長時間労働規制の問題点(1)

(写真提供、T.M)

今から、約30年程前の労働基準監督署での36協定(時間外労働協定)の受付は、それは雑なものでした。というより、当時の新監は、窓口で36協定を受理するための教育を受けないで、受付印を押していたというのが実情です。36協定を郵便で受理した時の誤送付はしょっちゅうでした(私だけだったかもしれませんが・・・)。

これは、現在では考えられません。私が退職する直前の監督署では、36協定の取違えの誤送付なんて起きた際は、監督署長が誤送付先に行って、謝罪して36協定を回収し、次に元の36協定の提出先に行って事情を話し謝罪し、そして局長へ謝罪にいきます。監督署長は最低3回は頭を下げる訳です。そして、36協定の誤送付事件は全て、労働局のHPに公開されます。これだけ、情報漏洩の防止ということが徹底されてきました。

36協定というものは、協定期間は原則1年間ですが、有効期間はそれぞれの会社によって違いがあります。ある会社では1月1日から1年間ですし、別の会社では2月1日から1年間です。
労働基準監督署では3月過ぎから36協定受理のための臨戦態勢となります。多くの会社は4月1日からの1年間を有効期間として定めているので、その時期に36協定が集中して提出されるのです。他の時期だったら、郵送されてきた36協定はその日のうちに、署内審査され、受付印を押印して返送されます。しかし、3月20日過ぎから労働基準監督署では、36協定が溜まりはじめるのです。到達日別の箱を用意し、送付されきた36協定を片っ端からその箱に入れ、別室で4~5人の職員が片っ端から審査します。最近は、誤送付防止のため、返還用の封書は、封入した職員とは別職員によるダブルチェックが内部規則となりましたので、これもまた人手をかけます。そんな訳で4月の第1週までに到達した36協定の返却事務はゴールデンウィーク直前までかかってしまいます。その期間の職員の残業代も膨大なものとなります。

私は、時々思いました。「こんなに苦労して受理した36協定が、果たしてどれだけ労働者のためになっているのだろう。」