(法体の滝、いつもの人の寄贈)
彼女は、オープン1週間前から、その店舗で働きました。彼女の職名は「店長」でした。彼女の他に4名の従業員(いずれも女性)が働くことになりましたが、店長といっても、彼女に人事権限は何もありません。一応、彼女だけが「正社員」で、他の人は「パート」なのですが、他の人の雇用等については、一切口出しができないようになっていました。
彼女が自分の部下のパートさんから苦情を言われたのは、開店から2週間ほどたってからでした。「雇入通知書」を会社からまだもらっていないと言うのです。そこで、彼女も初めて、自分も「雇入通知書」をもらっていないことに気付きました。
(注)「雇入通知書」とは・・・労働契約締結時に事業主が交付を義務づけられている書類。賃金額、締切日、支払日、支払方法等が記載されている。様式自由。労働契約書がその替わりとなる。
彼女は、店長として本社にそのことを連絡しました。すると、本社の担当者の返事は「余計なことは言うな」というようなものでした。店長といっても、彼女の仕事は、売上げを報告することと、パートさんのローテーションの確認と、在庫管理だけでしたが、パートさんへの責任を感じ、思い余って、労働基準監督署に相談をしました。
彼女はまず労働基準監督署に手紙を一通書きますが、実を言うと、この彼女の手紙が、後に彼女の窮状を救うことになります。
彼女の労働基準監督署に届いた手紙は、匿名でなく、本人の名前・連絡先が書いてあったため、すぐに臨検監督を実施する用意を整えました。担当官は私になりました。
(注)監督署への手紙は、ほとんど匿名のことが多い。匿名の場合は、「行く・行かない」は監督署まかせである。「石綿が入っている建物が、許可なく壊されている」等の命・健康の係る情報なら、多少あやしくても直ぐに動くが、誹謗・中傷しか記載されていない匿名情報は無視される可能性もある。実名ならば、まず間違いなく動く、もしくは動かない場合は情報提供者に説明の連絡が行く。