平成の終わりに・・・

今週は、私の親友のT.M(某地方労働局技術系職員)からメッセージが届いていますので、そのメッセージをもって、ブログ記事としようと思いますが、そのメッセージを紹介する前に、どうしても触れたい話題がでてきました。まずは、次の新聞記事をご覧下さい。

天皇、皇后両陛下は23日午後、労働災害犠牲者慰霊のため、東京都八王子市の高尾みころも霊堂を訪れ供花された。同霊堂は1972年に建立され、戦後に労災で亡くなった26万人余が合祀(ごうし)されている。両陛下の訪問は皇太子同妃時代を含めると今回で7回目。(某新聞記事より引用)

ご退位がせまり、多忙の中で、労災事故で亡くなった人々の両陛下が忘れずにいて頂けたことに感謝します。

この、高尾みころも霊堂の秋の慰霊祭には、前年に労災事故により亡くなられた方の遺族が招待され、厚生労働大臣をはじめとして関係者が集会します。そして、その会に天皇陛下は皇太子時代から何度も出席頂いていました。

私はまだ、この聖地に行ったことはありません。今年こそ訪問し、労災ゼロを祈ってこようと思います。

さて、T.Mからのメッセージです。

題:桃の花と扇状地

(まずは、次の写真をどうぞ)

日中はまだ寒い日があり、夜は多少冷え込むものの、季節は春の装いが色濃いものとなってきました。

各地で桜の開花が話題になっていますが、桜に負けず頑張って美しい花を咲かせるものもあり、その一つに桃の花が挙げられると思います。

先週、職場の新入社員とバイクで山梨県笛吹市(旧一宮町)に桃の花を見物して来ました。

国道20号線(甲州街道)をたどり、大月で吉田うどんを食べて腹ごしらえし、笹子トンネルを抜けて甲府盆地に入りました。

当日は快晴でとても暖かく絶好のツーリング日和でした。

過去に何度も笹子トンネルを抜けていますが、トンネルを境に郡内(大月側)と甲府盆地側で気象が大きく異なることが多いですが、当日はそれを感じさせないほどでした。

甲府盆地は、その周縁部に扇状地が発達した地形が特徴で、土壌は痩せ、水はけが良いため、稲作には適しませんが、日当たりの良さと昼夜の大きな寒暖差により、ブドウ、モモやサクランボなどを栽培する果樹園が多く見られる土地です。

桃の木は、桃の実がなるものと、実がならないハナモモがあり、今まさに桃の花が見頃となっています。

ハナモモは桃色の花が一般的ですが、一つの木に、紅色、白色と異なる色の花が咲くものもあり、サクラに劣らずその見栄えは実に見事です。

特に一宮付近は、ハナモモが多く、地域が桃色一色に染まります。

皆様も春を感じるこの季節に、お花見に是非お出かけください。

猫と高所作業者

(小田原市江之浦から相模湾を望む、by T.M)

こんな記事をwebで見つけました。

フィラデルフィアで電話線の工事をしていたモーリス・ジャーマンさんに、その近所の住人が声をかけてきた。聞けば、彼らの飼い猫のプリンセス・マンマが、電信柱に登ったきり、下りてこられなくなったのだという。猫はもう12時間も、電信柱の天辺で震えているというのだ。もちろん、飼い主もそれをただ眺めていたわけではない。アニマル・レスキューや消防署などに助けを求めたが、どれも上手くいかなかったというのだ。 そこでモーリスさんは高所作業車を現場に回し、マンマを無事に救い出した。

ところが、これで「めでたし、めでたし」とはならなかったのだ。次の金曜日に、モーリスさんは雇用主のベライゾン社から、3週間の停職を言い渡されたのである。社の安全規定に違反したためというのが、その理由であった。モーリスさんの使っていた作業車と装備は、猫のいた地域では使用できないものだったのだ。

 「我々としても、喜んで処分を下しているわけではありません」とベライゾン社の広報担当者。「しかしながら、我々は従業員とお客様の安全を守る責任を負っているのです」

「不運なことに、この従業員の目的は立派なものでしたが、彼は自分自身の生命と周囲の人々を潜在的に危険にさらしていたのです」

 ベライゾン社は、動物保護という目的を疎かにしているわけではないことを示すため、ペンシルベニア州の動物虐待防止協会に寄付をする予定だという。

 

