公務員のサービス残業

(甲州街道小原宿本陣のひな飾り、by T.M)

末松文科省大臣 5月17日定例記者会見

万が一、校長が虚偽の記録を残させるようなことがあった場合には、信用失墜行為として、当然、懲戒処分の対象ともなり得ることを明示をいたしてございます。これは重要なポイントです。(中略)

私も事実確認はしていないんですけれど、7時50分に学校に到着して執務を始めているということになっているんですけど、実際は7時20分に来ているみたいなお話も聞いたことがございます。同時に、事実確認はしていませんけれども、何気なしに、要は、タイムカードでこの時間で帰ることになっていますと。タイムカードを押します、最近はIDカードなんかでぴっという形でやるんですけれども、でも、現実はやっぱり、仕事を持って帰っているという、これってやっぱり、そういうつじつまを合わせるような、この状況では駄目だと思いますので、そういう意味では、内容においても、きちんと時間が守られるということ、このことを念頭に置かなければならないと思っていますけれども、ある面では、先生方が、そういうことをやっておられるとしたらそれ自体ですね・・・

「事実確認していない」って、全国の労働基準監督署の「申告監督」の記録を見て欲しい。私立学校の労働時間の改ざん事件なんて、多分何件もでてくると思う。(公立学校には、監督署は「臨検監督権限」がない。)

しかし、「校長が信用失墜行為で懲戒処分」とは、よくぞ言ってくれました。はっきりとそう言うことで、教育の現場はひきしまると思います。

そんなことを書いていたら、昔私が所属した地方労働局のことを思い出しました。その地方労働局では、多くの職員が「年間の目標」として、「ひと月○〇時間以上は残業しない」ことを挙げていて、それが人事評価の基準となっていた。

また職員の上司は、次のような目標を掲げ、さらに上の管理職が査定していました。

課長だと「当課の残業代は〇〇以下とする」、部長だと「当部の残業代は○〇以下とする」

さて、これは労働時間短縮の好事例のような気がしますが、実は違います。ポイントは2つです。

(1) 部長・課長の管理職は、「残業〇〇以下」としないで、「残業代〇〇以下」としていること。この「代」がつくか、つかないかは大きな違いがあります。要するに、管理職は、職員の「残業時間」ではなく、「残業に係る予算」を目標としていることです。

(2) 管理職の「残業代を予算どおり」にするということは、管理職が職場の業務量を減らすことを手段とすることでなく、職員の「残業を〇〇時間以内にする」という自主行動を促し、それを人事ひょうかすることを手段とすることです。

要するに、「職員が残業代を一定額以上申請しなければ、管理職が良い評価をする」というシステムを作っている訳です。だから、私が所属していた地方労働局は、私の在職中はサービス残業ばかりでした。

以前、大阪府知事を橋下徹氏がしていたところ、「職員はどれだけサービス残業をしていると思っているんだ」と嚙みついた女性職員がいましたが、多分当時の地方公務員の職場でも、この地方労働局のような人事管理が行われていたと思います。

こんなことは、現在の霞が関では行われていないのかなと、文科大臣の発言を読んで思いました。

旭川イジメ事件

(中伊豆ワイナリーのぶどう畑、by T.M)

文春オンライン4月17日

昨年3月に廣瀬爽彩(さあや 当時14歳)さんの遺体が見つかって1年、そしてイジメを受けてから3年――。世間の注目を浴びた“凄惨なイジメ事件”が大きな山場を迎えた。2022年4月15日、イジメの有無の再調査を行ってきた第三者委員会は「イジメとして取り上げる事実があった」として爽彩さんが受けた「6項目の事実」について「イジメだった」と認定、同日、記者会見を開き、その内容を公表した。第三者委員会から「6項目の事実」について報告を受けた爽彩さんの 母親は文春オンラインの取材に複雑な胸中を冒頭のように語った 。

(以後2021年4月の記事の再掲となる)

