女性の力

(歴代のポルシェ911・ポルシェセンター横浜青葉、by T.M)

森元オリンピック・パラリンピック組織委員長は「女性がいる会議」は嫌いなようですが、私は女性が参加する話し合いの方が好きです。今日はそのことを書きます。

私は、労働安全衛生コンサルタントとして、工場や建設現場で働く現場リーダーのための労働安全衛生法に基づく「職長教育」の講師を何十回も務めてきました。この職長教育は、「討議法」を用いて行うことと厚生労働省通達で決められています。「討議法」とは、職長教育受講者を5~6人のグループに分け、各課題を討議させるという物です。

討議内容の事例としては、ひとつの労働災害を取り上げ、その災害の「原因と再発防止対策」に対し、直接原因だけでなく、管理・職員教育の分野にまで視野を広げ、災害の本質的な原因を追究してもらうという内容があります。

私の所属する会社では、定期的に職長教育の講習会が開催されますが、様々な企業から受講者が来ます。ですから討議グループは、色々な会社・異業種の方から構成され、受講者は自分が経験してない世界での労働安全衛生の実態を知ることができて、とても有意義な討議をされることが多いです。

しかし、そのグループが男性だけの場合にマウントの取り合いになることがあります。「俺の方が知識が上だ」「俺の方が現場経験がある」等の意地の張り合いになり、段々意見がでなくなり、せっかくの討議時間が無駄になってしまうことがあるのです。(このような状況になることは、当然講師である私の責任です)

グループの中に女性がいると、何故かそのように男性どうしのマウントの取り合いは始まりません。これは、女性が真摯に課題に向き合ってくれるから、周りの男性も次第に真剣に討議をするようになるからだと思います。こういうことについて「男性」「女性」の区別をすることはいけないことかもしれませんが、私は自分の経験から、グループ討議により知的好奇心をもって参加してくれるのは、女性の方だと思います。

さて、労働安全衛生の教育というのは、長年「男性だけを対象」としてきたこともあって、最近になって困ったことが起きています。労働災害防止の手法のひとつに、「KY(危険予知)」及び「指差し呼称」というものがあります。それは行動の要所要所(危険のポイント、誤操作のポイント)で確認すべきことを「○○ヨシ!」と、対象を見つめ、しっかり指差して、はっきりした声で呼称して確認するものです。

この指差し呼称の最後にタッチアンドコールというものを行います。これは指差し唱和の一種で、メンバー全員で手を重ね合わせたりして触れ合いながら行うのですが、メンバーの一体感・連帯感を盛り上げ、チームワークづくりに役立つ手法です。しかし、講習会でこれをやると女性メンバーがやりづらそうな仕草を見せることがあります。それはそうですよね、見ず知らずの人とスキンシップをするのですから・・・

労働災害防止に長年威力を見せてきた手法でも、女性の力を引き出すためには変革が必要なようです。