本省の人たち

(三窪高原から富士山と甲府盆地を望む・山梨県甲州市、by T.M)

厚労省若手チーム「過剰労働でミス生まれかねない」緊急提言(NHK)2019年8月26日 17時24分

統計不正問題など不祥事が相次いだ厚生労働省の組織改革について、若手職員の検討チームが緊急の提言をまとめました。「過剰な労働で職員が疲弊しさらなるミスが生まれかねない」として職員の増員や業務の効率化などを求めています。

改革案は厚生労働省の40人近い若手職員のチームがことし4月から検討を進めてきたもので、26日、代表の職員が根本厚生労働大臣に緊急の提言書を提出しました。

検討チームではことし、1000人以上の職員にアンケートを実施し、業務量が「非常に多い」または「多い」と答えた職員が65%に達し、「生きながら人生の墓場に入ったと思っている」といった深刻な声も寄せられたということです。

(中略)

若手チームの代表で人事課の久米隼人課長補佐は「忙しさのあまり、志半ばに辞めていく若手職員も増えていて、強い危機感を持っている」と話していました。

 

私は、役人生活32年間のなかで、25年間を労働基準監督署、7年間を地方労働局で勤務しました。だから、本省での業務については分かりません。労働局で、本省から来た人たちと接していると、現場の監督官とは、まったく見ている風景が違うことに驚かされました。

監督署の職員は、多くの国民の方と直接に接します。ある時は、監督署のカウンター越に労働者から、会社の法違反についての情報を得ます。また、ある時は事業場で、事業主と面談し、タイムカードと賃金台帳を確認しながら、法違反を特定します。ですから、「怖れ」られもしますが、「ケンカ」も売られます。クレイマー対応は当然、中にはストーカーのように、労働者や事業主からまとわりつかれることもあります。そして、職員の長時間労働はあたり前です。ですから、労働基準監督署の現場の職員の中には、心を病む者もたくさんいます。

・・・でも、私にとっては現場の仕事は楽しいものでした。

チャップリンは、人生に必要なものを3つ挙げています。

「some money,some courage,big love」(「いくばくかの金銭と小さな勇気、そして大きな愛」)

私にとって仕事に必要なものは、この3つプラス「curiosity」(好奇心)でした。つまり、「好奇心を満たしてくれる環境であり、社会に貢献しているという意識があれば、後は、いくばくかの給与と小さい勇気があればやっていける」

私は1年間ほど民間企業も経験していますが、その時の経験から役人生活を振返り、しみじみそう思います。

新人監督官の時に、先輩に連れられて大きな石油化学工場に行きました。そこで、―200℃にもなる液体窒素の取扱いを確認している時に、工場の人がパフォーマンスでバラの花を液体窒素に投げ込んでくれました。液体窒素は、その瞬間に沸騰しましたが、引き上げられたバラの花は完全に凍りつき、力を入れ握り締めると粉々になりました。

後で先輩が、私に言いました。「今日みたいな工場へ行って、面白いと感じられるかどうかで、監督官という職への適性が判断できる」

幸いにして、私は現場の監督官としての適性があったようです。25年間の現場経験は、人間関係を除き、とても素晴らしいものでした(どこの職場にも、合わぬ者はいます)。

局で会った本省からの出向されてきた方たちの多くは、何か人間関係に疲れたような人たちでした。「労働の現場」で時を過ごしてきた監督官と、大きな組織の中で人間関係に揉まれてきた方たちとは、まったく仕事に対する姿勢が違いました。

前述の本省で働く方々の長時間労働に関する記事を読んで感じることは、「好奇心をもって事の本質を捉え、社会のためにその問題を解決していく」ことを心がけている人が、「長時間労働」と「忖度」の中で、その力が発揮できないのではないかという危惧です。

志のある者に、働きやすい環境を与えて頂きたく思います。