2024問題、脱法行為

(ポルシェセンターみなとみらい、by T.M)

先週と同じで「2024年問題」について書きます。

何と、私は解決策を思いついてしまいました。我ながら凄いと思います。

解決策は、「労働契約」を「雇用契約(労働契約)」と「委託契約」に分けることです。

ある宅配会社Xに勤務する労働者Aがいたとします。Aの労働条件は月曜日から金曜日までで、完全週休2日制です。2024年以降は年間960時間の残業は可能です。だから、毎日約4時間の残業は可能となる訳です。

さて、Aの休日にあたる「土曜日」に、会社XとAは業務委託契約をしたとします。ようするにAの月曜日から金曜日までの「労働時間単位」に賃金を支払っていたのに対し、例えば、土曜日にも勤務させ、その日だけ「宅配荷物を1個配達すると300円。1日100個配送してくれ。出勤時間と退勤時間は自由」というような委託契約に変更してしまうのです。

(注)「労働契約」を「委託契約」に変更するためには、「時間的拘束」をなくす以外に、「配達するクルマをリース契約する」「指揮命令携帯を、上司から部下という形態から、X会社から委託会社への指示へと変更する」等色々なことが必要です。ここでは、必要な契約形態の変更が全て行われたとします。

このように、X会社と労働者Aの契約が「労働契約」オンリーから、「労働契約」プラス「委託契約」とすれば、年間960時間以上の長時間労働が可能となり、2024年問題をクリアすることができます。とてもいい考えです・・・

「おまえは何を考えているんだ」「元労働基準監督官が脱法行為を指南してどうするんだ」なんて怒られてしまいそうですが、これって労働基準監督署も合法だって認めていることなんですよ。私は先週T労働局(日本で一番大きい地方局)と、その筆頭署であるC労働基準監督署に電話をかけて確認したのですから、確かな情報です。

何で、私がそんな電話をしたかというと、自分の身の振り方で思いついたことがあったからです。前々回お知らせしましたとおり、私は今年の3月に65歳となるので、今所属している非常勤となり、兼業が可能になります。そこで個人事務所を立ち上げることにしたのですが、

「今所属している組織で、非常勤としての勤務以外に何か仕事ができないか」

と思いついてしまったのです。さすが直ちにこの考えの脱法性には気付きました。時間外労働が無限にできてしまう可能性があるからです。

ただ、この自分の考えが法的にどういう取扱いとなるのか、他の人に聞いてみたいと思ったので、労働局に尋ねてみました。ところが、私の質問に対し、複数の現役の労働基準監督官が、

「同一事業場について、同一作業員に対し、労働契約と委託契約を交わすことは可能だ」

と軽く答えるではないですか。脱法性を懸念した者は一人もいません。

もし、質問した相手が事業主であって、実際に質問のような契約を交わし、契約した作業員(労働者)が過労死した時に、「監督署がいいと言ったから、一人の作業員を月曜日から金曜日までは労働者として働いてもらって、土曜日は委託として作業してもらっている」と答えたらどうするのでしょうか?

現場の監督官には、少し問題意識を持って仕事して欲しいと思いました。

(しかし、私もイヤなOBです)

2024問題と技能実習生

(川崎市夢見ヶ崎動物公園のシマウマ、by T.M)

朝日新聞 1月19日

野村総合研究所は19日、トラックドライバー不足が深刻になる「2024年問題」で、30年に予測される国内の荷物量の35%が運べなくなるとの推計を発表した。エリア別では東北、四国など地方で高い傾向にある。輸送の効率化が進まなければ、一部の地域では離島のように配送料が割高になる可能性も指摘した。

 トラックドライバーは24年4月から、拘束時間の制限が新たに設けられるなど労働規制が見直されることで、人手不足が懸念されている。野村総研は将来の荷物量の予測をもとに、規制による物流への影響を調べた。

 不足する割合が最も高いのは東北で41%、四国で40%、北海道と九州でいずれも39%だった。大都市を抱える関東と近畿でも、それぞれ34%と36%だった。

働き方改革もいよいよ集大成を迎えようとしています。時間外労働の上限規制の猶予対象業種であった自動車運転業務について、2024年4月1日から年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。また、本年4月1日からは、中小企業の自動車運転業務、これもまた猶予されてきた「月60時間の時間外労働が発生した場合の、時間外労働の割増率の25%から50%へ引き上げ」が適用されます。

 この「時間外労働の上限規制」及び「時間外労働手当の引き上げ」により、ドライバー不足が深刻になるっていうことですけど、これって現場で働く人にとってはとてもいいことだと思います。働く人をより多く募集しなければならない。そのためには、よりよい職場環境を作らなければならない。なによりも賃金を上げなければ、人が集まらない。好循環だと思います。「値上げ」ということを考慮しなければ・・・

