大阪万博

(伊豆のワサビ田、by T.M)

7/28 スポニオ

実業家の西村博之(ひろゆき)氏(46)が28日までに自身のツイッターを更新。2025年大阪・関西万博の海外パビリオンで建設手続きが停滞している問題を巡り、日本国際博覧会協会が、万博工事に従事する建設労働者を24年から適用される残業時間規制の対象外とするよう政府に要望していることが判明したことに言及した。

 複数の関係者が明らかにしたもので、開幕に間に合わない事態を避ける狙い。時間外労働の上限規制は、19年の働き方改革関連法施行により導入された。災害復旧工事などを対象外とする特例があるものの、万博工事を同様に扱う対応には政府内に慎重な意見もある。

 万博に参加を予定する150超の国・地域のうち、およそ3分の1がパビリオンを自前で建設する予定。ただ、着工の前提となる大阪市への許可申請手続きは滞っている。建設業界の人手不足や資材高騰、複雑なデザインによる難工事やコスト増を背景に、工事請負契約が進んでいないのが実情。時間外労働の上限規制が適用されると、人繰りがさらに厳しくなるとの見方が出ている。

ひろゆき氏は「大阪万博の残業規制の除外を政府に打診。人手不足なら高額の給料払って人を集めれば良い。お金が足りないから出来ないなら、そもそも大阪万博を辞めれば良いんじゃない?パビリオン作りたい所も少ないみたいだし」と自身の考えをつづった。

万博工事を残業時間規制の対象外とすることについて、行政府の判断だけでできるのか、国会も関係あるのか、どういう法的手続きが必要なのかはよく分かりませんが、結論としてはひろゆき氏の意見に100%賛成します。付け加えるなら、何年間も残業規制に備えてきた企業、あるいは既に実施している企業に対し失礼です。

そもそも、私が労働基準監督官をしていた平成年代の中頃までは、大きなイベントや大規模工事については、模範的で表彰されるような工事が多いものでした。

  (例)1989年横浜博、1993年完成横浜ランドマークタワー

それが近年は国を挙げてのイベントで不祥事が多発しています。

  (例)2021年東京オリンピック、新国立競技場建設作業員過労自殺事件

昔が良かったというのは老人の繰り言ですが、実際それが事実であるような気がします。これは、やはり日本の国力が落ちてきて、貧しくなっているせいでしょうか?

100歩譲って、本当に日本国際博覧会協会の、残業規制の対象外の要望を認めるとしても、まず話を通さなければならないのは「政府」ではなく「労働者」ではないのでしょうか。。政府の対応を待ってから、大手労働組合ナショナルセンターと交渉するつもりだったのかもしれませんが、大手労働組合ナショナルセンターの了解を得てから政府に陳情すれば、まだ話は通ると思いますし、筋は通ると思います。もっとも、その場合でも取引条件として、残業代の割増率の増加くらい覚悟しなければならないでしょう。現在、残業代の割増率の最高が150%(深夜労働を含めると175%)だから、これを200%(深夜労働を含めると225%)くらいにすれば、納得する者もでてくるのではないでしょうか。経営者の一方的な都合で労働条件の切下げが行われるなら、「働き方改革」の大目標であった「生産性の向上」などは、絶対に無理だと思います。

定年退職後の賃金

(北仲ノットからの展望、by T.M)

梅雨が明けました。皆様、これからが夏本番です。

改めまして、暑中お見舞い申しあげます。

7/20 毎日新聞

名古屋自動車学校(名古屋市)の元職員2人が、定年退職後の再雇用で賃金を大幅に減らされたのは不当だとして、定年前の賃金との差額を支払うよう求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は20日、同じ業務内容で基本給が定年時の6割を下回るのは違法だとして自動車学校に計約625万円の支払いを命じた2審・名古屋高裁判決(2022年3月)を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

(略)

 1審・名古屋地裁判決(20年10月)は2人の賃金は「労働者の生活保障の観点から看過しがたい水準に達している」と指摘。同じ業務内容で基本給が定年退職時の6割を下回ることは、当時の労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法)が禁じる不合理な待遇格差に当たると判断した。2審判決も1審を支持した。

 これに対し、自動車学校側は上告審で、2人は定年後の賃金減少分の一部について国が補助する「高年齢者雇用継続基本給付金」を受給していると指摘。不合理な待遇格差に当たるかは基本給だけでなく他の収入も含めて検討されるべきだと主張し、請求を棄却するよう求めていた。

難しい問題ですよね。原告の主張は次のとおり。

第一 定年退職前後に仕事に違いがないのに、賃金が下げられるのはおかしい

第二 「高年齢者雇用継続基本給付金」を企業が受給しているのに、賃金の下げ率が大きい

(注:今日はこの「第一」の主張についてのみ論じます)

