合格連絡がきました

(京浜島つばさ公園からの風景、by T.M)

今年の春に、労働基準監督官試験を受ける予定の方から相談メールを受けました。それはこのブログでも紹介しました。

その相談者から、監督官試験を合格したとの連絡を受けました。そこで次のような返答をしました。

A 様

合格おめでとうございます。

これから採用日までは、「人生にとって黄金の休日」となります。

現在の仕事との関り合い方次第だと思いますが、ゆっくりと楽しむことを勧めます。

因みに私は、その期間に3ケ月間の中国一人旅をしました。当時はまだ珍しかった「地球の歩き方」を手に、「秀インターナショナル(後のHIS)」より入手した格安航空券を利用しました。40年前の中国です。日本より貧しく、みな人民服を着ていました。汽車に乗り、シルクロードの奥の都市・ウルムチまでいった覚えがあります。(現在、ウイグル問題で揺れている地区です)

本当に自分の人生にとって、幸福な時期でした。

A様も、何かにチャレンジすることを勧めます。(もっとも、ハメを外して「内定取消」とならないように、注意して下さい)

X労働局勤務ということですが、X局で一番大きな監督署で令和2年まで署長をしていた「B」さんが、私の同期で、確かY労働基準監督署に再任用でいると聞いた覚えがあります。

もし、機会があったら尋ねてみて下さい。彼なら、私の知り合いだと言えば、歓迎してくれるはずです。

社会経験豊かなAさんにアドバイスすることではないと思いますが、労働局はやはり「組織」です。色々な者がいます。まあ20%が尊敬できる者、20%が「保身」だけの嫌な奴だと思って下さい。その嫌な奴が、意外と幅を利かせていることは、どこの社会でも一緒です。

小原 立太

しかし、こんな初々しい連絡をもらうと、我が身を振り返り、ダグラス・マッカーサーの言葉を思い出します。曰く、

  老兵は死なず、ただ消え去るのみ

休みます

(ロウバイ、by T.M)

いつも、当ブログに訪問頂きありがとうございます。

勝手ながら、今週は更新を休みます。

特化則、有機則・・・

(津久井のウメと相模川上流の眺め、by T.M)

「有機溶剤」「特定化学物質」「特別有機溶剤」「がん原生物質」「特別管理物質」・・・

衛生管理者の受験準備講習の関係法令(労働安全衛生法及び労働基準法)の講座の講師をすることになったんで、有機則や特化則の条文を読み返してみたんだけど、あまりの難解さにイライラしてきました。

でも、私は講義する立場であって受験する立場でないからどうってことないけど、「製造禁止物質」や「製造許可物質」を全部暗記する受験生はたいへんだろうな・・・

特にたいへんなのは特化則。この省令は「有機則」や「鉛則」でグループ管理できない化学物質を個別管理しようとしてできた省令なんだけど、管理する物質が増えすぎて、もうどうなっているのか分からない。この特化則について、某企業から分かりやすく講義してくれという依頼があったけど、「この省令は、体系的にできていないので、分かりやすくすることは不可能です」と丁重にお断りしました。ようするに、特化則とは「論理的な整合」を取ることを目的としているだけの文章で、それゆえ誰も理解困難なものとなっているのです。

例 特化則第5条 事業者は、特定第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場(特定第二類物質を製造する場合、特定第二類物質を製造する事業場において当該特定第二類物質を取り扱う場合、燻くん蒸作業を行う場合において令別表第三第二号5、15、17、20若しくは31の2に掲げる物又は別表第一第五号、第十五号、第十七号、第二十号若しくは第三十一号の二に掲げる物(以下「臭化メチル等」という。)を取り扱うとき、及び令別表第三第二号30に掲げる物又は別表第一第三十号に掲げる物(以下「ベンゼン等」という。)を溶剤(希釈剤を含む。第三十八条の十六において同じ。)として取り扱う場合に特定第二類物質のガス、蒸気又は粉じんが発散する屋内作業場を除く。)又は管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんが発散する屋内作業場については、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けなければならない。ただし、当該特定第二類物質若しくは管理第二類物質のガス、蒸気若しくは粉じんの発散源を密閉する設備、局所排気装置若しくはプッシュプル型換気装置の設置が著しく困難なとき、又は臨時の作業を行うときは、この限りでない。

