(山梨県のクリスタルラインと愛ジムニー、by T.M)
テレビドラマ「BRIDGE はじまりは1995.1.17」を観ました。このドラマは、阪神・淡路大震災の時に、崩壊したJR六甲道駅を、「ジャッキアップ」という過去に例のない工法で、2年間かかると言われた復仇をわずか74日間という短期間でなしとげた建設会社の物語です。実在する「O組」という会社がモデルだそうですが、この工事については、2005年にNHKのプロジェクトXでも取り上げられたそうです。
番組は事実をヒントに作られていて、工事に携わった方々の献身的な仕事振りがドラマが中心です。しかし、ドラマの構成上、完全にフィクションの部分があります。その中で興味深く思えたのが、災害から23年後の現在の神戸で、その工事の一部始終を当時撮影したという元作業員が、不良高校生に当時の思い出を語る場面です。その少年は、地震の慰霊碑にスプレー缶を使用し、落書きをして警察に補導されたという設定でした。少年は単なるイタズラとしてそんなことをしたのですが、その場面を目撃した元作業員は、少年を補導した警察官に「少年の父」だと嘘をつき、少年を救出します。そして、そのような事をした理由を、元作業員が次のように少年に述懐します。
「オレは嬉しかったんだ。震災が過去の出来事として、特に気にしなくなっていることが」
この言葉の言い回しは、正確には憶えていないのですが、言いたいことについては、そういう考えもあるのだなと思いました。
私はいつの日か、東日本大震災の時の福島原発の時に苦労した作業員のドラマができることを望みます。事案を時系列に紹介するといったドラマは過去あったようですが、作業員の方々のご苦労を真正面から描いたものは、まだ無いように思えます。
本社から「止めろ」と言われても、現場で原子炉に海水の注水を続けた吉田元所長の決断や命懸けのベント作業等を描いたら、緊迫したドラマになると思います。
もちろん、「増え続ける汚染水」「除染作業の動向」「見通しが立たない被災地の復興」「最大の課題である燃料デブリの取出し作業」「被曝労働者の労災認定」等の現実を考えると、ドラマなどできません。阪神・淡路大震災は関東大震災のように過去の出来事となりつつあるのかもしれませんが、福島原発の問題はリアルだからです。
だからこそ一日でも早く、この問題が過去の出来事となる日が来ることを祈ります。
この「BRIDGE」のドラマの中で、工事現場の所長が繰り返し「労働者の安全が第一」と述べていました。実際の現場もそうであったのだろうなと想像すると、元労働基準監督官としては、少し嬉しくなりました。