普通の日記(29年7月28日)

(谷川岳麓のスミレ、by T.M)

労働時間の話ばかり続いたので、久しぶりに労働安全衛生コンサルタントらしく、労働安全衛生の話をします。 

現在、日本の労働安全衛生の現場では革命的な進展が行われれようとしています。それを、ほとんどの方が気付いていないのが現状です。ISO45000のことです。このマネジメントシステムの普及如何によっては、日本の労働安全衛生管理体制が大きく変革する可能性があります。 

日本の労働安全衛生の現場は「労働安全衛生法」を中心に回っています。労働安全衛生法は、昭和47年に施行された、労働基準法の省令の旧労働安全衛生規則を発展させた法律です。この法律は、親である労働基準法の欠点(法人責任の曖昧な点等)を克服した、非常に社会的に有効な法律で、労働災害はこの法律の施行時と比較し、なんと1/3まで減少しました。また、この法律の顕著なところは、法律本体は原則を示すばかりで、具体的な規制は「政令」「省令」に委ねているため、改正事務が非常に早く、現実に対応できるといった長所をもっています。そんな優れた法律が、もしかしたら外圧により改正を強いられる可能性があるのです。 

外圧とは、つまりISO45000・労働安全衛生マネジメントシステムのことです。これは、グローバル化した世界標準の「労働安全衛生管理」です。このISO45000につては、経産省系の規格協会と厚労省系の中災防が協力し、「認証制度」を設けようとしています。他のISO9000(品質管理のマネジメントシステム)やISO14000(環境マネジメントシステム)のように、この認証を受けなければ、他国への輸出等がうまくいかなくなる可能性があります。 

しかし、現状では、このISO45000と労働安全衛生法の法条文がうまく噛み合っていないのです。

 

普通の日記(29年7月25日)

(相俣ダム、by T.M)

前回の記事で、高度プロフェッショナル制度を連合が認めたことについて

> この件で連合を非難できるのは、連合に組合費を払っている人だけだ

と書いたところ、連合内部で、当件について、散々の非難が湧いていることが、新聞に掲載されていました。 

連合の執行部は、こんな大切な事を内部で検討もせずに、執行部独断で決めていたのでしょうか。まあ、労働組合のナショナルセンターの内部の話だから外部の者がとやかく言うことではないけど、組織維持は大丈夫かと他人事ながら心配してしまいます。 

また痛ましい事件が起きてしまいました。新国立競技場の建設工事において、新人の現場監督候補生が自殺されたそうです。原因は(労災の認定はまだですが)、長時間労働によるものと推定されるとか。心よりご冥福をお祈り申し上げます。 

「電通事件で自殺された高橋まつりさん」「関西電力で自殺された原発担当課長」「ワタミで自殺した横須賀店店長」、そして今回の事件。「仕事に対する責任感から、自分の仕事が周囲に迷惑をかけているのではないか」と思い傷つき、そして最後には木の枝が折れるように、ポキッと亡くなりました。みんな、たかが仕事、たかが組織と思えなかったくらいに、職業に真面目な姿勢で接していたのだと思います 

高度プロフェッショナル制度について、「年収1075万円の下限」が拡大され、もっと年収の低い労働者にも適用されるのではないかと反対する声が多いと聞きます。

私は、その危険は少ないと思います。その時の政府がどのような人々で構成されようとも、それほど愚かではないと思うからです。 

私が、心配するのは、「仕事に対する責任の範囲」が無規制に拡大され、追い込まれる者が増えることです。今回のような事件の増加を危惧します。

 

普通の日記(29年7月21日)

(谷川連峰麓の赤谷湖、by  T.M)

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梅雨が明けたそうです。もっとも、ずっと前に終わっていたような気がします。今日は、「安全週間」前後の最後の講演会の講師。ここ2ヶ月間はとても忙しかったけど、明日から9月半ばまで仕事がありません。本格的な仕事は、全国労働衛生週間まで待つしかないようです。嘆くより、溜まっている原稿依頼を片付けて、後は夏休みを楽しむつもりです。健康診断を実施します。胃カメラ、腸カメラ、歯医者に行こう。

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連合が、高度プロフェッシャル制度に賛成したということで、話題となっています。

連合は700万人の労働者で結成する団体。日本の総労働者数は5800万人。労働者の1/8しか組織していない労働組合のナショナルセンターと話合いが済んだからといって、全ての労働者が了解しているとされても困ります。 

もっとも、今回の結果で連合に抗議しに行った人がいるとも聞きますが、それもまた筋違いのような気がします。連合に抗議して良いのは、連合に組合費を納めている方々だけでしょう。連合は政治的な動きはしますが、基本は労働組合です。組合員の利益のためにのみ、発言するのは当然のことでしょう。 

