違法な36協定

(西伊豆・松原公園の花時計、by T.M)

本題に入る前に、自分のことを少し話ます。

60代後半まで後1年。残りの自分の人生のことを考えてみましたが、できるだけ長く何らかの形で「世間様」と関わっていたいと思いました。

私にできることは何だろうと思ったら、それは「労働問題のコンサルティング」だということに気付きました。

現在、ボランティア(無料)で労働相談に答えてます。興味のある方はメールを下さい。

obaraconsultant@jcom.zaq.ne.jp

さて、本題です。

NHK 3月8日

コンサルティング会社大手の「アクセンチュア」が社員に違法な残業をさせていたとして東京労働局は8日、会社などを労働基準法違反の疑いで書類送検しました。

書類送検されたのは、東京 港区のコンサルティング会社大手の「アクセンチュア」と労務を担当するシニアマネジャーです。

東京労働局や会社によりますと去年1月、ソフトウェアエンジニアとしてプログラミングなどの業務を担当する男性社員1人に1か月140時間余りの違法な残業をさせていたとして労働基準法違反の疑いが持たれています。

労働基準法では1日8時間、週40時間を超えて働かせ残業をさせる場合には労使で協定を結ぶ必要がありますが、労働局によりますと、「アクセンチュア」では協定を結ぶための手続きに不備があったということです。また、ほかの複数の社員についても違法な残業が確認されたということです。

「アクセンチュア」は、NHKの取材に「深くお詫び申し上げます。関係法令を順守し働き方改革を進めるために取り組んでいきたい」とコメントしています。

この事件のポイントは「ひと月140時間の違法な残業をさせていた」こともそうですが、

「協定を結ぶための手続きに不備があったということです」

ここが大事です。

少し解説します。「時間外労使協定」(労働基準法第36条に基づく協定なので、通称“36協定”と呼ばれています)は、使用者と労働者代表が締結するものです。

 (注)「過半数労働者を代表する労働組合」がある場合は、36協定は使用者と労働組合が締結する。

36協定は「残業が1日×時間、ひと月×時間」というような内容を協定するのですが、この労使協定が締結されていなければ(あるいは今回のように“無効”であれば)、「1日8時間、週40時間」の労働基準法の法定労働時間を1時間でもオーバーする残業をさせた場合は法違反となるのです。

さて、今回の送検に係る「協定を結ぶための手続きに不備」とはいったいなんでしょうか。それは私は、

労働者代表が適正に選出されていない36協定

であったことだと思います。

私がこのようなことを思うのは、そのような会社を多数見てきたからです。

労働基準法が適用され労働組合がない会社において、「36協定の従業員代表が選挙等で選出されている会社」がどれほどあるでしょうか? このブログを読んでいる方が会社員だとしたら、あなたは「36協定の労働者代表が誰かご存知ですか」?

今回の東京労働局の送検は、「無効な36協定の違反」を送検した訳です。これはとてもレアなケースです。厚生労働省が発表している「労働基準法等違反事例」で確認したのですが、「36協定の範囲を超えて残業させていた」「36協定を締結せずに残業させた」という事例はあっても、「36協定が無効であった」というケースはこの一例のみです。

労災隠しと一緒で、「違法な36協定」の存在はとても悪質だと思います。今後も労働局も、このように「違法な36協定」を作成する事業場を厳しく監督していって欲しいと思います。