今年の最低賃金

(三浦市宮川町のヨットハーバー、by T.M)

今年の10月1日から、最低賃金が全国加重平均で1004円となるそうです。昨年が961円ですから、約4%アップの大幅賃上げとなります。一昨年は930円ですから、2年間で約8%上がったことになります。

でもちょっと待って下さい。最低賃金は

  930円、961円、1004円

と上がっていますが、最低賃金改定日(10月1日)の円―ドル相場は

  2021年 112.43円

  2022年 144.81円

であり、もし今年の10月1日の円―ドル相場が昨日(8月25日)の相場である146.85円であると仮定するなら、日本の最低賃金はドルベースで次のように変化するということになるのです。

  2021年 8.27ドル

  2022年 6.64ドル

  2023年 6.85ドル

因みに、超円高であった2021年は、最低賃金は737円で、ドル相場は76.71円であり、その金額は9.51ドルです。これは現在の円―ドル相場に換算すると約1400円となります。

国際的に見ると日本の最低賃金の下落は顕著です。

(注) 米国の最低賃金はNY市等の大都市は20ドル前後の高額ですが、過半数の州では8ドル前後だそうです。(独立行政法人労働政策研究・研修機構のHPより引用)

要するに、輸入品の価格上昇比率は最低賃金の上昇比率より高いということです。

「働き方改革」の目的は生産性の向上にあったはずですが、賃金のことだけ考えると。どうもうまくいっていないように思えます。何か、今後の生活に不安を感じる今日この頃です。

お盆休みです

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再開は8月27日です。

またの起こしをお待ちしております。

労働安全衛生法改正

(十国峠ケーブルカー、by T.M)

次の新聞記事は長文ですが、労働安全にとっては非常に重要な問題となりますのでを全文紹介します。

朝日新聞 7/31

■事故で死亡やけが、労基署への報告義務

 フリーランスが増え、事故のリスクが問題視されてきたが、今はそうした事故の実態を把握する仕組みがない。

 そこで安衛法の規定を見直し、労働者と同様にフリーランスらが業務上の事故で死亡するか4日以上休業するけがをした場合、仕事を発注したり現場を管理したりする企業などに労働基準監督署への報告を義務づける。

 違反しても罰則はないが、是正勧告など行政指導の対象になる。一方、一般消費者から仕事を請け負ってけがをした場合などは、フリーランスら本人が労基署に情報提供するよう求める。

 フリーランスが過重労働で脳・心臓疾患や精神障害になった場合に、本人から報告できる仕組みも整備する。

■危険な場所への立ち入り禁止なども義務づけ

 国はこうした報告を集計・分析して公表し、業界団体などに災害防止対策を進めるよう促す。

 また安衛法では企業などに、災害発生時に労働者を作業場から退避させたり、危険な場所を立ち入り禁止にしたりすることを義務付けているが、その保護対象をフリーランスらにも広げる。作業現場に足場や機械を設置した事業者には、労働者の安全を保護する義務があるが、その対象にもフリーランスらを加える。

 フリーランスら自身にも災害防止策を義務づける。一部の機械を使う場合の定期自主点検の実施や、危険な業務を行う場合の講習の修了など、企業や労働者に義務づけているのと同じ内容だ。

 安衛法をめぐっては、アスベスト被害に関する訴訟で最高裁が一昨年、同じ現場で働き危険性も同じなら、「一人親方」と呼ばれる個人事業主も保護対象とすべきだと判断。それを受けて厚労省は今春、アスベストなどを扱う労働者を保護する規定の対象を、個人事業主にも広げた。さらにそれ以外の職種への対応も必要だとして、有識者会議で議論を続けていた。

■有識者会議の報告書案のポイント

【事故の把握】

・個人事業主が事故にあった場合、仕事を発注した企業などに国への報告を義務づける

・個人事業主が過重労働で脳・心臓疾患や精神障害になった場合は、本人が国に報告できる仕組みをつくる

・国は事故の情報を分析して公表し、業界団体などに防止対策を促す

【事故防止の対策】

・一部の作業について、企業に義務づけられた「労災を防止するための措置」の対象を個人事業主にも広げる

・個人事業主にも現場に持ち込む機械の定期自主点検を義務づける

・個人事業主にも危険有害な業務に関する安全衛生教育の修了を義務づける

・プラットフォーマーが危険有害な業務を個人事業主に行わせる場合に配慮すべき内容を明確にする

【健康管理】

・国は個人事業主に年1回の健康診断を促す。

・健康診断の費用は、発注企業が支払う報酬の中に盛り込むよう促す。

・発注企業は、長時間労働をしている個人事業主から求めがあれば、医師による面接指導の機会を作る。

(引用終了)

世の流れとしては、いい方向に向かっていると思います。

でも、課題はたくさんあるでしょう。例えば、フリーランス業務の典型であるウーバーイーツ。ウーバーイーツが配達員の事故報告を労基署にするためには、配達員から、ウーバーイーツへの事故報告が必要でしょう。でも、自分が事故にあった時に、別に会社が労災手続きをする訳でもなく、交通違反がらみの事故であったなら、会社から怒られるかもしれないと思うと、配達員は事故報告をしないんじゃないでしょうか。

 また、ウーバーイーツは配達員に健康診断を促し、その分の費用を報酬に上乗せするということでしょうか? 法の意に反して、上乗せされた報酬は別に使ってしまうのではないでしょうか(まあ、報酬アップならいいやという考えもあります)。

 もちろん、今回の法改正の主旨は、工業系3業種(建設・製造・運送)で働くフリーランスの方たちを念頭においたものであることは理解していますが、フリーランスという一括りではウーバーイーツもその範疇に入ります。

 何よりも、この安全衛生法の主旨を徹底させるためには、「一人親方の労災保険特別加入制度」をすべての業種に適用させるようにしなければならないでしょう。ウーバーイーツの配達員は一昨年から加入できるようになりましたが、すべての職種で加入できる訳ではありません。そうすると、今度は「一人親方の労災保険特別加入制度」に加入していない風潮となりそうです(実際、多くの建設会社はそのようにしています)。そうするとフリーランスの方に新たな負担を押し付けることになるのではないでしょうか?

まあ、色々心配しても仕方ありません。前述のとおり、この法改正はいい方向に向かっていると思いますので、厚生労働省の頑張りに期待したいと思います。