働き方改革について(15)

(横浜橋商店街、by T.M)

3連休の2日目(昨日)に休日出勤しました。オフィスには、私以外誰もいなくて、朝9時から夕方6時まで、昼飯のお弁当を食べる時間を除き集中して仕事をしたら、1週間分の仕事が片付きました。

私が休日出勤したのは理由があります。私の勤務する職場では7~9月の3ヶ月に3日間の夏季休暇が取得できることを、先週事務の方から教えてもらったからです(もっと、前に教えて欲しかった・・・)。そんな訳で予定表をひっくり返しまして、9月の終わりを連休とすることにしたのですが、仕事のスケジュールが大分狂ってしまうので、早めに予定されている業務を終わらせるため休日出勤したのです。つまり、夏季休暇を取得するための休日労働です。(ちなみに、私は現在、残業代をもらえない立場です。)

しかし、これってなんか変ですよねと思っていたら、もしかして「働き方改革」ってこういうことかと思いました。

「働き方改革」はよく分からない概念です。「現代の日本の最大の問題は、少子高齢化。その問題に対処するためには、育児と介護を充実させなければならない。そのため、女性や高齢者の社会進出を求め、労働生産性を高める改革をしなければならない」とここまでは何となく分かります。でも、「だから高プロ制度」という論理展開が釈然としないのです。

ただ、自分が休日出勤していて、「働き方改革」というのは、「働き方」に「多様性」と「柔軟性」を求めることにより、「生産性を向上」させることかなのではないかと思いました。。これなら、「女性・高齢者の社会進出」「正規労働者と非正規労働者の同一労働同一賃金」は説明がつきます。ならば「高プロ」よりも流れてしまった「裁量労働制」のが相応しい気がします。

もっとも、こんな考えをできたのも、「予想外の夏季休暇3日間」という出来事があったから。長時間労働が常態としている職場では、「多様性」も「柔軟性」もある訳ないだろという意見も強いと思います。「働き方改革」を推し進めるに当たっては、過去の労働環境を原因とする「不信感」というものが、最大の障壁になるかもしれません。

 

最低賃金、時給「1198円」

(タンポポと八ヶ岳、by T.M)

東京都の最低賃金は「958円」ですが、ダブルワークをした場合は「1198円」となります。

と言っても何のことは分からない人も多いと思います。労働基準法第38条には次のように規定されているということです。

「労働基準法第38条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」

つまり、主婦の方が、朝8時から午後1時まで(5時間労働)、近所のパン屋さんで、最低賃金でパートタイムをしたとします。その方が、同じ賃金条件で、パン屋さんの仕事の後にクリーニング屋さんで、午後2時から午後7時まで(5時間労働)で働いたとします。この主婦の労働時間は1日10時間となり、1日の法定労働時間8時間を2時間オーバーするので、クリーニング屋さんは、残業時間の割増賃金2割5分を支払わなければならないのです。つまり、最後の2時間の最低賃金は「958円」でなく、「1198円」となります。

(注) 残業代を支払うべきは、後から労働契約を交わした事業主です( by 厚生労働省労働基準局長編「労働基準法コンメンタール」 )

因みに、私が現役の労働基準監督官をしていた時には、この条文を無視していました。だって、非現実的じゃないですか。2件目のパートタイム先にいって、「割増賃金支払え」って言えますか。この条文が一般的に知れ渡ると、現在「割増賃金」をもらっていない労働者が監督署の窓口に殺到する怖れがあります。それはとても解決困難な事案が多いと思います。

さて、「働き方改革」の話です。平成29年3月28日 働き方改革実現会議で決定した「働き方改革実行計画 (概要)」には、次のような記載があります。

「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、 第2の人生の準備として有効。これまでの裁判例や学説の議論を参考に、就業規則等において本業への 労務提供や事業運営、会社の信用・ 評価に支障が生じる場合等以外は合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化。」

「労働基準法第38条」の法遵守の状況を無視して、こんなに簡単に副業を推奨してしまっていいのかと思います。また、「残業代」の件でなく、ダブルワークの労働者の過労死防止対策をどうするのかの問題もあります。何か、こういう話は後回し何ですよね。

もっとも、「働き方改革実行計画 (概要)」には、次のような記載もあります。

「(副業や兼業)の普及が長時間労働を招いては本末転倒。労働時間管理をどうしていくかも整理することが必要。ガ イドラインの制定など実効性のある政策手段を講じて、普及を加速。」

国会で、今までどのような議論がなされたのでしょうか?