これ、もはや日本語じゃないですよね。

ところで衛生管理者の受験生の皆様が苦労して暗記した「特化則」や「有機則」が5年を目途になくなる方向性になっています。世の中は不条理です。

つまり厚生労働省の化学物質対策課も、現状の化学物質の管理の状況では、流石にまずいと思ったのか、SDS(安全データーシート)の普及の徹底を目指し、SDSに記載されているGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム、The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)を基に実施される化学物質のリスクアセスメントの結果について規制しようというものです。

要するに、「小難しい法条文」でなく、化学物質の個別のSDSに記載されている「ばく露限界」等の数値を、事業場に理解してもらおうというものです。

 非常にすっきりとして、分かりやすい化学物質管理の方法になるような気がします。

 この「グループ管理」が限界なので「個別管理」に変更するということは、当然、「紙による管理」から「デジタル化」した管理に切り替わるということです。そうでなきゃ、数千にも達する化学物質管理はできません。

 (注)現在、リスクアセスメントが必要な化学物質の数は700前後ですが、5年後には3000以上に増えるそうです。

「デジタル化」による個別管理で効率化を目指す。これって行政のあるべき姿だと考えていたら、「マイナンバー」制による個別管理がこの発想であったことに気づきました。

化学物質と違って「人間」の個別管理は効率だけでは割り切れないのかなと思いました。

連休なのに仕事です

(本牧ふ頭B突堤からのベイブリッジ、by T.M)

休明けに「衛生管理者」の受験準備講習の「法令」について講師をします。

この講習内容で講師をするのは、初めてです。

時間は、3日間でトータル12時間。

この連休中に、過去のテスト10回分、トータル140問の過去問の精査を行い、分析して、資料を作成しています。

この歳で新しいことに挑戦できることを喜ぶとともに、あまりのハードワークに音を上げています。

私の講習会に来られた方全員の合格を目指しますが、年寄には辛い準備です。

そんな訳で、今週と来週のブログ更新を休みます。再開は5月15日です。

では、皆さん良き連休を!

そして、仕事が休めぬエッセンシャルワーカーの方々に感謝の意を表します。

ありがとうございます。

ウィル・スミスに思う

(十国峠からの富士山、by T.M)

ウィル・スミス、かっこよかったです。

病気の奥さんを、大多数の前でジョークの種にされたら、誰だって怒るのは当たり前です。ウィル・スミスのことを、私は絶対に支持します・・・

とこう思っていたけど、よくよく考えてみたら、これはそんな単純なことではないなと思いました。何よりもアカデミーが本当に困っているだろうと思います。

もし、頭の禿げている中年男性が、そのことを女性に馬鹿にされたので、その女性をビンタしたとしたら、やはり非難されるのは中年男性ということになります。

ウィル・スミスの奥さんの病気の脱毛症と、男性の加齢によるハゲを一緒にするなという意見もあると思いますが、心を傷つけるのは一緒です。ウィル・スミスに許されて、中年男性に許されないというのなら、論理は破綻していると思います。

私の専門領域の労働問題に話を移します。

「パワハラが横行している職場において、上司の言動に切れて、部下が上司をぶん殴ってしまう」

これって、ぶん殴った部下が懲戒処分にされても、法的には問題ないと思います。例え、そのパワハラの内容が、今回のウィル・スミスの事件のように、部下の家族への耐え難い誹謗中傷であったとしてもです。悲しいことだけど、それが法律の論理です。

酷いパワハラについては、事実関係を明確にして、できれば録音等の物的証拠をもって対抗しなければなりません。「言葉の暴力」はリアルの暴力より軽く見られるのです。

さて、私の体験を書きます。私はハゲです。30代前半から、前髪が段々となくなり、今では数本になりました。完全になくなれば、まだ見ようがあるのですが、数本残っているのが惨めです。私のこの頭髪について、「ハゲ」と面罵されたことが何回もあります。

監督署で、仕事にあたっていた時のことです。相手が事業主であったこともありますし、労働者だったこともありますし、エセ労働組合だったこともあります。言われるたびに、随分悔しい思いをしました。

ウィル・スミスのように、その時ぶん殴っていたら、「公務員が市民に暴力」ということで叩かれていたでしょう。ある意味、ウィル・スミスの奥さんが羨ましく思いえます。

先日、監督官を目指したいという方からメールを頂きましたが、監督官という仕事には、そういうこともあるよということを伝えておきたいと思います。