賃金不払い事件について(1)

(横山大観邸、by T.M)

「はれのひ株式会社」の卑劣な成人式ドタチャン事件から、労働基準監督署が処理する賃金不払い事件について考えてみました。

この会社については、社長逃走劇の前に、事業場内で賃金不払いが日常的であったようで、監督署から是正勧告書が過去5回に渡り交付されていたそうです。

この点がどうも、社会的に不評です。労働基準監督署がきちんと指導していれば、今回の事件は発生しなかったという雰囲気です。

元監督官だから言います。この事件(社長逃走劇による成人式ドタキャン)は、監督署ではどうしようもなかったことです。

お前は、「身内」のことだからかばうのかと言われそうですが、これは「論理的」に無理なんです。是正勧告書が5回もでた時点で、監督署が「何とかする」ということは、つまり「強制捜査(ガサ)やって、会社を検察庁に書類送検する」ということを意味します。これをするということは、すなわち「会社を潰す」ということです。もちろん、「会社を潰す」覚悟で仕事をすることは必要です。従業員・顧客に一時的に迷惑をかけても、社会的に許せない会社については、国が責任を取り職務を全うすることが、「署」という名がついている役所の使命でしょう。

この「はれのひ」の賃金不払い事件については、担当署は司法着手を考慮していたでしょうし、あるいは既に司法に着手し、後は強制捜査の執行の準備中だったかもしれません。ただ、それを実行する時機については、署も十分に検討するはずです。そして出す結論は、「社会的な影響が少ない時を狙う」ということになります。それは、「成人式の後」ということになります。11月や12月にガサをやれば、会社は業務不能となり、結局はこの会社で「成人式の着付け」を予定していた方に迷惑をかけることになります。では、その前の7月、8月の時点でやればいいじゃないかという見方もできますが、さすがにそんな前の事件を、監督署は放置しておくはずもなく、その時期には事件は始まっていなかったと考えることが妥当だと思います。もっとも、100%「怠慢はない」と言い切れるかというと、アホな監督官はいますので、絶対とは言えませんが、そこは私は後輩を信じます。

監督署では、「成人式のドタキャン」までは、さすがに想定外だったというのが実情ではないでしょうか。