飲みにケーション

(新田義貞の銅像、by T.M)

11/23 集英社オンライン

11月23日、日本生命は職場でのコミュニケーションについてアンケート調査の結果を公表。同アンケートでは、職場の人と飲食をともにする「飲みニケーション」について、「不要」「どちらかといえば不要」といった回答が56.4%と半数以上を占め、直近3年間で最多となった。こうした結果をふまえてSNSを中心に賛否さまざまな声があがっている。

私は民間企業を得てから、役所に入りました。東京のソフトウェア会社か地方都市(名古屋のことです)の役所に来てみると、文化の違いに驚いたことがあります。その第一番が、「飲み会」の多さとその長さです。何か最初の一週間は毎日、どっかの課の「新人歓迎会」に出ていた気がします。そして、一次会が6時に始まり8時半に「中締め」となり、それで帰れるかと思うと、誰も席を立たず、結局10時までかかり、それから全員で2次会に行きました。飲み会自体は悪いことではないと思うのですが、新人にはストレスが溜まることが多かったです(すぐに、慣れましたけど)。

飲み会で注意したいことは、「飲み会でストレスが発散できる人」がいるけど、「飲み会でストレスが溜まる人」もいるといいうことでしょう。飲み会が好きな人(ストレスが発散する人)は、飲み会が嫌いな人(ストレスが溜まる人)のことが理解できないようです。

某労働局で、知り合いの飲み会嫌いな女性職員が、飲み会を何回も断っていたところ、そのことで直属の上司に叱責され(そう本人は思い込み)、うつ状態となってしまい長期休暇をとることとなりました。このことは公とならずに済みましたが、職場が合わなかった女性は数年後に早期退職してしまいました。この「上司」という人も私の知人なんですが、彼は正義感が強く、仕事熱心でしたが、「飲みにケーションは職場のチームワークに良い」という信念の持ち主でした。彼に悪気はなかったと思いますが、やはり責任は彼にあると思いました。

しつこい飲み会への誘いは「業務上の必要な範囲を超えた言動」にあたり、パワハラにあたるおそれがあります。そもそも、懇親会が「強制参加」であれば、業務時間とみなされます。また、全員が参加する歓迎会を欠席する部下に対し、理由を問いただす行為も、業務上必要とはみなされずパワハラと判断される可能性があります。管理者の方は気を付けて下さい。

最後に最近気づいたことをひとつ。昨日、「6人の嘘つきな大学生」という映画を観てきました。これは、6人の大学生が就職活動中に遭遇した「ある事件」を題材としたミステリーですが、犯人が出演者の「格」から最初に判明してしまうことを除けば、若手役者の演技が楽しめる良品でした。この映画の中で、出演者5人が居酒屋で飲酒していて、遅れてきた一人が、すでに出来上がっている5人を見て、次のように話すシーンがあります。

「何だよ、今日は食事会だからというから来たのに、これじゃオヤジの飲み会じゃないか。オレは酒は飲めない」

なるほど、そう指摘されてみると、学生のコンパというのは、どの職場にもあるオヤジの飲み会とよく似ていると思いました。結局、若者は「飲みにケーション」を嫌いますが、それは、日本人の血に染みこんだ文化なのかもしれません。

休みます

先週の水曜日・木曜日に茨城県の日立市で仕事をしたところ体調を崩してしまいました。風邪です。今週はブログを更新しません。皆様、来週(12月1日)にお目にかかりましょう。では、お元気で。

トランスジェンダーとトイレ

(甲斐善光寺、by T.M)

時事通信 11/12

経済産業省は12日、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの職員に対し職場の女性用トイレの使用を制限していた問題で、省内にあるすべての女性用トイレの使用を認めたと明らかにした。

