JAL機事故

(ビッグアップルと富士山・山梨県立美術館、by T.M)

明けましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いいたします。

新年早々から、大変な日々が続いています。元日に北陸地方で東日本大震災を彷彿させる大地震・津波が発生し、その翌日には北陸地方に支援物資を届けるはずの海保の航空機が羽田空港でJAL機と衝突しました。JAL機の乗客・搭乗員は無事でしたが、海保の職員5名が殉職されたことは、皆さんご存知のことだと思います。

私は、安全コンサルタントとして、今回の海保・JAL機の衝突事件について、思うところを書きます。なお、これから書くことは、今後新たな事実が発見されることによって、後日訂正が必要になるかもしれません。

東日本大震災の時に、現地に、仕事として行ったことがありますが、今回の北陸派遣について、被災した海保の職員の方たちは、心に期し現地に向かったと思います。それが今回の事故により挫折し、御本人様は元より、ご家族・関係者の方々の無念さはどれほどのものかと思われます。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。

今回の事故は、概要は単純です。離着陸に使用される滑走路で、本来ならば時間差でその業務を行わなければならないのに、海保の航空機とJAL機が同時に存在したことにより、衝突事故が発生したものです。その原因として、まず第一に考えられるのが、ヒューマンエラーです。ヒューマンエラーを引き起こした者としては、次の3者が考えられます。

  • JAL機の機長
  • 海保の機長
  • 管制官

多分、今後はこの3者の責任問題が浮上してくるでしょう。もしかしたら、刑事事件にまで発展するかもしれません。しかし、ヒューマンエラーについて、それほどきつく対処することについては、私は反対です。なぜならば、人は必ずヒューマンエラーをするものだからです。叱って、ヒューマンエラーを防止できるなら、とっくにそんなものなくなっています。

では、ヒューマンエラーに人はどう対処すれば良いのでしょうか。

まずは、ヒューマンエラーをなくす個人的な努力が必要です。ひとつは訓練です。そして、飲酒や高齢による注意力の低下を考慮することです。指差し呼称、命令の復唱等もこの範疇に入ります。

次に複数の者のチェックです。一人の人間が100回に1回ヒューマンエラーをするとしたら、ダブルチェックによって、100の2乗の10000回に1回までエラーをなくせます。3人によるトリプルチェックでは、1000000回に1回にまで、確率が下がります。今回の事故の原因究明については、その複数チェックがどうなされていたかが焦点になると思います。

最後に、機械的な安全装置がどう動いたのかが問題となります。専門用語では、フェール・セーフとかフールプルーフとか言うのですが、これはどうだったんでしょうか。滑走路に誤進入を防止する目的で滑走路手前に設置されている「ストップバーライト(停止線灯)」が事故当時、メンテナンス中で運用を停止していたそうです。もし、これが本当だとしたら、とんでもないことだと思います。国土交通省によると、「使用基準には該当していなかった」等の言い訳をしているそうですが、

この機械を使用していれば、今回の事故はなかった

ということになれば、私は最大の事故責任は

安全装置を外して、機械(滑走路)を使用させた

空港管理者であると思います。今後の調査に期待します。

TDL

(オンブバッタ・山梨県清里、by T.M)

12/26 時事通信

東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)でキャラクターの着ぐるみを着てショーなどに出演していた元契約社員の30代女性が、神経や血流障害により肩や腕が痛む「胸郭出口症候群」を発症したのは、運営会社の安全配慮義務違反が原因として、「オリエンタルランド」に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、千葉地裁であった。

 岡山忠広裁判長は請求を棄却した。

 訴状などによると、女性は2015年2月に入社し、重さ10~30キロの着ぐるみを1日3~6時間ほど着用してショーやパレードに出演。17年1月に胸郭出口症候群と診断され、同年8月に労災認定された。

 女性側は、トレーナーに上半身の痛みやしびれを複数回訴えたが、会社側はそのまま業務を継続させたなどと主張した。岡山裁判長は、トレーナーは外部の委託業者だったとして「会社への申告と同一視できない」と指摘。業務軽減が必要なほどの痛みだったと会社側が認識できたとはいえないと結論付けた。

TDLの着ぐるみを着た労働者の労災については、今年の3月に地裁で判決がでて、会社側が負けて、確か高裁に控訴中だと思ったら、この判決です。よくよく、調べて見ると別の事件でした。ということは、TDLは複数のこのような裁判を抱えているということでしょう。だとしたら、この判決理由については解せないものです。

労災発生の状況に違いがあるといっても、同じ労働をしていたものが何人も事故を起こすということは、

着ぐるみをきて行う業務

については、災害の発生の可能性が高いということになります。それなのに、記事の中にあるように、「労働者が異常を報告したトレーナーが外部の委託業者だったから会社側が認識できなかった」ということは、それでは危険な作業に従事する労働者は、誰に異常を報告したらよかったのかということです。

この論法が通じてしまうなら、会社組織をよく知らない契約社員が、体調の不良を自分の業務を管理している者に訴えたとしても、会社は「体調不良を訴えた相手が自社の社員でないので、自分たちは知らなかった」として、逃げてしまいます。

そもそも、この「トレーナー」という方はどんな立場なのでしょうか。TDLと労働契約を結ぶ労働者が、「業務を起因とした体調不良」を外部の委託業者に報告していることが異常なことです。