この原告の主張に対し、1審・2審は次のように判断しました。

「労働者の生活保障の観点からも看過しがたい。正社員の6割を下回る部分は違法」

それに対し、最高裁は次のように判断し、審理を差し戻しました。

「基本給の性質や目的を踏まえて判断すべきだ。1審・2審は十分検討してなく、判決高裁差し戻す。」

ようするに、1審・2審の判断は

「原告の生活を考えて、定年退職後も仕事内容が変わらないなら退職前の60%を補償しろ」

ということです。それに対し最高裁は次のように差し戻したのです。

「“生活保障の観点”だけでなく、“基本給額が原告に相応しいのか”を検討しろ」

ということです。私は最高裁の判断は妥当だと思います。多分、次のような考えでしょう。

「原告の定年退職時(60歳)の賃金は、年功序列制賃金体系ではなかったのか。原告の所属する会社の中で、原告より年下(例えば50歳くらい)で、原告と同じ仕事をし、そして原告より年下だという理由で原告より賃金が安い者はいなかったのか。いたとするなら、その会社はそもそも厳密な“同一労働同一賃金”ではなく、原告の定年退職時の賃金は年齢により恩恵を受けていたものであるから、本当の意味での同一賃金同一労働とするためには、一律に“退職前の60%の賃金を補償”するのでなく、原告の業務に応じた賃金額を再精査すべきだ」

また、こんな考えもあると思います

「“賃金補償60%”という数字が一人歩きしてしまうと、仕事内容で評価すると、本来定年退職後に“90%”給与をもらうべき人の賃金が値切られてしまう可能性がある。また、企業によっては、退職する時期によって、同じ仕事をしていても賃金額が違うことがある。一律に賃金補償60%としてしまうと、60歳以降の再雇用契約者どうしで、同一労働同一賃金でなくなってしまうかもしれない」

しかし、最高裁って高裁に無理難題を押し付けますよね。「基本給の性質や目的を踏まえて、正しい金額を算定しろ」なんてことは無理ですよ。だから、1,2審は「労働者の生活保障の観点から60%」という理屈をひねり出したのに、「基本給の評価方法」について、道筋をつけて最高裁に持ってこいということです。なんか、高裁が可哀そうに思えてきました。

トランスジェンダーについて

(天城山中にそびえる巨木太郎杉、by T.M)

TBSニュース 7/14

経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場があるフロアの女性用トイレの使用を制限されたのは違法だと国を訴えた裁判。最高裁は、さきほど言い渡した判決で二審判決を取り消し、職員側の訴えを認めた一審判決が確定しました。最高裁が性的マイノリティーの人たちの職場環境について判断を示したのは初めてです。

考えさせることの多い判決です。また、影響の大きい判決だと思います。どんなところに影響が大きいかといいますと、次のようなところです。

労働安全衛生法事務所衛生基準規則

第十七条  事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

  一  男性用と女性用に区別すること。

第二十条  事業者は、夜間、労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会のあるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。

第二十一条  事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない

トランスジェンダーの職員が、労働安全衛生法事務所衛生基準規則第17条で明記されている「女性用トイレ」を使用できるということは、同規則第20条で明記されている「女性用仮眠施設」、同規則第21条で明記されている「女性用休養室及び休養所」を使用できるということになります。

もちろん、今回の判決は「ケースバイケース」に応じた事例であり、他の職場についてイコールとして見なすことは無理があると思います。しかし、ひとつ壁を超えたのは事実でしょう。

さて、「労働安全衛生法事務所衛生基準規則」なんては省令に過ぎないから、すぐに変更できるでしょうが、法令によって決まっている男女差はどう解釈されるのでしょうか。

労働基準法第六十四条の三女性労働基準規則第三条 使用者は、満十八歳以上の女性に20kg以上の重量物を取扱う継続労働に従事させてはならない(この条文は、原文を変えて分かり易く書き換えてあります)

この法令について、トランスジェンダーの方にはどのように適用させれば良いのでしょうか。気になります。

google 地図アプリ

(小田原市松永記念館の紅葉、by T.M)

朝日新聞 7月7日

食品工場で働いていて病死した男性(54)をめぐり、タイムカードに加え、スマートフォンの地図アプリの移動履歴を参考に残業時間を計算し、労災が認定されていたことがわかった。代理人の大久保修一弁護士は「アプリの記録をもとにした認定はまだ少ないが、有益な資料となることが確認できた」と話す。

オット、これは良いニュースです。Googleアプリの履歴から「何時に、どこに居た」ことが証明できれば「長時間労働の労災認定」の時の労働時間の特定に有効でしょう。

また、「労働時間のごまかし」方法として、「タイムカードで退勤時刻を打刻したけど、退勤しないでそのまま残業を続ける」という事例が多くありますが、そんなごまかしもGoogleアプリを利用すればできなくなるでしょう。

(どうして、タイムカードでは退勤したことになっているのに、そんなに遅くまで会社に残っていたの?)