イジメ被害者の方の御冥福を祈ります。御遺族の方が、一日でも早く癒されることを祈ります。

旭川のイジメ事件については、何らかの進展があったようです。この問題は、被害者の女子生徒の自殺の後で、学校側が「イジメ」の実態を隠蔽していた等の不祥事が発覚して問題となっています。

私はこの問題について、一番議論されなければいけないことが議論されていないような気がします。それは「教師の労働時間と義務」の範囲です。文春オンラインには、この事件について、次のような記事もありました。

「担任の先生が(爽彩さんの母親からイジメの)相談を受けたときに『今日わたしデートですから、明日にしてもらえませんか』って言ったというのが報道で出ていますよね。小耳に挟んだ話ですけど、先生がお友達にLINEで『今日親から相談されたけど彼氏とデートだから断った』って送ったっていう話をちらっと聞いたんですよ。本当に腹が立ちました。そういうことも言ったかどうか全部はっきりして欲しいです」

 当時の担任教師は前に立っていた同僚の後ろに隠れるようにして、下を向くだけで、一言も答えない。代わりに校長が「いまの質問にここで即答はできない。申し訳ございません。検討します」と答えた。

この記事から判明するように、世間の常識では、「生徒のイジメ相談を無視して、デートに行った教師」を非難するようです。

この事件について、その事実関係は判明していませんが、それがもし事実だったとして、学校側は、職務怠慢として、この教師を処罰できるでしょうか?

労働法の観点から申し上げるなら、この教師は何も悪いことはしていません。勤務時間外なのに、なぜ生徒の相手をしなければならないのでしょうか?

でも、この時点で教師が真摯に生徒の相談に乗っていたら、最悪の結果に至らなかったかもしれません。ならば、「良心のある人間として、すぐに生徒の相談に乗るべきだった」と思う人が大多数であると思います。

だからこそ、「教師の時間外労働と責任の範囲」を「問題として認識」し、解決に向かって動かなければなりません。

(多くの方が、その認識されてなくても、「教師は24時間、生徒のために尽くすべきだ」と考えています。)

これは、学校の管理する立場の者がなんとかしなければならない問題です。私は、人件費が多くなっても、教師の数を増やし、「複数担任制」等を検討すべきであると思います。

このイジメ問題を解決するためには、教師を責めるだけでなく、教育システム全体の改革が必要ではないでしょうか。

赤木さんと水道料金

(小田原の皆春荘、by T.M)

森友学園の裁判のことを考えてたら、まったく関係のない、以下の事件の措置が参考になるのではないかと思いました。

読売新聞 12月4日

業務上のミスなどで生じた損害について、自治体が職員個人に賠償を請求する例が増えている。住民による行政監視が強まっていることが背景にあるとみられ、民間企業よりも厳しい対応が求められているようだ。

(略)

 兵庫県では昨年11月、県庁の貯水槽の排水弁を約1か月閉め忘れたことで水道代約600万円が余分にかかったとして、県が50歳代の男性職員を訓告処分にし、半額の約300万円の弁済を請求。職場でカンパを募ることも検討されたが、職員は「迷惑をかけられない」と辞退し、昨年12月に全額を支払った。

(略)

私は、こういう措置が好きでありません。職員が行ったヒューマンエラーについて、その職員が弁済することはあってはならないと思います。なぜなら、上記の事件は「損害賠償事件」ですが、これが「死亡労災事件」でしたらどうなっていたでしょうか?

同じバルブの閉め忘れであっても、水道栓なら「損害」が発生するだけですが、これがもし「化学工場でのバルブの閉め忘れ」であったなら、「爆発及び死亡災害」に発展することもあります。そのため、化学工場では幾重ものチェック体制及び安全装置を用いてバルブの閉め忘れを防いでいます。

上記の兵庫県のケースですが、兵庫県は「化学工場が行っているようなバルブの管理」を行っていたのでしょうか。「バルブの閉め忘れ」の責任を個人の労働者に問うということは、「組織的なバルブの開閉の管理」を行っていなかったことを認めていることです。

