大学教員の業務委託契約について

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授業任すなら「直接雇用」に 大阪大の非常勤講師訴え 文科省も調査

2021年9月9日 朝日新聞

 大阪大学が業務委託契約を結ぶ非常勤講師に成績評価などを含む授業を任せていることに対し、文部科学省が「大学が直接雇用した教員以外が授業を担当するのは不適切だ」として実態を調査していることが分かった。講師らも「実質的に授業を担っているにもかかわらず不安定な雇用を強いられている」として、直接雇用への転換を求めている。

 阪大の講師を含む関西圏大学非常勤講師組合が9日に会見し、明らかにした。

 組合によると、阪大は最長10年を上限に、講師と業務委託契約を結んでいる。文科省は業務委託自体は認めているが、想定されているのは授業の補助で、4月には各大学に「直接雇用していない者に実質的に授業を担当させるのは不適切」とする事務連絡を出した。

 組合は、非常勤講師が授業の計画作りや成績評価などを単独で担っている阪大のような状態は問題だと主張。文科省も実態の確認を進めているという。

この件は100%大学側が悪いと思います。労働組合もかなり紳士的に対応していますが、もっと別な方法もありそうです。

「業務委託契約」っていうのが何かというと、働く人を「労働者」でなく「個人事業主」として取扱うというものです。典型的な「業務委託契約」が「ウーバーイーツ」のそれです。私が何回かこのブログでも取り上げましたが、「ウーバーイーツの配達員は労災保険に加入できない」等の問題が大学の職員でも発生しているということなのでしょう。ウーバーイーツのように加入職種が限定される一人親方の労災制度も利用できないし、職場でケガをした時にはいったいどうしているんでしょうか。非常勤講師は国民健康保険でも加入して費用の負担をしているのでしょうか。

「ウーバーイーツの配達員の業務委託契約は、デリバリー店と配達員が交わすもので、ウーバーイーツはその仲介を行っているだけだ。大学側と非常勤講師が交わす契約とは違うものだ」

そんな反論があるかもしれませんが、働く者にとっては「労働契約」ではないので、どちらも同じことです。

最近、この「業務委託契約」が増えているような気がします。働く者にとって、不利益が多いような契約を、旧国立大学が締結し文科省がそれを認めていることはおかしいことだと思います。

また、業務委託契約者が「実質的に授業を担っている」のだとしたら、さらに大きな問題です。要するに、大学側は授業を「下請け」に出していることになります。例えば、大学の名前で行う授業が、どこか「別の組織」(例えば「資格取得の予備校」等)に丸投げされていることと同じことです。

労働組合はこの問題について、「適切な業務委託契約の執行」を要求することより、「業務委託契約を労働契約」とすることを求めているようですが、私はこの要求は妥当なものと思います。

と言うより、「実質的に授業を担っている」という段階で、「授業時間に関する指揮命令」を大学側から受けているので、実質的に「時間的な拘束」を受けている訳で、すでに「労働者性」は「有り」と判断してかまわないと思います。

労働組合が取る戦術としては、「既に労働者だ」だから「労働者としての権利を与えろ」という手段が今後にはあるのではないでしょうか。例えば、組合員の誰かに「通災」か「労災」になった者はいないのでしょうか?そのような者がいたら、労働基準監督署に労災申請するという手があります。監督署は、業務量が増えるので、あまりいい顔はしないかもしれませんが、「労働者性の判断」は、しっかりと行うはずです。行政判断で、「業務委託契約」でなくて「労働契約」であったとなれば、働く者の勝ちだと思います。

なぜなら、「組合員は既に労働者なのだから解雇等はできない。他の職員と同じ権利を与えろ」という主張ができるからです。

私が監督官現役の時も、そんな事件は時々起きていました。