宝塚歌劇団

(タンポポと甲斐駒ヶ岳、by T.M)

日刊スポーツ 11/25

読売テレビの報道局解説委員長・高岡達之氏(58)が、25日に放送された読売テレビのバラエティー「今田耕司のネタバレMTG」(土曜午前11時55分)に出演。9月に宝塚歌劇団の25歳宙組団員が転落死した問題についてコメントした。

 遺族側は、死亡の背景にパワハラやいじめがあったと主張。それに対し、14日に会見した歌劇団側は過重労働を認めたものの「上級生によるいじめやパワハラは確認できなかった」とした。2月に一部で報じられたヘアアイロンによるやけど問題にしても、12月1日付で次期理事長就任が決まっている村上浩爾専務理事が「証拠となるものをお見せいただくようにお願いしたい」とコメントしていた。

 高岡氏は「来週以降、密室の沈黙が崩される」としたうえで、22日に労働基準監督署が立ち入り調査で労働時間や勤務実態などの聞き取りを行った事に触れ「見方によっては『マルサ』(国税調査部)より怖い。労働基準監督署の方は司法警察員。逮捕状が請求できるし、逮捕ができます。今、劇団の内部調査だから『答えたくない』という人がいるといいますが、労働基準監督署の調査は尋問ですので、答えないなんてことは許されません」。

 さらに労働時間について「これが本当に今までちゃんと管理していなかった。上級生に任せてました-なんてことになると、致命的な影響を受けます」と言い及んだ。

 団員が亡くなる直前1カ月の時間外労働について、歌劇団側は118時間以上(遺族側は277時間以上)と主張しているが、高岡氏は「法律上、過労死は80時間が危険ライン。公式の会見で認めた時間であったとしたって、すでに30時間以上超えている」と説明し「逆の言い方をすれば、労働基準監督署も問われますけどね。これだけバックに大きな企業のいる劇団ですから」と話した。

西宮労働基準監督署の職員の方々、頑張って下さい。とても難しい事案だと思います。この事案の結論によっては、大きな一石を投じることとなります。

死んだ劇団員と宝塚歌劇団は業務委託契約を締結していたということですが、これが「偽装委託契約」であり、本当は労働契約であったということに、労働基準監督署がメスを入れることができるかどうかがカギです。次のような問題にも関連してくると思います。

「相撲部屋と、関取以下部屋住みの力士とは労働契約でないのか?」

「落語家の弟子は、労働者でないのか?」

「試合時間以外の時間管理をされている野球選手は労働者ではないのか?」等々

この宝塚歌劇団の労働者性の問題について、最大の焦点は、

「契約切替え時の業務内容の変更」

となるでしょう。ウィキペディアによると、宝塚歌劇団は、入団後ある一定期間は労働契約を締結し、その後は業務委託契約となるそうです。今回亡くなった劇団員の方は、業務委託契約となって、まだ間もないとかいう話です。労働契約から業務契約へ変更があった時にどのような業務内容の変更があったのか?もし、業務内容に大きな変更がない場合は労働契約の継続とみなせますので、「偽装委託契約(偽装請負)」と見なせるような気がします。

残業拒否

(タンポポと八ヶ岳連峰、by T.M)

11/17 読売テレビ

関西空港などで航空機の誘導などを行う会社の労働組合が、長時間労働が改善されないとして12月から時間外労働をしないと会社に通告したことがわかりました。

 大阪府泉佐野市に本社を置く『スイスポートジャパン』は関西空港など6つの空港で航空機の誘導や荷物の積み降ろしなどの業務を行っています。

 『スイスポートジャパン』によりますと、約1400人の社員の9割が加入する労働組合から12月から一切、時間外労働を行わないと通告されたということです。航空需要が回復している一方で、人材確保が追いついておらず、長時間労働が改善されないことが理由だということです。

 斉藤鉄夫国交相「国際便の運航にも影響が懸念される事態であると、そのように国土交通省としても認識しております」

 『スイスポートジャパン』は、「組合と協議を続けている。改善して対応したい」とコメントしています。

この記事なんですが、もう少し分かり易く報道してくれないでしょうか。意味が分かりません。

労働の分野では、「日立製作所武蔵工場事件」という有名な最高裁判例があります。これは、残業命令を拒否した労働者を懲戒解雇したことが認められるか否かが争われました。結果は解雇は有効と判断されました。この時に、最高裁が残業命令を労働者側が拒否できない要件として示したのが次の3点です。

  • 適正な理由のある残業であること。
  • 就業規則に残業に関する記載があること
  • 時間外労働協定(36協定)が、過半数労働組合もしくは過半数労働者代表と締結されていること。

さて、この最高裁判例を踏まえ、上記の記事についてですが、2つの解釈ができます。

第一の解釈

今まで残業をしていたということ、及び従業員数1000人以上ということを考慮すると、就業規則には残業に係る記載があると思われる。そして、いわゆる「エッセンシャルワーカー」なので、当然に正当な残業命令である。