こんなことを認めてしまったら、「死亡労働災害」が発生した時に、「個人のヒューマンエラー」を理由に、労災の責任を一労働者に押し付ける企業もでてきます。実際、そういう企業はありました。

(注) 事故責任が100%個人のある労災事故を私は知りません。例え、トラック運転手が酔っ払い運転で事故を起こしたとしても、「管理責任」は企業にあると思います。もっとも、上記の兵庫県の事例も、「管理責任」は認めていて、「実際の損害額の半額」を労働者に請求しているようでした。

この兵庫県の事件のことを考えていたら、森友事件で自殺した財務省の元職員の赤木俊夫さんのことが頭に浮かびました。財務省は

「赤木さんが強く反発した財務省理財局からの決裁文書の改ざん指示への対応を含め、森友学園案件に係る情報公開請求への対応などのさまざまな業務に忙殺され、精神面と肉体面に過剰な負荷が継続したことにより、精神疾患を発症し自殺した」

ことを認め、赤木さんのご遺族に約1億円の損害賠償金を支払うそうです。これで裁判は終了です。

でも、兵庫県の「バルブ閉め忘れ事件」を参考とするなら、「赤木さんの事件」はまだ終わっていないことになります。

「赤木さんのご遺族に支払う1億円」については、税金から支払うのではなく、「赤木さんを死に追いやった」財務省職員が「個人的に弁済」するべきです。ですから、国は赤木さんのご遺族の方に1億円を支払った後に、その費用を「職員個人」に対し求償をすべきです。そして、誰にいくら求償したのか、及び、その理由を明らかにすべきです。

通常なら私は、「労働者」側に立ちますが、「上に忖度し、公務員としての倫理を失くし、部下に不法行為を押し付けた」財務省の職員は、それが事実なら「100%の責任を労災事故」に対し持つと思うから、同情に値しません。そしてそれが事実でなく、「忖度」でなく「命令」であったなら、そのことを明らかにするべきでしょう。(そうすれば、「損害賠償」に応じる必要はありません)

赤木俊夫さんのご冥福をあらためて祈ります。

派遣の最低賃金(2)

(栃木市の蔵、by T.M)

先週の続きです。

「派遣労働者の賃金」について、「同一労働同一賃金」の原則の元に、派遣先労働者の賃金水準に合わせようという制度は、本当に素晴らしいものだと思います。なんでも、派遣社員に退職金を支払うべきことまで決めているとも聞きます。でも、その実際の運用については、少し首を傾げたくなります。本当にこれで実効性はあるのでしょうか?

私が、第一に思ったことは、同じ地方労働局の中で、「需給調整事業部」と「労働基準部」は、まったく連携がとれていないということです。

もっとも、私がこんなことを言うと、「おまえが言うな。実情をよく分かっているだろう」と怒られそうです。そうです、需給調整事業部(あるいは、「需給調整事業課」)は、そもそも「職業安定所」(ハローワーク)の縄張りであって、「労働基準監督署」の職員には敷居が高いのです。

ですから、定期的に人事をいじくってみて、基準部サイドから「需給調整事業部」に異動をさせるのですが、そんなことで「縦割り行政」がなくなるはずはありません。

でもこれって、本当に非効率ですよね。労働者に対する「賃金不払い」の専門家は労働基準監督署の監督官のはず。その知識と経験を生かさない手はありません。

元監督官の私から言わせると、需給調整事業課のことはよく分からないのですが、現場において賃金不払いの指導をするのでなく、許認可権を背景に、事業場が提出してきた書類をみてのみ指導しているんではないかと思います。

前回のブログに書きましたが、派遣会社は次の賃金のどちらかの額を選定して労働者に支払わなくてはならないそうです。

①  派遣先の労働者との均等・均衡方式をとる

   労使協定を交わし、厚生労働省職業安定局長が示した、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」以上の賃金を支払う

