ああ、日本製鉄

(みなとみらいの高層棟と青空、by T.M)

朝日新聞 10月1日

千葉県君津市にある日本製鉄の製鉄所からこの夏、周辺の水域に有毒物質のシアンが流出する問題が起きた。日鉄が調べたところ、過去にも複数回、排水口などでシアンが検出されていたのにもかかわらず、県などに報告していなかったことが判明した。

 事態を重くみた県は、原因究明と再発防止策の報告を命じた。日鉄が9月30日、県に提出した報告書で新たな事例も明らかになり、シアンの検出・報告漏れは2017年以降で計59回に上った。ただ、担当者の「誤った認識」が主な原因で、組織的な隠蔽(いんぺい)ではなかったとした。

(中略) 

 その製鉄所で今年6月、生産工程で生じる「脱硫液」が敷地外に漏れ出し、水路を経て近くの小糸川に流入していたことがわかった。川の水が赤褐色に染まり、多数の魚が死んでいるのが見つかった。地元住民が「初めて見る光景」と驚く出来事だった。

 その後の日鉄や県の調査で、周辺の水路や、東京湾に直接注ぐ排水口から、シアンが検出された。水質汚濁防止法に基づく排水基準では検出されてはならない物質だ。

 問題はこれにとどまらなかった。日鉄が過去にさかのぼって総点検を進めるなかで、過去にたびたびシアンが検出されていたにもかかわらず、県などへの報告も、公表もしていなかったこともわかった。

 日鉄によると、2019年2月~22年4月、特定の排水口で、計39回検出されていた。記録の義務があるケースでも、日を改めて排水を採取し、不検出となった結果を記録していた。日鉄と地元自治体の環境保全協定に基づく水質調査でも、敷地内の排水溝で19年5月~21年12月に計7回、シアンや有毒物質のセレンが協定値を超えていた。

 「非常に不適切な対応があった」(県水質保全課)。事態を重くみた県は8月下旬、水質汚濁防止法に基づく行政処分として、原因究明と再発防止策の報告を求めた。虚偽の報告をした場合などは刑事告発もあり得る対応だ。県が求めた報告期限の9月30日、日鉄は報告した。

今回の「シアン漏洩」について、化学物質の知識がない人はピンとこないかも知れませんが、「シアン」の別名は「青酸」であり、その化合物はミステリ小説で猛毒として扱われます。「青酸カリュウム」や「青酸ナトリウム」を主原料とした、「青酸化合物」が漏洩した訳ですから、今回の「報告漏れ」が、どれだけ環境に甚大な影響を与えているかが分かると思います。

しかし、日本製鐵、どうなちゃったの・・・ 最近、事故多すぎないか?

昨年も、日本製鉄瀬戸内製鉄所内で、作業員2人がX線を大量に被曝する事故が起きたばかりです。行政内部にいる友人から話を聞くと、その事故の後で、全国の監督署では、X線非破壊試験を実施している事業場に対し一斉調査を行い、たいへんだったそうです。

また、4日前には九州製鉄所でクレーンが燃えたことが新聞で報道されています。

私は約40年前に、愛知県東海市にある日本製鉄名古屋製鉄所を臨検監督したことがありますが、工場の隅々まで安全に気が配られていて、多くの人がきびきびと指差し呼称を実践し、従業員の「ゼロ災」にかける思いが感じらました。

あの、日本製鉄はどこにいってしまったのでしょうか。

監督官を辞めた現在でも、今在職している組織の仕事で製造業の工場を訪問します。というより、「労働基準法」関係の仕事がなくなり、「労働安全衛生法」専門となった現在の方が、大きな工場に行く機会は多いです。

そこで気付くのは、働く人の少なさです。食料品製品製造業を除き、日本の製造業は、あまりにも「古い設備」を、「徹底した合理化により少なくなった作業者」で使用しています。そして、「遊休設備」も多々あるようです。

もはや、国内で製造業は厳しすぎるのかも知れません。そんな思いを日々強くしています。日本はどうなっちゃうんでしょうか・・・

私事の報告です。「60の手習い」で、ある資格に挑戦することにしました。そんな訳でしばらく更新を休みます。次の更新は11月13日です。