 アマゾン、楽天、yahoo、ヨドバシ・・・ その配送料が値上げするということは、私のような高齢者にはとても厳しいものです。また、地方都市でデパートや商店街が廃業してしまった地域住民にとっても痛手でしょう。

私は人件費の高騰を理由とした値上げについては、賛成します

「原材料費の高騰」を理由とした値上げについては、消費者に何も得るものがないけど、「賃上げを理由とした値上げ」については、時間はかかるけど、回り回って自分の利益になるような気がするからです。

私が危惧するのは、この「2024年問題」について、「外国人の技能実習生」で乗り切ろうとするアホがでてくるのではないかということです。私は、「海外から来る現場作業労働者」についてはある程度認めることを検討すべき時期であると思います。昔、地方から都市への「出稼ぎ者」がいたように、海外からの「出稼ぎ」を認めてもいいように思います。

「出稼ぎ者」と「技能実習生」では意味が違います。技能実習制度について、「自社で育てた実習生が、本国に帰り、自分の技能を生かし企業して、日本で勉強した企業と取引きをする」といった好事例があることは知っています。また、真摯に実習生と向い合い、育ててくれる企業もあります。では、「技能実習生」について、「賃金の安い使い捨て労働者」と認識されることも多いのではないでしょうか。

外国人の出稼ぎを認め場合には、法的保護を日本人と同じとして、各種社会保険への加入は当然のこととして

 「帰化条件を緩くする」「残留資格を緩くする」「地方参政権を認める」等

の法改正が必要となります。でももう、これだけ高齢化社会が進んだ現在では、そろそろその時機が来たと思います。

明けましておめでとうございます

(川崎市夢見ヶ崎動物公園のフラミンゴ、by T.M)

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

新年になってから、私の4月以降の処遇に動きがありました。現在の勤務先で「週5日勤務」の常勤雇用から、「週4日勤務」の非常勤雇用となることが決定しました。今年の3月で年金受給要件を満たす65歳になるための措置です。

給料は下がりますが、いい事もあります。なんと副業が認められるのです。そこで「おばら労働安全衛生コンサルタント事務所」を5年ぶりに復活させることにしました。

ちょうどタイミング良く、1件仕事も舞い込んできました。幸先の良いスタートです。

講演会、安全診断、顧問、執筆等なんでもします。

労働安全衛生だけでなく、労務相談の経験豊かです。3月くらいになったら電話連絡先を公開しますが、今は取り敢えずメールでご連絡下さい。

  obaraconsultant@jcom.zaq.ne.jp

ノーマスク理由の解雇は無効 マンション管理人が勝訴  2022/12/5(月) 共同通信

 新型コロナウイルス対策のマスク着用の指示に従わなかったことを理由に解雇されたのは不当として、マンション管理人の70代男性が、雇用主の近鉄住宅管理(大阪市)に未払い賃金を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は5日、「解雇は社会通念上相当とは言えない」として無効と判断し、約90万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は大阪府摂津市のマンションで管理人を務め、昨年5月に新型コロナに感染。復帰後、会社側は男性がマスクをつけていないと住民の苦情があったとして、他のマンションの清掃員への配置転換を打診した。拒否すると、マスク着用の指示に従わなかったとして解雇通知を受けた。

他の記事を読むと、「解雇処分は重すぎ」ということでの判決であり、「マスクの着用の有無等については判断していない」みたいな解説がありましたが、少し疑義がある判決です。

労働安全衛生法には「マスク着用」を義務づけている法条文があります。「アーク溶接時の粉じんマスク着用」等がそれです。もちろん、「マスクを着用しなければ法違反であるケース」と「お願いレベルのコロナ対策対応のマスク着用」では意味が違いますが、企業は状況に応じて、業務中にマスク着用を求めることは、非常識なことではないと思います。

また、労働者は就業時間中であれば、業務命令を受ければ着用衣服について制限を受けることは当たり前だと思います。例えば、工場や小売店で会社支給の制服を着用するのと同じことです。労働者は就業時間中は、事業主の「指揮命令下」にあるのですから当然のことです。

この事業主の業務命令を拒否しても処罰されないというのは相当な理由がなければなりません。もしかしたら、この労働者は「マスクをしていたら健康に差し障りがある」というような状況だったのでしょうか?

「住民の苦情があったとして、他のマンションの清掃員への配置転換を打診した」上での解雇措置ですから、それでは会社はどうすれば良かったのでしょうか?疑問の残る判決です。