労働災害が起きました(2)

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(K氏から頂いたものです)

災害の情報は、消防署からもたらされた。
(注) 災害が発生し、救急車が出動した場合、労働基準監督署と警察署へ連絡がされる社会的システムが確立されている。
災害の内容は爆発事故。
なんでも、建設会社の資材置き場で、ガソリンが入れてあったドラム缶をガス溶断していたところ、爆発が起きたいうことで、被災者は2人だが、命に別状はないとのことだった。

私は、その時に物損だけの災害と判断した。
労働基準監督署では爆発事故は、被災者がいなくても、基本的にはすべて災害調査を実施することになっている。

監督署というのは、小さな組織で、災害に対応できる職員は4~5人程度、そして、災害調査には通常3人はどうしても必要。それは、カメラ1名、測定1名、作業指揮及び立会人からの事情聴取1人の割当てである。
私は、他に誰もいなかったので、その災害調査に4月1日に新監として配属されてきた、女性監督官を連れて行くことにした。彼女は、まだ任官1週間目であった。
私は彼女に、災害調査に行くから用意をするように指示したが、作業服はまだ支給されていなかったので、署に置いてあった中古のもので間に合わせ、作業靴もヘルメットも他人のものを借りた。。
私は、似合わない装備を身に着けた、新人の女性監督官の姿を見て、「ヤッパリ、1人で災害調査に行った方が良いのでないか」と考た。

私は、女性監督官に本日の災害調査の主旨をくどくどと説明した。
「いいか、本当は君をつれていきたくないんだ。会社に現場保存をお願いして、後で行くという方法もあるが、被災者のケガが軽いということなので、あまり仕事をストップさせのも悪いので、仕方なく君と一緒に今日災害調査をやる。足でまといになるなよ。君は、コンベックス(巻尺)の端をもって、私のいうとおりに動けばいいんだ。」
さらに私は続けた。
「監督官にとって、災害調査というのは、主な仕事の一部だ。この経験を必要とする業務に、入省1週間目で、私のような経験豊かな監督官と行くことは、ある意味、君の幸運だと思いたまえ。」
私はこの言葉を、後でとても後悔することとなる。