「就業規則への記載」「適正な残業命令」以外に「36協定」が存在したならば、残業拒否した労働者はすべて「処分対象」ということになってしまう。だから、今回の事件は「36協定の有効期間が11月で終了する」ので「更新の36協定」を過半数組合は締結しないことにしたという解釈。

第二の解釈

そもそも今までが「36協定以上の違法残業」をしていた。だから、今後は残業拒否をすることとしたという解釈。

「第一の解釈」のとおりであるなら、これは正当な組合活動ということになります。

「第二の貸釈」のとおりであるなら、違法残業を取り締まる労働基準監督署の出番という

ことになります。

せっかくのテレビ放映なのですから、「法違反の有無」くらいは確認して報道してもらいたいものです。

大阪市のボランティア

(現在の御殿場線である旧東海道本線を走ったデゴニ・山北駅にて、by T.M)

お久しぶりです。

3週間ぶりのブログ更新です。今回はこの話題を取り上げます。

11/8  ABCニュース

 府と市は10月19日からそれぞれの職員らを対象に、優勝パレード当日に約7時間にわたり、現地で来場者案内や交通規制などを担当するボランティアを募集していました。

 目標人数は府と市あわせて3000人で、11月7日の締め切りまでに約2400人以上が集まったといいます。 

 大阪市の横山市長は「必要な人数に達した」と説明しました。

 ただ、大阪府関係職員労働組合によりますと、募集は通常業務と同じく、各部局の上司から部下へとメールで周知されており、「断りづらい」と戸惑う職員の声もあったということです。

 一方、パレードのもう一つの会場となる兵庫県は、神戸市とあわせて1500人の職員を集めるのが目標で、当日は大阪とは違い「公務」として休日出勤扱いとし、代休の取得を促していくといいます。

 大阪府の職員の間からは「兵庫県のように公務扱いにしてほしい」、「なぜ大阪府だけボランティアなのか」との不満の声も上がっています。

 横山市長は取材に対し「いろんなご意見があるのは承知していますが、前向きな気持ちでボランティアに参加していただきたい」と話しています。

 パレードをめぐっては、大阪府などで作る実行委員会が実施費用約5億円をまかなうため、クラウドファンディングを呼び掛けています。

これ、まずいですよ。民間企業でこれをやりはじめたら、たいへんなことになりますよ。というか、民間企業がこれをやったら、労働基準監督署が摘発しますよ。

私の知っている会社で、このようなことをやっている会社がありました。30年以上前の昭和の会社の話です。そこは建設会社だったのですが、週に1回、職員が朝早く来て、会社の回りの道路や近くの公園を清掃していました。会社は、職員が自発的に行うボランティア活動ということで、その清掃活動に関する賃金を支払っていませんでした。その会社の職員から、この活動はサービス残業ではないかとの申し出があって調査したのですが、けっこう悩みました。結論は、やはり労働時間としては認められないという結論になりました。次のような事実があったからです。

1 会社の業務とボランティア活動は無関係である。

2 会社の親睦会が主体となってボランティア活動をしていた。親睦会の会長は、若手職員が務めていて、親睦会内部の連絡はすべて「会長名」で行われていた。

3 清掃活動には、社長が参加することもあるが、社長の訓示等は清掃活動中に行われていない。

4 出欠の記録はつけていない。

5 補助金は会社からでていた。その補助金の一部は、ボランティア活動中に災害が発生した場合の保険代に使用されていたが、それ以外の予算の使い方は、会社から口出すことはなく、会長が管理していた。

まあ、会社終了後の親睦会の飲み会やクラブ活動と同等のものだと考えざるえませんでした。

(もちろん、会社終了後の飲み会であっても、その出席が会社上司によって強制されれば、それは「労働時間」として認められます。)

今回の大阪のケースであると、優勝パレードの来場者案内や交通規制などは、「労働」にあたる可能性が高いと思います。それは次の点からです。

1 「来場者案内」や「交通規制」は、大阪府や大阪市の業務と直接に関わりがあるのではないか?

2 「各部局の上司から部下へとメールで周知されている」のであれば、それは組織内の指揮命令によるものではないか?

民間企業のお手本にならなければならない行政機関が、労働基準法違反の疑いがある行為はやめて欲しいと思います。

あと、それからもう一つ。職員がボランティア活動中に事故にあったらどうするつもりでしょうか。まさか、ボランティア活動で公務災害の認定はできません。前述の会社の場合は、ボランティア活動について保険に加入していましたが、大阪市はそのような対策はされているのでしょうか? 

大きな事故が起きて、事故発生後に仕方なく公務災害認定をしたら、「ボランティアは実は公務だった」ということになり、「賃金不払いだった」ということになります。そんなことになったら、目を当てられないと思うのですが、横山市長はそんな危惧はしないのでしょうか。