最高裁が2023年7月、制限を認めた人事院の対応は違法とする判決を出していた。

この問題で、経産省はこの職員に対し勤務フロアから2階以上離れた女性用トイレしか使用を認めていなかった。人事院が24年10月、省内の女性用トイレを自由に使えるべきだとする再判定を出したことを考慮し、同省は今月、職員に使用制限の撤廃を伝えた。 

労働安全衛生法に関する指導をしてき者としては、このような時代になって、企業に労働安全衛生法をどのように説明したら良いのか分からなくなります。例えば、次のような法条文があります。

事務所衛生基準規則第17条  事業者は、次に定めるところにより便所を設けなければならない。

  一  男性用と女性用に区別すること。

ちなみに、この法律の違反行為に対する罰則は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。

トランジェンダーに関し、悲しいほど無知な私としては、単純な考えしか持ちませんので、「それでは、男性用トイレと女性用トイレともうひとつトランスジェンダー用のトイレを作ればいい」なんて思ってしまいます。もちろん、このようなことは、差別行為に該当します。

(経産省はトランスジェンダーに、「指定したイレレ」を使用させていたことが、差別だと認定されました)

「わが社は、トランスジェンダー差別はしない。しかし、女性従業員及び女性の来客の方が嫌がるから、トランシジェンダーの方は特に決められたトイレを使ってもらう」

これが差別なのです。

さて、それでは最高裁判決を守るためにはどうしたら良いのでしょうか。これが、経産省でなく厚労省で起きた事案だったとしたらどうなっていたでしょうか? 職員が使用する男女別のトイレをトランスジェンダーの方が生物的な男女の垣根を飛び越えることが違法であるかどうかを、行政官庁である厚労省はどう判断するのでしょうか?

役所が困くらいですから、民間企業の人事の方は、現在非常に困っていらっしゃると思います。できる限り、関わりたくと思うかもしれません。しかし、無視・無関心も差別であると言われますので、真摯に対応しなければなりません・・・・

私が企業から対応を相談されたら、やっぱり次のように逃げてしまうと思います。「70近い年寄りでは、頭が混乱してうまく考えられません。もっと若い方で決めて下さい」。

ボケていることは、たまに役に立ちます。

高齢者の労働災害

(旧信越本線横川〜軽井沢間の眼鏡橋、by T.M)

朝日新聞 11/7

働く高齢者の増加で労働災害も増えているとして、厚生労働省は高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とする。6日の労働政策審議会の分科会で、労使が大筋で合意した。厚労省は2025年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する方針。

 努力義務とする対策としては、段差の解消や手すりの設置のほか、高齢者の体力や特性に配慮した作業内容の見直しなどを想定している。定期的な健康診断や体力チェックの継続的な実施も求める。同法に基づく指針も定める方針だ。

 人手不足などを背景に、高齢の労働者は増えている。65歳以上の労働者は、23年は約914万人で過去最多を更新した。厚労省によると、労働者全体に占める割合は、23年は50歳以上が41.4%、60歳以上が18.7%まで増えた。

私が一時期安全衛生の顧問をしていた会社の話です。そこは全国に30工場を展開していて、私は関東・東北の10工場を年3回パトロールをしていました。一昨年に、その会社の労働災害の分析を依頼され、全国の工場で発生した労働災害を確認したところ、現代を象徴するような労働災害が、7月のある日に2件発生しました。

1件目は東北工場で発生した災害です。工場には夜勤があり、夜勤明けの午前5時にその災害は発生しました。夜勤明けの職員が、帰宅しようとしてクルマ(軽自動車)に乗り、会社の駐車場から出ようとしたところ、自転車で出勤してきた22歳の男性職員と駐車場内で衝突し、22歳の職員は自転車と一緒に転倒したという事故でした。この事故により、22歳の職員は、打撲となりましたが休業は0日でした。

