QBハウスについて

(身延山久遠寺 by T.M)

共同通信 2/14

低価格ヘアカット専門理容店「QBハウス」の神奈川県内の店舗で働く美容師8人が14日、残業代を過少に算定していたなどとして約2800万円の支払いを運営会社側に求め、東京地裁に提訴した。

 訴状などによると、8人は2003~16年にQBハウスのスタッフとして採用されたが、運営会社が業務委託する個人事業主のエリアマネジャーに雇用される形態になっていた。業務上の指揮命令をしている運営会社の「キュービーネット」が事実上の雇用主で、残業代を支払う責任があると主張している。

 キュービー社はホームページで、運営会社などで勤務する理美容師は「業務受託者に雇用されている」との見解を示している。

この問題なんですが、監督官の現役の時に少し研究したことがあります。ちゅーか、10年前からこの形態があるんですよね。この問題は、私の経験としては、働いている美容師さんはQBハウスの労働者の可能性が高いと思います。でも裁判では原告側(労働者側)が負けると思います。理由は、最も協力して欲しい者の協力が得られないからです。

この問題の本質は「エリアマネージャー」が、QBハウスの労働者であるかどうかです。エリアマネージャーとQBハウスの契約が「委託契約」であるなら、エリアマネージャーは個人事業主ということになるから、その下で働く美容師さんたちはエリアマネージャーの労働者ということになり、QBハウスの労働者ではないということになります。

エリアマネージャーとQBハウスの契約が、見かけ上は「委託契約」であるが、実は「労働契約」であるなら、QBハウスがエリアマネージャーを指揮命令して、美容師さんたちを雇用しているので、美容師さんたちはQBハウスの労働者ということになります。

(注) 「委託契約」であるか、「労働契約」であるかは、基本的に「場所的拘束を受けているか、時間的拘束を受けているか、事業主の指揮命令を受けているか」等ではんだんします。

つまり、美容師さんたちがQBハウスの直接雇用であるかどうかについては、間に入るエリアマネージャーの属性次第ということになります。

エリアマネージャーが美容師さんたちと共闘してくれて、「自分たちもQBハウスの労働者だ」と主張してくれれば、美容師さんたちにとって裁判は有利になりますが、どうもそうでない様子です。だから、私はこの裁判は原告側にとって厳しいものになるのではないかと思います。

意外と「コンビニ」等についてもこういう問題があります。コンビニの店主とコンビニ本社の契約は、店主に資本(土地、建物)がどのくらいあるかで違いがありますが、基本は、店舗の売り上げから必要経費を差し引いたものが店主の収入となります。最初に資本がある方がコンビニのフランチャイズであれば「必要経費」は少なくなりますが、資本を持たない雇われ店長については「必要経費」の比率が多くなり、削れるのは人件費ぐらいですから、店長自らが過重労働となります。あるコンビニの雇われ店長から、これは「実質的な労働者でないか」と相談を受け申告となり、けっこう気を入れて調査したんですけど、店長が途中で「揉め事をおこしたくない」等の理由で申告を取り下げたことがありました。結論を出したかったんですけど、今となってはちょっと残念に思える事件でした。