ただ、Googleアプリを過信してはいけません。このアプリを利用すれば、未払残業代を請求することが可能だという考えは間違いです。

第1 過労死の労災認定のための労働時間の特定に、労働基準監督署がこのアプリを利用する

第2 残業代の遡及支払いのための労働時間特定に、労働基準監督署がこのアプリを利用する

第3 残業代の遡及支払いのための労働時間特定に、裁判所がこのアプリを利用する

このうち第1と第3は似たような結論になることが多くなります。ただ、第2は違います。

労働基準監督署が労災認定のためでなく、労働基準法第37条(残業代不払い)の違反を是正勧告するということは、是正されない時は「刑事事件として、書類送検する」との意思表示でもあります。刑事事件は「疑わしきは罰せず」の大原則があります。ですから、少しでも疑いがあるなら、是正勧告することはできないのです。

別の側面からみると、「法違反」というものは「有る」か「無いか」の世界です。「残業代1万円不払い」でも「残業代10万円不払い」でも、罰条の「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」に変わりはありません。司法警察員にとっては「有罪」がとれればいいのであって、量刑はさほど気にしないので、「確実な法違反」を狙って、「残業代未払の範囲を狭く」とる傾向にあります。これは、警察がスピード違反の取り締まりで、取り締まる速度を低く見積るのと同じことです。

だから、監督署の「残業代の遡及是正」にGoogleアプリの活用を期待すると失望するかもしれません。裁判所で民事裁判をやれば、監督署の労災認定と一緒で、多少疑いがあっても、裁判官の権限でなんとでもなります。監督署の残業代不払いについては、あくまで刑事事件が前提です。

マクロナルドの残業代(2)

文春記事によるマクドナルド社の話の続きです。福島県と栃木県でマクドナルドを8店舗運営するフランチャイジー「K」という会社のことです。

この会社は残業が多いとボーナスが減額されるそうです。上記の切り抜きは、社員に渡されたボーナスの支給基準書の一部だそうです。このボーナスの支払い方法がおかしいとして文春は問題としているのです。

ようするに、ボーナスの算定期間中に「ひと月平均20~25時間残業するとボーナスが月給の0.1ケ月分減額」「25~30時間残業で0.2ケ月分減額」「30時間以上残業で0.3ケ月分減額」だそうです。

残業代の主旨からするとおかしな話に思えるのですが、労働基準法違反かと言われると、けっこう難しいところがあります。なぜなら「ボーナス減額」ではなくて「時短奨励金の支払い」であると思うと合法なような気がするからです。上記の支給基準の表現方法を次のような変えてみます。

「30時間以上残業で通常支給」

「25~30時間残業でプラス0.1ケ月分」

「20~25時間残業でプラス0.2ケ月分」

「それ以下の残業時間でプラス0.3ケ月分」

これなら違法状態ではないと思います。

実際、このような評価をしている企業も多いと思います。私のいた労働局自体がこのような人事評価をしていました。職員一人一人が、「自分は残業時間をひと月〇時間以内にします」と目標設定するのです。それがクリアできれば高人事評価です(当然、ボーナスにも影響します)。役所がこんな人事評価をしているのですから、民間企業が上記のようなボーナスの算定基準をしていることは仕方ないのかもしれません。

そうは言っても、ここまで露骨に「残業をしたらボーナス減額」という制度を採用している事業場はやはりないのではないかと思われますが、タクシー会社の賃金体系なんてもっと露骨なところがあります。

以前にこのブログに記載したこともありますが、タクシー会社の賃金体系は、労働時間に関係のないオール歩合制です。タクシー業界には政党をバックにした2大労働組合がありますが、労働組合もこのような賃金体系を容認しています。すると、毎月の賃金の「残業代の取扱い」について、労働基準法違反がでてきてしまうもので、賃金台帳には毎月残業代が支払われているように記載して、ボーナスで調整してオール歩合給に直してやっているのです。ですから、タクシー会社のボーナスは年4回くらい支給されているところが多いです。

さて、話を文集記事に戻します。この記事に頭を悩ませているのは、多分所轄労働基準監督署でしょう。「労働基準法違反」となるか、局をとおして本省と協議をしているのではないでしょうか。早期に結論がでることを祈ります。