着替え時間

(最近のマイブームかじるバターアイス、by T.M)

12/22 神戸新聞

制服に着替える時間が労働時間に含まれるとして、兵庫県内に勤務する日本郵便(東京)の従業員ら44人が同社に対し、計約1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、神戸地裁であった。島岡大雄裁判長は着替えが労働時間と認め、計約320万円の支払いを命じた。

 判決理由で島岡裁判長は、職員が制服の着用や郵便局内の更衣室で着替えることを義務付けられていたと指摘。更衣時間は同社の指揮監督命令下に置かれていたと判断した。

 一方、2016年には同社グループ企業の社員が、着替えにかかった時間分の未払い賃金の支払いを求める訴訟を起こし、ほぼ全額を支払う内容で和解が成立していたことを受け、原告側は今回の未払いを「不法行為」と主張していたが、「不法行為が成立するような故意があるとはいえない」と退けた。

 日本郵便は「(請求棄却の)主張が認められず、控訴を予定している」とコメントした。

 判決によると、原告のうち31人は神戸市や高砂市など県内の郵便局に勤める正社員や再雇用社員ら。17年12月~20年11月、着替えにかかった時間分の賃金相当の損害金として1人当たり5万~42万円を求めていた。

何か裏があるのかな、この事件。「着替え時間は労働時間」、少し労働問題を齧ったことがある者なら、これは当たり前のこと。「三菱重工長崎造船所事件の最高裁判例」を、労務担当者が知らないはずはない。

それでも、日本郵便が頑なに争うということは、新聞記事に出ていない事実があるかもしれない。

ここでおさらいです。次のケースでは、「着替え時間」は労働時間となります。

  • 企業が制服を定めている。
  • 企業が制服の使用を労働時間内での着用のみ認めている。(通勤に使用は不可)

ここで問題になるのは、次のようなケースです。

  • 業務中について、作業服に着替えないと着衣が汚れる
  • 企業は、制服を支給しているが、仕事中にその着用は強制しない。

つまり、こういうことです。

「ウチは着替え時間を労働時間とはしません。着替えなくともけっこうです。衣服が汚れることを本人が気にしないなら、それでかまいません」

企業がこれを主張したら、労働基準監督署は何もできません。

また、こんなことを主張する人もいます。

「私は朝、ジョギングをして会社に行きます。会社ではスーツにネクタイ着用です。無言のルールでそう決められています。ジョギング姿で業務をしたら、上司から怒られるでしょう。だから、スーツに着替える時間を労働時間として認めて下さい。」

これは実際にあった事例です。

長時間労働の送検

(葛西臨海水族園エントランスの噴水池、by T.M)

昨日、神奈川県社会保険労務士会安全衛生部会の研修会に講師として出席しました。「労働安全衛生マネジメントシステムと化学物質のリスクアセスメント」について話をしたのですが、鋭い質問が飛び、ヒヤヒヤしながら答えました。部会のレヴェルの高さに圧倒されました。

部会の後の懇親会では楽しく過ごさせて頂きました。この場を借りて、御礼申し上げます。

ありがとうございました。

佐賀新聞 12月1日

武雄労働基準監督署は1日、上限を超える時間外労働(残業)をさせたとして、労働基準法違反の疑いで鹿島市の税理士の50代男性を書類送検した。罰則付きの時間外労働の上限規制が設けられて以降、適用されたのは佐賀県内で初めて。

 書類送検容疑は、2月1日~3月31日、30~50代の女性事務員4人に、1カ月で100時間以上、2カ月平均で80時間を超える時間外労働と休日労働をさせた疑い。

 同労基署によると、2カ月平均の最長で158時間45分の残業があった。4人の健康状態に影響はないという。

 2019年の働き方改革関連法の施行に伴って労働基準法が改正され、残業時間の上限は原則として「月45時間かつ年360時間」と明記された。当初は大企業のみが対象となり、20年4月に中小企業まで拡大された。建設業や自動車運転業などは24年から適用される。

これ、けっこう珍しい書類送検ですよ。私の現役のころでは考えられません。

何が珍しいって、労働時間の違反のみっていうのは、過労死がらみの送検ぐらいしかなくて、通常は残業代不払い(労基法第37条違反)をセットで行うものです。

 上記の記事をそのまま読むと、

  • 労働時間の把握はされていた
  • 違法の残業であっても、それに対する残業代は支払われていた

ということになります。そして、2月、3月は確定申告時期で税理士事務所の一番の繁忙期です。その時期を捉えて送検というのは、ちょっと厳しいなと感じます。なんか裏があったのかとも思います。

  • 過去に労働基準監督署から何度も是正勧告を受けていた
  • 従業員からタレコミがあった
  • 新聞記事にはないけど、実は残業代不払いもあった
  • 36協定に嘘が記載されていた
  • タイムカード時間記録が改ざんされていた
  • 事業主が過去に監督署と揉めた。等々

これらの事情がなく、従業員も多忙な季節であることは理解していて、事業主がそれなりにフォローしていて、ただ長時間労働であるというだけで送検されるとは、けっこう厳しい時代となりました。

(ただし、トラック運転手と過労死事案は別。)

お休みです

(上州武尊山の紅葉、by T.M)

本日はご訪問を頂きましてありがとうございます。

昨日から、喉がとても痛く、声がでないようになりました。

体調不良のため、今週はブログ休載とします。

外国人労働者

(シラカバと紅葉・上州武尊山山麓、by T.M)