今後、全労働者数の1/3まで数が増えた膨大な数となった非正規労働者の立場を誰が守ってくれるのかが気になります。果たして連合が、その受け皿になってくれるのでしょうか。また受け皿になる意志はあるのでしょうか。

(高度プロフェッショナル制度の内容的なことは次回書きます)

 

普通の日記(29年7月18日)

(三国街道須川宿近辺のハナショウブ、by T.M)

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今日は、新潟に日帰り出張。セミナー講師です。暑くなりそうです。

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電通が、「過半数組合と誤診して36協定を締結していた」という件は本当でしょうか。私は、代表取締役や今回被疑者となった方々が誤診してしていたことは間違いないと思います。しかし、総務部門の担当者はどうでしょうか。 

電通ほどの大企業の総務担当者が、自分の会社の労働組合が過半数組合であったかどうかを把握していないということはありえないと思います(あくまで推測です)。これは、総務担当者にとって、極めて基本的な問題だからです。 

過半数労働組合の存在というのは、総務部門にとってはとても便利なものです。労働関係の書類、例えば36協定や就業規則は、過半数組合の協力があればいくらでも改正等ができますし、労働安全衛生委員会の活動等にも過半数労働組合の存在が欠かせません。

このような組合がなければ総務部門は労働者の過半数代表を選ぶお膳立てをイチからしなければなりません。

非正規労働者の割合は、20年前には全労働者の1/6であったものが、昨今では1/3までその比率が上がっています。従来、正社員だけで企業内組合を作ることが慣例でした。なぜなら、非正規労働者と正規労働者の格差が激しく、同一の要求など不可能だからです。しかし、非正規労働者の数がここまで多くなってしまうと、数にまかせて正規労働者の組合だけで物事を進めることはできなくなっているのです。 

今回の電通の「36協定の協定締結者が過半数労働組合でない」という事件は、日本の大企業が、非正規労働者の存在を軽んじてきたから起こったものではないでしょうか。 

非正規労働者の処遇の改善が必要です。次の国会では、働き方改革のひとつの目玉である、「同一労働同一賃金」の政策の審議をぜひして欲しいものです。

 

普通の日記(29年7月14日)

(三国街道須川宿付近の野菊、by T.M)

「長時間労働規制の問題点」を書いていましたが、平成29年7月現在、のんびりと長年温めてきた題材をブログに書いていくより、時事問題として、すぐに書いた方が良いというような話題が、世の中に山積していることに気付きました。そこで、「長時間労働規制の問題点」を一時中断し、日々の日記を書くこととしました。

私が最近一番気になったのは、次の新聞記事です。

「 大手広告会社の電通(東京)が社員に違法な残業をさせていた事件で、残業時間を月に50時間までなどと定めた同社本社と電通労働組合東京支部の労使協定(三六協定)が無効だったことが7日、東京地検の捜査で分かった。労組が労働者の過半数で組織されていなかったためで、電通幹部は三六協定が有効だったと誤信していたという。」(産経新聞、7月7日) 

これ大事件です。これが事実なら、36協定が無効であったのですから、すべての残業が違法残業ということになってしまいます。(まあ、それが「誤診」ということで刑事罰にはならないのは理解できますが・・・) 

問題は、36協定でなく、就業規則です。就業規則の有効性についても、過半数労働組合の存在が影響されます。

就業規則は「過半数労働組合の代表の意見書の添付」が必要となりますが、その意見書の添付がなくても、「就業規則の内容が労働者に周知されている」条件が満たされていれば、就業規則は有効です。 しかし、今回「過半数労働組合に達していなかった理由」として、会社側は「正規職員だけなら過半数労働組合に達するが、非正規職員が増えてしまい、結果として労働組合は過半数割れをしてしまった。」と説明しています。 

電通は、非正規職員であるパートタイマー労働者にも、正規職員の就業規則を開示しているのでしょうか。通常の会社では、クラウド等を利用し、正社員には就業規則を開示していますが、パートタイマー等には、そのシステムに侵入できないのが通例のはずです。 

だとするなら、もしかしたら、電通の就業規則は、「過半数労働組合の意見書の添付がなく」かつ「全職員に周知されていなかった」という可能性もあります(これは、私の憶測であり、ひとつの可能性の提示です)。 

そうであれば、就業規則は無効となり、就業規則が無効の期間中に、例えば会社が行った、「解雇処分」等は、すべて無効となってしまう可能性があります。