それでも、京急だ

(京急新町検車区、by T.M)

10日程前に、踏切でトラックと衝突事故を発生させた京浜急行には、思い入れがあります。

私は、少年時代から青年期にかけて京急の沿線の街で育ちました。そして、監督官になって最初の9年間は日本全国を異動しましたが、今から25年前に京急・上大岡駅からの徒歩圏内に住むようになり、現在に至ります。ですから、61年間の人生のうち、約50年間京急を利用してきたことになります。

あの赤い電車には、高校時代を含めた青春の思い出がたくさんあります。そして、監督官時代に、ちょっとした事件で京急関係の会社の方と面談する機会を持ちましたが、その職業意識の高さと誠実さには、敬服させられたものでした。

京急は、ほとんど遅れません、京急は、めったに止まりません。どの鉄道会社と比べても、公共交通機関としての役割を果たしていると、毎日通勤に利用している私は思います

そんなに、素晴らしい京急であるから、労働安全衛生コンサルタントとして、私は申し上げます。

今回の事故について、京浜急行に多くの責任がある

今回の事故は、多くの労災犠牲者を生みました。亡くなったトラック運転手、ケガをした京急運転士を始めとして、乗客のケガ人の多くが労災に認定されると思います。労働基準監督署も、大規模災害として、あるいは死亡災害として調査中であると推察します。

今回の災害で責任を追及されるのは、次の3者でしょう。

  1. 京浜急行(運転士を含む)
  2. トラック会社(運転手を含む)
  3. 踏切に進入する道路を管理する行政機関

インターネット上では、私と同じような京急ファンが多いらしく、京急の責任を追及する声はほとんど見当たりません。また、トラック会社については、運転手が犠牲になっていることもあり、あまり非難する声が聞こえません。行政機関に非難が集中しそうな流れとなっています。

大きなトラックが狭い道に入ってこないような措置をとる責任が、管轄の行政機関にはあります。でも今回の事故の本質は、「線路上に障害物があるのに、なぜ列車が停車できなかったのか」というところにあると思います。

労働安全の分野では、「本質的安全化」・「工学的安全化」という言葉を使います。その意味するところは、「ヒューマンエラーは必ず起こるものであるから、人の判断に依存した安全対策(管理的対策)を行うのでなく、機械本来が自律的に安全の状態を維持できるようにするべきだ」というものです。

今回の事故について、「運転手が間違えて踏切にはいらないようにする」という措置は、あくまで運転手の判断に依存した、管理的対策です。また、「列車運転士が、ブレーキをより早くかければよかった」という意見も、個人に依存した措置です。

「本質的対策」もしくは「工学的対策」を目指すのなら、「物理的にトラックが踏切にはいらなようにする」あるいは「踏切に障害物があるなら、列車が自動停止する措置」を検討しなければなりません。これらの対策をとっても、「飛込み自殺」等は防げませんが、最大限に自動停止装置の活用は目指すべきでしょう。

(注)「本質的対策」等については、私が気づかない他の方法があるかもしれませんが、私が現在思いつくのは、この2つです。

私の尊敬する京浜急行ですから、今回の悲しい事故に対し、必ずや絶対的な(本質的な)再発防止措置を行ってくれると信じています。

最後になりましたが、亡くなられたトラック運転手の方のご冥福を祈るとともに、列車運転士の方及び乗客でケガをされた方々の、早期の労災及び通勤災害の認定処分がなされる事を願います。