(野毛山動物園のキリン、by T.M)
非常に興味深い労災関係の記事があったので、長いけど引用します。
1/31(火) 1:29配信 日テレNEWS
陸上自衛隊での性暴力を告発した元自衛官の五ノ井里奈さんが、性暴力を行ったとして懲戒免職となった5人の男性隊員に550万円、十分な調査をしなかったなどとして、国に200万円の賠償を求め提訴しました。訴えを起こした理由は、加害者側の弁護士が作成した書類に書かれた“ある言葉”でした。
五ノ井さんは東日本大震災で被災した際に、支援してくれた女性隊員にあこがれ、自衛隊に入隊したといいます。しかし、あこがれの自衛隊で受けたのは、約2年間にわたる日常的な性暴力でした。
去年9月、防衛省は複数のセクハラ行為が行われていたことを認め謝罪。そして、陸上自衛官の隊員5人を性的な接触を行ったと認定し、懲戒免職としていました。
その後、五ノ井さんは、隊員側の3人から示談を持ちかけられていることを明かしていましたが、訴訟を起こすにいたった理由について――
性被害を受けた元陸上自衛官 五ノ井里奈さん
「できることなら、私としては戦う選択をしたくなかったのですが、本当に反省しているのかどうかというのが伝わらない」
五ノ井さんがこう感じたのには、ある出来事がきっかけでした。実は、示談を持ちかけられた際、加害者側の弁護士が作成した書類の中に、「個人の責任を問われるか疑問があるが…」という言葉があったといいます。これに対して、「責任がないということを言っているんでしょうか?」などと問い合わせたものの、回答がない状況だということです。
性被害を受けた元陸上自衛官 五ノ井里奈さん
「回答書がこないっていうのが、私としてはことの重大さを軽く見てるんじゃないか。このまま中途半端にするよりかは、しっかりとオープンにして、明確にする必要があると思っている」
会見の最後、伝えたいことを問われた五ノ井さんは、「私は、自衛隊が嫌いでこういう活動をしているわけではなく、絶対、同じ被害を出さないためにこういう行動をしているので、自衛隊は素晴らしい職業というのは間違いないので、しっかり内部を変えてほしいと思っています」と話しました。
これって、弁護士が凄いアホで無神経だと思います。でも、少し誤解があるのかなとも思います。というのは、この記事には大事なことがはっきり書かれていなくて、それはこの裁判は労災補償を争う裁判だということです。別の新聞記事には、はっきりと「国の安全配慮義務を争う」と記載されています。
職場内の人間関係が原因となり、ケンカ等が発生し、怪我人がでた場合に「労災」扱いとなるかは、「業務」と因果関係があるかどうかが問題となります。この五ノ井さんの事件は昨年の12月23日に防衛相が責任を認め労災としていますから、今回の安全配慮義務違反の損害賠償事件となった訳です。
労災の件で損害賠償請求するなら、確かに加害者への損害賠償請求へはハードルが高いようです。それは民法715条に「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と明記されているからです。
この事件は「モリカケ事件」における「赤木さんの損害賠償事件」と似ています。モリカケ事件で公文書の書き換えを苦として自殺した財務省職員の家族が、国と当時の上司を「安全配慮義務違反」として提訴しましたが、国が請求額を全額支払うことで上司への責任追及はされることなく裁判は決着しました。(これも酷い決着のさせ方です)
この五ノ井さんの事件についても、「国の安全配慮義務」を争うならば、国が五ノ井さんの請求額をそのまま支払って、加害者出席の裁判が行われる前に、裁判自体が終結する可能性があります。
加害者側の弁護士が作成した書類の中に、「個人の責任を問われるか疑問があるが…」
こんなセンシブルな事件に、こんな誤解させるような文言を入れた書類を作成した弁護士の責任は大きいと思います。
東日本大震災で被災した際に、支援してくれた女性隊員にあこがれ、自衛隊に入隊した
この気持ち分かります。2011年の3.11の後の4月に被災地に仕事で行ったけど、当時の自衛隊の活躍は、まさにヒーローでした。五ノ井さんの傷を癒すために、、自衛隊がどうあるべきであるのか・・・ 組織内部の良心に期待するしかないと思います。
自衛隊が、再び国民の尊敬を集める組織となることを、切に願います。