そして、結局①を選択する派遣会社はなく、②の方式をとるのが多数ということでした。それは、派遣会社は「賃金の高い大企業」に労働者を派遣をしていることも多いので、派遣先の賃金に合わせる訳にはいかないという理由です。

因みに、私が計算してみると、この「厚生労働省職業安定局長が示した、『同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準』以上の賃金」とは、東京都の事務職労働者では「時給1240円」でした。

私が、一番違和感を覚えるのは、この「労使協定」という言葉です。

派遣会社で締結される「労使協定」の協定当事者を選任することは物理的にとても難しいことです。だって、派遣スタッフはそれぞれに違う職場で働いている訳ですから、どうやって自分たちの代表を選ぶことができるのでしょうか。

Webで調べると派遣会社は、民主的にその代表を選ぶ努力をしているようです。でも、結局は、派遣スタッフではなく派遣会社のマネージャークラスが選任されている実情があるようです。というより、派遣スタッフにしてみれば、顔がまったく分からない同僚より、仕事を取り持ってくれるマネージャーでいいやという感覚になってくるんでしょうね。

このように取扱いに難しい「労使協定」というものに委ねられている、「同一労働同一賃金」は、本当にその本来の意図することが実現できるのか、心配になります。

派遣許可をとってないような事業主については、強制的に適用となる「派遣元最低賃金」を設定しておき、違反があった時は労働基準監督署の監督官にまかせることが、現実的ではないかと思います。

派遣の最低賃金

(京急油壷マリンパークのコツメカワウソ,by T.M)

なんかブログネタがなくて困る週もあれば、何を選択したら良いのか迷う週もあります。以前から、このブログに取り上げてきた「教師の残業代」について、地裁の段階ですが司法判断が下されたようです。その話題について書こうかと思ったのですが、今回は別の話題です。

最低賃金が話題になることが昨今多くなっています。なんでも隣の国の最低賃金が我が国を抜く可能性もある噂されていますし、某政党は選挙公約に「最低賃金1500円」なんて掲げています。

私も最低賃金には思うところがあります。それは、「派遣労働者の最低賃金を産業別最低賃金」として決定してほしいということです。派遣の方の処遇はとても不安定なのが現実です。私のいる組織でも、このコロナ禍で派遣の方が最初に契約解除となりました。せめて、処遇が不安定な分、派遣労働者に他の業種より高い賃金を支払われるべきだと思っています。

普通に話題となる最低賃金とは、各都道府県別の「地域最低賃金」のことです。20年くらい前までは、業種別に最低賃金が設定されていましたが、年々その数は少なくなっています。でも、まだ一部残っています。

https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/seido/kijunkyoku/minimum/dl/minimum-19.pdf

 この「産業別最低賃金」を復活させ、「派遣業」に適用させればいいと思います。

 この意見については、労務の専門家から次のような反論がくると思います。「派遣労働者の最低賃金の適用は、『派遣先』に適用される最低賃金だから、『派遣元』の業種である『派遣業』に対し、割増の最低賃金を設定しても意味はない」

 そういう指摘には次のように反論させてもらいます。「そもそも、20年くらい前までは、派遣労働者に対しては、『派遣元』の最低賃金が適用されていた。しかし、派遣先の産業別最賃が高額であるケースが相次いだので、『派遣先』の最低賃金を適用した。しかし、私はその出発点が間違っていたと思う。その時に、派遣先の高額な『産業別最賃』を適用できるようにすることより、派遣元の派遣業に『より高額な産業別最賃』を設定すべきだった」

『派遣元』の業種の最低賃金を適用することは、労働保険の料率の考え方から合理性があると当時は説明を受けた記憶があります。もちろん、これを「派遣元」から「派遣先」の適用の最賃に変更したことは、「派遣労働者に派遣先の高額な産業別最賃」を適用させたいという判断があったことです。でも時を経て、そちらの方がより合理的であるという別の判断だでたのなら、元に戻すことも可能であると思います。