11/29 読売新聞

神奈川県内で昨年、トラックやバスなどの車両を使用する事業者の8割超で労働基準関係法の違反があったことが、神奈川労働局のまとめで分かった。運転手の担い手不足や時間外労働の制限で輸送能力が落ち込む「2024年問題」も懸念されるなか、職場の環境改善は大きな課題となる。

 発表によると、県内162の事業所のうち84・6%にあたる137事業所で、労働基準法や最低賃金法に違反があった。違反の内訳(重複あり)は、労働時間に関する内容が97事業所(59・9%)、時間外手当の未支給などが40事業所(24・7%)と続いた。時間外労働が1か月で222時間となるドライバーもいたという。

 違反した事業者数は、20年が125事業所、21年が104事業所と高止まりしている。労働局の担当者は「人手不足が常態化し、しわ寄せを受けているドライバーもいる」と分析する。

 業界の労働時間を巡っては、来年4月から「働き方改革関連法」により、時間外労働時間が年間960時間に制限されることで、運転手の長時間労働の是正が期待される。ただ、物流停滞による社会への影響のほか、賃金減少などによってドライバーの人手不足が進むおそれもある。労働局監督課の哘崎雅夫課長は「減った労働時間分の賃金を補う仕組みが必要だ」と指摘する。

2024年問題って、運送業も建設業も同じように考えられているけど、本質的に違う問題があるんですよね。

建設業は、例えば万博の問題が典型的なんですが、建設業自体が「一過性の受注量の増大」をあてにして、中々「人を増やすことに踏み切れない」という問題があるんです。人を増やそうと思えば、奥の手があります。「外国人労働者」の雇用です。

運送業は、その手が使えないんです。現行の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」では、トラック運転手やタクシー運転手について技能実習生という名の外国人労働者が従事できないんです。だから、慢性的に人手不足となるのです。

私自身は、これ以上外国人労働者が増えることには懐疑的です。「文化の違う人が増えることがなんとなく不安だ」という思いもありますし、日本人労働者の賃金等労働条件が低くなってしまうのではないかという危惧もあります。しかし、なによりも

「外国人労働者及びその家族について、日本人と同じ権利を持つこと。医療、教育等の社会補償は当然であり、生活保護についても認めること」

について、日本人は覚悟ができていないのではないかと思うからです。

ただ、もし外国人が働く制度が変わり、トラック運転手やタクシー運転手へ外国人労働者がそこに雇用されることとなったら、けっこうWinWinの制度なるかもしれません。

農業は、労働基準法により「残業しても割増賃金を支払わなくてもよい」ということになっています。経済面の理由のみで日本で働きたい外国人労働者にとっては、運送業で働く方が合理的だと思います。

宝塚歌劇団

(タンポポと甲斐駒ヶ岳、by T.M)

日刊スポーツ 11/25

読売テレビの報道局解説委員長・高岡達之氏(58)が、25日に放送された読売テレビのバラエティー「今田耕司のネタバレMTG」(土曜午前11時55分)に出演。9月に宝塚歌劇団の25歳宙組団員が転落死した問題についてコメントした。

 遺族側は、死亡の背景にパワハラやいじめがあったと主張。それに対し、14日に会見した歌劇団側は過重労働を認めたものの「上級生によるいじめやパワハラは確認できなかった」とした。2月に一部で報じられたヘアアイロンによるやけど問題にしても、12月1日付で次期理事長就任が決まっている村上浩爾専務理事が「証拠となるものをお見せいただくようにお願いしたい」とコメントしていた。

 高岡氏は「来週以降、密室の沈黙が崩される」としたうえで、22日に労働基準監督署が立ち入り調査で労働時間や勤務実態などの聞き取りを行った事に触れ「見方によっては『マルサ』(国税調査部)より怖い。労働基準監督署の方は司法警察員。逮捕状が請求できるし、逮捕ができます。今、劇団の内部調査だから『答えたくない』という人がいるといいますが、労働基準監督署の調査は尋問ですので、答えないなんてことは許されません」。

 さらに労働時間について「これが本当に今までちゃんと管理していなかった。上級生に任せてました-なんてことになると、致命的な影響を受けます」と言い及んだ。

 団員が亡くなる直前1カ月の時間外労働について、歌劇団側は118時間以上(遺族側は277時間以上)と主張しているが、高岡氏は「法律上、過労死は80時間が危険ライン。公式の会見で認めた時間であったとしたって、すでに30時間以上超えている」と説明し「逆の言い方をすれば、労働基準監督署も問われますけどね。これだけバックに大きな企業のいる劇団ですから」と話した。

西宮労働基準監督署の職員の方々、頑張って下さい。とても難しい事案だと思います。この事案の結論によっては、大きな一石を投じることとなります。

死んだ劇団員と宝塚歌劇団は業務委託契約を締結していたということですが、これが「偽装委託契約」であり、本当は労働契約であったということに、労働基準監督署がメスを入れることができるかどうかがカギです。次のような問題にも関連してくると思います。

「相撲部屋と、関取以下部屋住みの力士とは労働契約でないのか?」

「落語家の弟子は、労働者でないのか?」

「試合時間以外の時間管理をされている野球選手は労働者ではないのか?」等々

この宝塚歌劇団の労働者性の問題について、最大の焦点は、

「契約切替え時の業務内容の変更」

となるでしょう。ウィキペディアによると、宝塚歌劇団は、入団後ある一定期間は労働契約を締結し、その後は業務委託契約となるそうです。今回亡くなった劇団員の方は、業務委託契約となって、まだ間もないとかいう話です。労働契約から業務契約へ変更があった時にどのような業務内容の変更があったのか?もし、業務内容に大きな変更がない場合は労働契約の継続とみなせますので、「偽装委託契約(偽装請負)」と見なせるような気がします。