 

働き方改革について(14)

(大桟橋に停泊中の護衛艦いずも、by T.M)

「働き方改革」法案が参議院を通過しました。いよいよ施行です。しかし、何でワールドカップのポーランド戦に合わせて採決するのでしょうか。偶然でしょうか・・・

って、偶然のはずはありません。私もこの手を使ったことがあります。役所で情報漏洩がおきたとか、何かの書類を間違って廃棄したとかいう事件については、このような大きなイベントがある日を狙い、こっそりと役所のHPに掲載するのです。

興味のある方は6月28日、29日に更新された各行政機関のHPを見て下さい。どこかの役所で、やばい情報を掲載しているはずです。

映画「空飛ぶタイヤ」を観てきました。ストーリーは次のとおりです。

某大手自動車製造会社が、走行中のトラックの車軸からタイヤが外れるという欠陥商品を作くってしまい、その件についてリコール隠しをしていました。ある日、走行中のトラックから外れたタイヤが通行人と衝突し、死亡事故が発生しましたが、大手自動車製造会社はユーザーである運送会社等の「整備不良」ということで責任逃れを企みます。しかし、関係者の努力により真実が明らかとなるという、実話に基づく物語です。

この事件を捜査する刑事は、最初運送会社を目の敵にしますが、真実が明らかになるにつれ、運送会社の味方をするようになります。そして、大手自動車会社の役員を取り調べている時に、その会社役員は言います。「君にプライドはないのか。整備不良と言っていただろ。」

刑事は答えます。「プライド、そんなもの捨てた。おれは遺体を見ているんだ。」

そう、これが警察官や労働基準監督官の原点です。

もっとも、そのような感性を持ち合わせない、警察官や労働基準監督官、そして検事がいることもまた事実です。

 

 

今週はブログ更新はしません

安全週間を前に仕事が立て込んできました。

明日は会社に休日出勤し仕事をします。そして、会社近くのホテルを予約しているので、そこに宿泊します。午前2時まで、日本ーセネガル戦を観てから、出勤時間ギリギリまで寝ているつもりです。楽しい休日になりそうです。

せめて写真だけでも・・・

(五島美術館、by T.M)

 

 

働き方改革について(13)

(山下公園、by T.M)

映画「30年後の同窓会」を観てきました。しみじみとしたいい映画でした。

舞台は2003年のU.S.A。バーを経営するサルの元に、30年前に海兵隊員としてベトナムで戦った戦友のドクが尋ねてくる。ドクはサルに「イラク戦争で一人息子が戦死した。今から、ドーバー空軍基地まで遺体を引取りに行くので、一緒に行ってくれ」と依頼する。ドクとサルは、戦友のミューラーを尋ね3人で一緒に遺体を引取りに行く・・・

観ていて、なぜか50年前の映画「イージーライダー」を思い出しました。本作は元海兵隊員の物語、一方はヒッピーを描いた作品ですが、主人公たちが、「祖国・アメリカ」を考察するロードムービーとして共通するものがあるように感じました。

余談ですが、この映画の中に、ポーツマスの廃工場が撮影される場面がでてきますが、その工場の壁にポツンと「safty first(安全第一)」という看板が掲示されていて、労働安全衛生コンサルタントの私としては、ちょっと嬉しくなりました。

非正規雇用の無期転換申込権がいよいよ発生します。

https://www.mhlw.go.jp/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/2017/08_01.html

私が、現在注目しているのは、厚生労働省は自分のところで雇用する非正規労働者をどう処遇するかということです。労働契約法の適用がない国に雇用される非正規職員にはこの権利はないということですが、民間企業にそれをしろと言っている厚生労働省がどういう態様をするのかはひどく気になります。私の知る限り、地方労働局には該当する非正規職員は多数います。

また、全労連という共産党系の労働局内の多数派労働組合(地方労働局では組織率90%以上です)はどう動くのでしょうか。興味があります。

こういうことを、国会で論戦してくれないでしょうか。