 さて、令和2年から派遣法で、「同一労働同一賃金」の観点から、「最低賃金らしきもの」を事業場に求めていることを最近知りました。私は「労基法」「労働安全衛生法」については、飯のタネにしてますが、「派遣法」については門外漢なので少し調べてみました。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html

要するに、派遣法は派遣会社に次のことを求めています。

「派遣労働者には派遣先の労働者と同じくらいの賃金を払え。その方法としては、次の2つのうちのどちらかを選べ」

結局①を選択する派遣会社はなく、②の方式をとるのが多数ということでした。

それはでも、当たり前のことです。派遣会社は「賃金の高い大企業」に労働者を派遣をしていることも多いので、派遣先の賃金に合わせる訳にはいかないのです。

「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」とは次のとおりです。

https://www.mhlw.go.jp/content/000817351.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000817353.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000817358.pdf

この、「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」について、某地方労働局監督課に電話して、こんな質問をしました。

「派遣労働者の同一労働同一賃金について、例えば労使協定で時給1500円としているところ、労働契約を1200円として、それだけしか払わなかった。この場合、刑事罰を伴う労働基準法第24条違反(賃金不払い)が成立しているか」

すると、監督課の職員は「同一労働同一賃金のことは、雇用・均等部に聞いてくれ」と言いました。雇用・均等部に電話すると、「派遣労働者のことは需給調整事業部に聞いてくれ」と言いました。需給調整事業部に電話をすると、「賃金未払の件は監督課に聞いてくれ」と言いました。ここで、私は少し強く主張しました。「たらい回しにしないでくれ。私の質問自体に何かおかしいところがあるのなら教えて欲しい。」そうすると、「調べてから電話する」とのことでした。

電話も待っていると、かかってきたのは監督課某監察官からでした。そしてこんな回答を得ました。

「派遣労働者の同一労働同一賃金について、例えば労使協定で時給1500円としているところ、労働契約を1200円として、それだけしか払わなかった。この場合、刑事罰を伴う労働基準法第24条違反(賃金不払い)となる。ただし、そのようなケースでは需給調整事業課が一番最初に対応する。」

私は、その返答に驚きました。

「このケースで賃金不払いの法違反が発生するということは、実質的に、派遣労働者に対する特別な『最低賃金』が設定されていることになるのではないか。労働者が労働基準監督署に、賃金不払いで申告することが可能な訳だから、3年間の遡及支払いを監督署が命じるケースも想定される。労災補償等の平均賃金が変わってくる可能性もある。こんな大きな問題について、なぜ私の質問をたらい回しされるほど、労働局の職員は関心がないんだ。」

監察官は、私の問いかけにこう答えました。

「まだ、大きな問題はおきていない。問題がおきたら本省と協議する」

私は最後に言いました。

「大きな問題が起きていないということは、この実質的な『派遣労働者の最低賃金制度』の概要が周知されていないからだ。その証拠に、私の質問について最初の段階で即答できるものがいなかったじゃないか。私は、この制度は派遣労働者の処遇改善に役立つ非常に良い精度と思う。需給調整事業部と基準部が合同で研修を行う等が必要があるのではないか」

まあ、こんなふうに言いたいことを言って電話を切ったのですが、しばらくたってから、もう1回監督課に電話をして次のことを尋ねました。

「派遣登録を受けずに違法派遣している企業の派遣労働者が時給1200円だったとする。派遣先の同一業務を行う労働者の時給が1500円だったとする。この場合は、差額300円について、労働基準法24条違反と言えるのか」

すると、監督課の答えは次のとおりでした。

「労使協定等で明記されていない場合、当初の労働契約の時給1200円となり、労基法第24条違反は成立しない」

この答で、私はやっとこの「同一労働同一賃金」の派遣法の主旨を理解しました。やはり「最低賃金」ではありませんでした。そして、需給調整事業課と監督課の、賃金未払問題への棲み分けの様子が分かりました。

そして、この派遣法の「同一労働同一賃金」について、「目指すところは素晴らしい法律」であるが、実務上はかなり問題があるなと思いました。

(続く)