事実関係がよく分からず、判決の当否については判断できませんが、裁判所はその当たりを突っ込んで欲しいし、報道ももっと詳細なものが知りたいです。

さて、本日は大晦日。みなさん、よきお年をお迎え下さい。来年も本ブログをよろしくお願いします。

着替え時間

(最近のマイブームかじるバターアイス、by T.M)

12/22 神戸新聞

制服に着替える時間が労働時間に含まれるとして、兵庫県内に勤務する日本郵便(東京)の従業員ら44人が同社に対し、計約1500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、神戸地裁であった。島岡大雄裁判長は着替えが労働時間と認め、計約320万円の支払いを命じた。

 判決理由で島岡裁判長は、職員が制服の着用や郵便局内の更衣室で着替えることを義務付けられていたと指摘。更衣時間は同社の指揮監督命令下に置かれていたと判断した。

 一方、2016年には同社グループ企業の社員が、着替えにかかった時間分の未払い賃金の支払いを求める訴訟を起こし、ほぼ全額を支払う内容で和解が成立していたことを受け、原告側は今回の未払いを「不法行為」と主張していたが、「不法行為が成立するような故意があるとはいえない」と退けた。

 日本郵便は「(請求棄却の)主張が認められず、控訴を予定している」とコメントした。

 判決によると、原告のうち31人は神戸市や高砂市など県内の郵便局に勤める正社員や再雇用社員ら。17年12月~20年11月、着替えにかかった時間分の賃金相当の損害金として1人当たり5万~42万円を求めていた。

何か裏があるのかな、この事件。「着替え時間は労働時間」、少し労働問題を齧ったことがある者なら、これは当たり前のこと。「三菱重工長崎造船所事件の最高裁判例」を、労務担当者が知らないはずはない。

それでも、日本郵便が頑なに争うということは、新聞記事に出ていない事実があるかもしれない。

ここでおさらいです。次のケースでは、「着替え時間」は労働時間となります。

  • 企業が制服を定めている。
  • 企業が制服の使用を労働時間内での着用のみ認めている。(通勤に使用は不可)

ここで問題になるのは、次のようなケースです。

  • 業務中について、作業服に着替えないと着衣が汚れる
  • 企業は、制服を支給しているが、仕事中にその着用は強制しない。

つまり、こういうことです。

「ウチは着替え時間を労働時間とはしません。着替えなくともけっこうです。衣服が汚れることを本人が気にしないなら、それでかまいません」

企業がこれを主張したら、労働基準監督署は何もできません。

また、こんなことを主張する人もいます。

「私は朝、ジョギングをして会社に行きます。会社ではスーツにネクタイ着用です。無言のルールでそう決められています。ジョギング姿で業務をしたら、上司から怒られるでしょう。だから、スーツに着替える時間を労働時間として認めて下さい。」

これは実際にあった事例です。

長時間労働の送検

(葛西臨海水族園エントランスの噴水池、by T.M)

昨日、神奈川県社会保険労務士会安全衛生部会の研修会に講師として出席しました。「労働安全衛生マネジメントシステムと化学物質のリスクアセスメント」について話をしたのですが、鋭い質問が飛び、ヒヤヒヤしながら答えました。部会のレヴェルの高さに圧倒されました。

部会の後の懇親会では楽しく過ごさせて頂きました。この場を借りて、御礼申し上げます。

ありがとうございました。

佐賀新聞 12月1日

武雄労働基準監督署は1日、上限を超える時間外労働(残業)をさせたとして、労働基準法違反の疑いで鹿島市の税理士の50代男性を書類送検した。罰則付きの時間外労働の上限規制が設けられて以降、適用されたのは佐賀県内で初めて。

 書類送検容疑は、2月1日~3月31日、30~50代の女性事務員4人に、1カ月で100時間以上、2カ月平均で80時間を超える時間外労働と休日労働をさせた疑い。

 同労基署によると、2カ月平均の最長で158時間45分の残業があった。4人の健康状態に影響はないという。

 2019年の働き方改革関連法の施行に伴って労働基準法が改正され、残業時間の上限は原則として「月45時間かつ年360時間」と明記された。当初は大企業のみが対象となり、20年4月に中小企業まで拡大された。建設業や自動車運転業などは24年から適用される。

これ、けっこう珍しい書類送検ですよ。私の現役のころでは考えられません。

何が珍しいって、労働時間の違反のみっていうのは、過労死がらみの送検ぐらいしかなくて、通常は残業代不払い(労基法第37条違反)をセットで行うものです。

 上記の記事をそのまま読むと、

  • 労働時間の把握はされていた
  • 違法の残業であっても、それに対する残業代は支払われていた

ということになります。そして、2月、3月は確定申告時期で税理士事務所の一番の繁忙期です。その時期を捉えて送検というのは、ちょっと厳しいなと感じます。なんか裏があったのかとも思います。

  • 過去に労働基準監督署から何度も是正勧告を受けていた
  • 従業員からタレコミがあった
  • 新聞記事にはないけど、実は残業代不払いもあった
  • 36協定に嘘が記載されていた
  • タイムカード時間記録が改ざんされていた
  • 事業主が過去に監督署と揉めた。等々

これらの事情がなく、従業員も多忙な季節であることは理解していて、事業主がそれなりにフォローしていて、ただ長時間労働であるというだけで送検されるとは、けっこう厳しい時代となりました。

(ただし、トラック運転手と過労死事案は別。)

お休みです

(上州武尊山の紅葉、by T.M)

本日はご訪問を頂きましてありがとうございます。

昨日から、喉がとても痛く、声がでないようになりました。

体調不良のため、今週はブログ休載とします。