2件目の災害は、1件目の災害からちょうど12時間後の午後5時に、湘南工場で発生しました。その工場ではベルトコンベヤーの調子が悪くてメンテナンス担当の職員が屈みこみながら修理していたのですが、就業時間終了のチャイムを聞いて、あせっていました。そこへ、1日の作業を終え、やれやれといった具合の62歳のパートタイマーの女性が更衣室に向かい歩いてきました。急いで作業をしていたメンテナンスの職員がいきなり立ち上がった拍子に、後ろを歩いていたパートタイマーの女性と衝突してしまいました。女性は尻餅をつくと同時に手を床についたのですが、手首を骨折し休業2ケ月の災害となってしまいました。

さて、ある会社で一昨年の7月に発生した2件の災害ですが、これは何か現在の職場環境を象徴していませんか?22歳の若者は自転車に乗っていて、軽自動車と衝突し、捻挫で休業0日、かたや62歳の女性は急に立ち上がった男性と衝突し、手首骨折休業2ケ月。きっと、こんなことが日本中のあらゆる職場で発生しているのでしょう。高齢者の災害は些細なことが、重篤な結果となるのです。

退職代行サービス

(カモのお散歩・智光山公園、by T.M)

Jcastニュース 10/24

辞めたい社員に代わって退職手続きを請け負う「退職代行サービス」。2017年頃に生まれたサービスとされるが、どのくらい広がっているのか。

 就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年10月3日に発表した「退職代行サービスに関する調査レポート(企業・個人)」によると、退職者の6人に1人が利用している。

「退職代行サービス」の記事を読むたびに、私は気になることがあります。労働者からの「退職代行サービス」を真似て、経営者側の「解雇代行サービス」という仕事も生まれてくるんじゃないかという心配です。ある日突然、次のようなメールやLINEが労働者に送られてくる可能性があるのではないでしょうか。

「いつもお世話になっています。当社は気の弱い経営者や、解雇を伝えることに煩わしさを感じる経営者のために所属労働者に解雇をお伝えする解雇代行サービス会社です。当社の依頼主様は貴殿を、今日付けで解雇します。貴殿は明日から、依頼主様の会社へ出社しないで下さい。もし、会社にいらした場合は、会社に無関係な者が来社したということで、不法侵入として警察に通報する場合があります。貴殿が、会社に置いてある私物はすべてご自宅に送付します。労働基準法第20条に基づく解雇予告手当及び未精算の給与と退職金は本日貴殿の銀行口座に振り込んであります。離職票等の解雇に必要な書類は明日中に届くはずです。労働基準法第22条に基づく解雇理由を明記した退職証明書ですが、これは貴殿から請求されなければ交付する必要はないのですが、既に作成してありますので、これも他書類と一緒に送付します。もうこれ以上、会社関係者は貴殿と接触はいたしませんが、もし貴殿が労働組合に加入し、団体交渉を望まれるのなら、当社にご連絡下さい。当社は、弁護士と契約していて、そのような場合についても、対処できるような会社です。また、労働契約法第16条に規定された解雇権の濫用当について訴訟される場合は、裁判所からの通知を得てから対処します。さて、本日まで、依頼主様の会社にご在籍し、業務を遂行して頂いたことに依頼主様に成り代わり感謝申し上げます。まことにありがとうございました。貴殿の今後のご活躍をお祈りします。」

労働契約とは、「事業主と労働者が、労働者が働き、事業主がその対価を支払う」というものです。基本は売買契約と同じですが、それでは弱い立場の労働者が不利になるということなので、労働基準法等の労働者保護法規があるのです。ただ、根本の契約の部分は一緒であり、契約の途中解除については、「労働者側からの通告(退職)」か「事業主側からの通告(解雇)」しかありえないため、「退職代行サービス」があるなら「解雇代行サービス」も理論的にはありうるのです。

ここまで記事を書いていたら、「船井電機倒産」のニュースが飛び込んできました。従業員は、倒産する日まで何も知らされてなく解雇されたとか・・・ 私の想像の世界にあった「解雇代行サービス」が現実化されるようで、何か恐い気になりました。