霞が関・地方労働局の残業

(関ケ原古戦場・石田三成笹尾山陣地、by T.M)

姫路市にあるN製鉄の工場で、エックス線を使う測定装置の点検中に事故が起き、男性社員が年間の限度量の数倍から数十倍に及ぶ大量の被ばくをした可能性があるそうです(この災害により健康障害を起こした方の早期の回復を祈ります)。似たような事故を私も災害調査をしたことがあります。

今から、25年前のことです。私の勤務する監督署の管内の病院で、医師の一人が過剰なX線を被爆しました。彼はX線を使用して患者を治療する専門家だったのですが、自分の腕に自信を持っていたのか、本来立ち入ってならない所に立入り、手の先が変色してしまい、X線の過剰被爆だと診断されたのです(この事故は幸いに大事に至りませんでした)。

この事故を災害調査したのですが、珍しい事故だったので本省の労働技官がその調査に同行しました(注 本省の労働技官に「調査権限」はありませんので、調査するためには「労働基準監督署」の調査に同行しなければなりません)。

災害調査が終わったのは夜の7時を過ぎていました。私たち署の職員は本省の技官を近くの私鉄の駅まで送っていきました。すると技官はこう言いました。「これから本省に戻ってひと仕事する」。

私たち、署の職員は「今日は災害調査をして疲れた。でも充実した一日だった。飯でも食って帰ろうか」という気分なのに、本日さらに仕事をするという本省の技官の後姿に、これが「霞が関の働き方」と思い感じ入った次第です。

霞が関の働き方については、地方労働局勤務の者は、その恐ろしさをよく耳にします。

「(予算編成期)に、大蔵省(当時の名)から3時に呼び出しを受けた。午後3時だと思っていたら、午前3時のことだった。」

「(本省に勤務する)妻が明け方に帰ってきたかと思ったら、歯を磨いてそのまま仕事に行った」

「国会待機の時に1週間家に帰れなかった」 等々

地方労働局のさらにまた末端の署でも、日をまたぐ残業というのは確かにありました。災害調査を夢中にやっていたら、終電車に乗れなかった。過重労働調査の深夜臨検をやるため署に泊まり込んだ。言いがかりをつけてきた労働者や事業主の話を聞いていたら、深夜になっていて、嫌がらせとして相手は時間を延ばしているのが分かっているため、腹を括って最後まで付き合った等々です。

でもなんだか本省の残業と署の残業って違うんですよね。最前線の現場にいる者と、後方で組織を守る者とでは仕事の質が違います。ストレスは本省勤めの方があるでしょう(と私は思います)。

(FNN 6月18日)河野大臣が公務員の働き方改革に関し、「管理職に恐竜みたいな人がいる」と苦言を呈した。河野公務員制度担当相「一部、管理職にまだ考えが切り替わっていない恐竜みたいな人がいるようで、若干、超過勤務手当に関して、頭が切り替わっていない管理職がいる」

河野大臣は公務員の残業削減を進める一方、サービス残業をなくすため、職場にいる場合は超過勤務として手当をつけるよう求めてきたが、従わないケースがあると明らかにした。そのうえで、そうした管理職を絶滅した恐竜に例え、適切に対応しない場合、厳正に対処する方針を示した。

まだ、霞が関はこんなことをしているのでしょうか?長時間労働させているなら、残業代くらい正規に払えよ。払わないということは、上司の「保身」としか思えません。

もっとも、労働時間管理が悪いのは地方労働局の方が上。霞が関はそれでも、カードリーダーで出退勤が管理されているというのに、地方労働局はまだ自己申告です(私が退職した5年前から労働時間管理のやり方は変わっていないと噂です)。

タイムカードは地方労働局の課に一枚づつです(これは本当です)。朝最初に来た者と夜最後に退出した者が打刻します(何の意味があるのでしょうか?)。

私が在職中に、このタイムカードの打刻時間と職員のシステム端末の利用時間に大きな開きがあって問題となったことがあります。現在では、そのような事態が発生していないことを祈ります。