私は建設現場の監督で恥をかきましたー外伝(1)

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私の尊敬するS原氏のことをもう少し書きたい。

ある日、私が監督から戻ってくると、監督署の相談窓口がなにか騒がしい。カウンターの前には、私の先輩のY監督官が座っている、その前にはスーツ姿の男が4人。そして、その後ろには10人位の作業服姿の男が起立して控えている。

私は席に戻ると、隣のA女性監督官に事情を尋ねた。
「どうしたんですか・・・」
「ほら。こないだの電鉄事故・・・」
とA女史は話はじめた。
先日、私鉄の電線工事に関係して労災事故が発生した。高所の作業場で電極が剥き出しになっている個所があり、通電中にそこに接触した労働者が墜落し、事故後4ヶ月たった現在まで意識が戻らないのだ。
その事故の担当となった、私より1年先輩のY監督官は、2週間ほど前に現場代理人を呼出し、安全管理体制の是正を求め文書指導を行ったのだ。
ところが、ややこしいことにその現場の統括責任者は現場に一度も来たことのない、電鉄会社だったことが、この騒動の原因なのである。

建設業の現場について不明な方に断っておくが、建設現場の安全管理体制と言うのは、法律上、製造業等の他業種とはまったく違うものである。
派遣法ができてからは、特に厳しくなったが、製造業においては、元請けは同じ工場で働く下請け労働者が不安全行動をしていても、直接是正の指示ができない。例えば、粉じん職場において、粉じんマスクをしていない者を元請け職員が現認しても、直接に「マスク着用」と指示せずに、その下請労働者の所属する会社の責任者に述べてから、その責任者を通し労働者に注意してもらうしかないのである。なぜなら、もし元請けの労働者が直接に下請けの労働者に「マスク着用」と言えば、元請労働者が下請労働者を指揮命令したことになり、偽装請負の問題が発生してしまう可能性があるのだ。
(もっとも、私の知合いの某自動車部品工場の工場長は、こう言っている。「労働安全に元請けも下請けもあるか。不安全行動しているものがいたら、気づいた者が注意しろと私の工場では決めている。」 私はこの工場長が正しいと思うが、それを書くと長くなるので、また後日)

(続く)