係にあるとみなされ、企業は労働条件を書面などで明示することが必要になる。怠れば労基法違反になる。

 労基署は是正勧告を出した企業に改善内容をまとめた報告書の提出を求める。

 同社の昨年3月期の売上高は1121億円。うち23・4%がアマゾン関連という。

 同社は読売新聞の取材に、委託する個人ドライバーについて「労働者性は認められない」とする一方、是正勧告については「お答えできない」としている。

 物流業界では、宅配荷物の急増と人手不足を背景に、個人ドライバーに委託する動きが近年急拡大している。国土交通省によると、軽貨物運送業者数は2016年度は約16万業者だったが、20年度には約20万業者に増え、同省は、この大半が個人ドライバーとみている。

これは、大きなニュースです。私は、トラックドライバーの待遇の改善こそが、日本の低賃金の解消の第一歩になるものだと思っているからです。

大きな通販会社の物流倉庫に行ってみると、その巨大さに圧倒されます。その存在が、「地方都市のデパートや商店街を衰退させている」くらいなのですから、まさに産業構造の変化の象徴と言えるものです。

この通販の運送の現場では、世界中で「委託」という名の「搾取」がまかりとおっています。ケン・ローチ監督の映画「家族を想うとき」では、その実態が描かれ、また最近のNHKの「クローズアップ現代」では、その問題が取り上げられました。

米国のアマゾン本社では、格差是正のために自ら取り組んでいるとも聞きます。この記事にある「丸和運輸機関」とは、宅配を中心に拡大している企業で、ここ数年間で株価は10倍以上になっています。また、Wikipediaの説明によると「社員教育」に力を入れている優良企業ということです。ぜひ、業界を引っ張る企業として、この是正勧告を契機として、委託先への待遇改善に取り組んで頂きたいと思います。