在宅勤務を考える

(桜町陣屋・栃木県真岡市、by T.M)

「在宅勤務中にコロナに罹患したら労災保険の適用がありますか」

同じ事務所の女性事務員から、こんな質問がありました。私は、質問に答えられる知識がなかったのですが、旬の話題としてブログに取り上げるにはちょうどいいテーマだなと思いました。そこで、早速私の知恵袋であるY氏に電話をして尋ねてみました。Y氏は、現役の某労働基準監督署の労災課長です。

Y氏:(電話に出た時は不機嫌そうでした)家に帰ってきてまで、何で仕事の質問に答えなきゃいけないんだ。今、酒飲んでるんだ。
私 :まあ、そう言うな。先日、おごってやっただろ。

(注)私は、彼の職務の「利害関係者」ではないので「おごって」やっても、国家公務員倫理法には抵触しません。公務員と飲食に行く場合は、例え友人であっても、そこまで気にしなければいけません。

Y氏:今監督署の労災課の窓口には、毎日これと同じような質問の電話がきていて、戸惑っているんだ。
私 :それで、窓口ではなんと答えているんだ。
Y氏:答えるもなにも、この問題について、本省からはまだなんの具体的な指示はない。だから、一般論を述べるだけだ。すなわち、「業務起因性」があり、「業務遂行性」が認められれば、労災になると答える。

(注)「業務起因性」とは、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいう。「業務遂行性」とは、その災害が労働者が労働関係のもとにあった場合に起きたものであることをいう。

私 :具体的に聞くが、「在宅勤務中にwebカメラを調整していたら、無理な姿勢となってしまい、急に腰に『ギック』と痛みが走った場合」、これは労災となるか?
Y氏:その場合なら、労災になるかどうか検討すると思う。結果がどうなるかは、当然ケースバイケースだ。

私 :では、コロナに罹患した場合はどうだ。例えば現在、在宅勤務を自宅への「直行直帰」の出張と見なしている会社が多い。一気に、在宅勤務まで進んで行ってしまったために、就業規則等の整備が追い付かないためだ。法令を守ろうとする優良企業ほど、そのように苦しい対応をしている。この場合は、理論上は出張先での罹患であることが明白であるが、労災となるのではないか。
Y氏:それもまた検討には値する。だが、どうなるかは不明だな。
私 :不明、不明って、何か頼りないな。明日にでも労災申請があるのかもしれないんだぞ。現場の担当官がそれじゃ困る。
Y氏:うるさい、もう切るぞ。

この友人との会話後に、少し在宅勤務について考えてみました。
在宅勤務っていうのは、多くの事業場で手探りで実施しているのが実情だと思います。私も5月半ばまでは強制的な在宅勤務でしたが、現在は希望制です。講演会の資料作りや安全診断書の作成等をしていました。
在宅勤務中は、毎日朝6時に起きて1時間ほどウォーキングをしてから、8時からパソコンの前に座り、午後4時まで仕事をしていました。午後4時からは1時間ほど、またウォーキングです。私の会社出勤時の労働時間は、現在時差出勤中なので、午前8時から午後4時までなので、会社の勤務時間及び通勤時間に即したラフスタイルを送っていた訳です。

このような在宅勤務の形態に、ふと思いました。
「何か違う。想像していた在宅勤務ではない」
どこが違うのか、整理してみると次のようなことだと判明しました。
「在宅勤務というのは、そもそも量より質ではないか。成果が求められるのではないか。会社の勤務時間に合わせるということは非合理ではないか。」

そんな訳で、在宅勤務の実情についてネット検索してみると、各社様々でした。在宅での業務を会社の就業時間に合わせるように強制している会社もあれば、まさしく質のみを求めていて、時間管理をしていないような会社もあるようです。ただ多くの会社は、私の所属する会社と同じように、従業員をどう管理したらよいのか試行錯誤中というのが現実なようでした。
厚生労働省が作成した「テレワークモデル就業規則」によると、在宅勤務の労働時間というのは、結局通常の労働時間とかわらず「週40時間制」が基本ですが、「フレックスタイム制」「事業場外みなし労働時間」等を取り入れることも可能です。

労働者が「在宅勤務」に期待することは、単に「通勤時間を省略すること」でなく、「育児」や「介護」等と「仕事」を両立させるために、労働時間を自由としたいという期待もあるのではないでしょうか。
「もっと、在宅勤務を自由に!」
「在宅勤務」と「みなし労働時間」と「兼業あり」なんて、労働形態になったら、日本社会も根本から変わるのでしょうね。会社や労働組合のあり方がこれからどうなるのか、少し考えさせられました。

いよいよ、来週から常時定期に出勤します。コロナ禍が理由の時差出勤が2度と発生しないことを祈ります。そして、「自由な労働時間が選択できる時差出勤」が導入されることを希望します。