私、この記事を読んだ時にゲラゲラ笑ってしまいました。そして、同じことが日本で起きたらどうなるか、考えてみました。

ウチの猫が電柱に登っってしまい降りれなくなって、何時間も泣いていたところ、近くで電柱工事をしていた作業員が高所作業車を使用して救出されたというシュチュエーションではいかがでしょうか。

この場合でも、会社にばれたら、作業員の処分はまぬがれないでしょうね。労働安全衛生コンサルタントとして、あるいは、かつて労働行政に関わったものとして、例えば会社側から、私に意見を求められたら、公式的には「就業規則に従って、作業員を懲戒処分にして下さい」と答えざるをえないでしょう。

高所作業車を使用する作業は、危険作業に該当し、有資格者がこれを行います。猫を救助中に災害が発生した時には、これは「業務に起因する事故」とは見なされないので、労災保険の適用はないでしょう。また、第三者に損害を与えた場合には、民間の保険会社なら保険適用を渋るでしょう。

また、昨今の世の中です。こんな猫の救出劇を街中でやっていたら、必ず動画に撮られます。現に前述のフィラデルフィアの記事は動画付きで紹介されていたものです。事実隠蔽はできません。

もっとも、もし、こんなケースで、「工事現場で発生した、作業員の猫を救助したという不始末を、元請会社に言い訳する下請け会社」から相談を受けたなら私はこう答えます。

「猫を助ける目的で高所作業者を使用したのであるならば、言い訳はできません。しかし、

『たまたま、工事するはずだった電柱に猫がいたので、作業員がそれをどけた』

『工事に関係ない電柱だったが、猫が登っているのを確認したので、停電の危険性があり、公共のために排除した』

『工事においては、近隣の住民サービスを心がけていて、業務命令で工事と関係のない近所の公園や道路の清掃等を行っているが、その住民サービスの一環として行った』

のであれば、話は別です。」

実は、私は猫好きなんです。 

役所に苦情を!(1)

(武田勝頼自刃の場所、甲州市景徳院、by T.M)

最近、コールセンターを使用している監督署が増えてきました。

コールセンターは日本のどこかに設置されていて、いくつもの監督署への電話を一括して処理しているのでしょうが、長年監督署に勤務していた者としては、その応対にとても危なっかしいものを感じます。

つい最近もこんなことがありました。

午後5時10分頃に、「働き方改革」に関する法の解釈を尋ねようとして、東京のある大きな監督署に電話しました。(注:私は、「神奈川」在住ですが、神奈川労働局には知合いが多いもので、「一人の国民」として行政に質問をする時には、東京の監督署を利用します)

監督署の電話が混み合って通じないのではないかと心配していたのですが、無事オペレータと繋がりました。すると、オペレータから「現在、相談の窓口が、件数が多くて塞がっているので、しばらくこのままで待って欲しいと」言われました。そして、数分間受話器を耳に待っていると、オペレータが次のようなことを言いました

「まだ電話が相談窓口と繋がりません。もう5時15分で閉庁時間時間なので、電話は回せません。明日またおかけ直し下さい。明日の開庁時間は・・・」

さすがに、私は腹が立ちました。そして、次のように述べました。

「ちょっと待ってくれ。私は、役所のHPに記載されている電話番号に連絡しています。この電話で話しているということは、あなたが、コールセンターの人かアルバイトの人かは分かりませんが、役所の管轄にある人ということです。行政機関に、閉庁時間前に連絡してきた者に、対応にでた人が、『その件については分かる者が電話中ですか、明日おかけ下さい』と言って断るのは筋違いではないですかか。」

私の主張を理解してくれ、オペレータは監督署の職員に取り次いでくれました。私は、その監督署の職員に、「対応できる者がいるのに、なぜさっきのオペレータは電話を切ろうとしたのですか」と尋ねようとしましたが、それ以上はその件に触れることはしませんでした。

私が現役時代にも、同じような状況が発生したことがあります。終了時間間際に電話がかかってきて、アルバイトの人が対応するが、職員すべてが電話口にでているか相談対応中という場合です。そういう時のために、私はあらかじめ、アルバイトの方に次のような指示をしていました。

 「電話を取った時に、誰も対応できる者がいなかったら、相手の電話番号を聞いて、『後で折返し』に電話をしますと答えてくれ。それで、相手が納得しなかったら、私の名前を出し、私が担当者だと答えてくれ」

また、監督署の知人に聞いたことですが、次のような電話トラブルも、最近多いそうです。

コールセンターのオペレータに、「××の部署に電話を繋いでくれ」と言っても、「何のご用件でしょうか」と聞きなおしてきます。相手が初めて監督署に電話をする人で、「どこに相談したらよいか分からない」という場合ならともかく、部署指名で電話をしているのに、あえて用件を聞くということは、そこで相談ができるのかと勘違いする人もいると思います。そこで、用件を話し、電話が回され、あらためて監督署の担当者と話をする時に、また用件を尋ねられ、「さっき話したじゃないか」と怒る人もいると思います。

監督署に電話をかけてくる人は色々な人がいます。「これから刺しにいくぞ」と言われたこともあります。オペレータの電話トラブルの後始末をするのは、結局は監督署の職員であるというケースも多いと思います。

この、監督署の電話窓口でコールセンターを利用するという企画を立てたのは、監督署の現場を知っている人なのでしょうか?

監督署の現場が望んでいることは、電話応対ができる職員の増員だと思うのですが。

バイトテロとコンビニ(8)

(横浜の水源地、青山浄水場とサクラ、by  T.M)

 

(大正の建築、逗子松汀園とサクラ、by  T.M)

「バイトテロとコンビニ」も今日で最終回です。

前回、コンビニ店舗の経営が上手くいく要素として、「最初の出資金の金額」を第一に挙げましたが、それはつまりこういうことです。

「土地・建物をオーナー自らが提供し、高い出資金を支払うケース」

「土地・建物はコンビニ会社が提供してくれるものを使用し、オーナー自らは、コンビニ会社の雇われ店長の形式で契約し、最低限の出資金を支払う」

といった2つのケースでは、コンビニ会社に支払うロイヤリティーが全然違うのです。

もちろん、後者で成功しているケースもあると思いますが、オーナーが圧倒的に過重労働となるのは、後者のケースです(地方都市では、売上げ自体が低く、前者の場合でもオーナーの負担が大きくなる場合もあるようですが)。

私は、コンビニのオーナー全てが、「労働者性」を有しているとは思いません。従って、先日、中労委がコンビニオーナーの団体と、コンビニ会社の「団体交渉」を認めなかったことについては、ある程度理解します。

しかし、私は個々のオーナーのケースを精査していけば、中には「時間的・場所的な拘束を受け、使用者に指揮命令される労働基準法上の労働者」となるケースもあり、将来はコンビニーオーナーが労災認定されることもあるような気がします。それは、出資金の少ないオーナーに多いように推察します。

「バイトテロ」と呼ばれている行為について、若者の教育が必要という意見がweb上に多くありますが、実は私は一番必要なのは「オーナー」の教育であると思います。

つまり、コンビニ各社が自らのブランドイメージを守るためには、「オーナーがどのように労働者を教育・管理しているか」を検討する必要があると思うのです。

しかし、コンビニオーナー自体の過重労働が問題とされるなら、オーナーは労働者に対する管理の力を発揮できなくなるような気がします。

コンビニオーナーが疲れていては、「アホな若者」を間違って採用してしまうかもしれませんが、そういう若者をオーナーが教育すること儘なりません。

このシリーズの最初に述べましたように、「コンビニの公益性」については理解しているつもりですが、だからこそ「若者の働く職場の形成」のためにも、コンビニ大手が各店舗のオーナー自身について、「働き方改革」の環境整備を進める時ではないでしょうか。 

追記

ふと気づきました。コンビニオーナーが、「カンビニ会社の労働基準法上の労働者」に該当するなら、そのコンビニ店舗で働いているバイトさん達は、すべてコンビニ会社の労働者ということになります。今後、コンビニ店舗で働いているバイトさん達が、労働条件等で不満を持った場合、コンビニオーナーを飛ばして、コンビニ会社と直接交渉するケースがでてくるかもしれません。あるいは、コンビニーオーナーとバイトさん達が協力し、コンビニ会社と相対することもあるかもしれないと思いました。